話を聞きに参りたい
千歳が、俺のファンを名乗る不審人物のことを日報に書いてしまい、不審人物の存在が金谷さんを通じて心霊業界に知れ渡ってしまったそうだ。
「別に書いてもいいけど、閻魔大王様関連のことじゃなくない?」
『だって変わったことあったら何でも書いてくれって言われてるんだもん』
「うーん……じゃあ仕方ないか……」
千歳がわからなくても、他の人が見れば何か気づくことはあるかもだから、変わったことは全部書けは正しいと言えば正しい。
そして、金谷さんから、こないだ俺が霊からちぎりとった術式の筆跡について連絡が来た。和束みやびという人の可能性が高いそうだ。
千歳に通話が来たのだが、できれば俺も聞いてほしいということでスピーカー通話にしてもらった。
「和束姓ってことは、和束ハルの親戚かなにかですか?」
「母親ですね」
千歳はうんざりした顔をした。
『親子揃ってろくなことしないな』
金谷さんは新たな事実を述べた。
「でも、和束みやびだと年齢的に子ども産むのは無理があるんですよ」
『それはそうだ』
和束ハルは生きてたら現在39歳。その母親がこの20年で10人も子供を産む、は無理すぎる。
「で、今調べてるのが和束美枝という人です」
「あ、和束ハルの妹さんでしたっけ?」
前に、和束ハル情報共有会で、美枝、という名前が出てた。
「そうです、年子の妹。で、和束みやびはともかく、和束美枝に会った人がここ20年いないみたいなんです」
「20年!?」
『20年!?』
金谷さんは、調べたことを詳しく説明してくれた。
和束美枝は高校を中退して婿を取り結婚、実家暮らしで17で男の子をひとり産み、その後離婚している。親権は夫。
和束美枝はその後、和束みやびとともに実家を出て、長野に移り住んでいる。それが大体20年前。
和束みやびは和束家No.2として、術式を書いたり霊力を込めたりしてかなりの稼ぎがある。和束美枝は、高い霊力を持つものの術式の才能はまったくなく、霊力の使い方も下手だそうだ。
「霊力の使い方が下手って、どういう状態なんです?」
「体の外に出して操作するっていうのが下手、ってことだと思ってください。千歳さんに度々お願いしてるような、術式に霊力を込めるのもできないってことです」
じゃあ、心霊的なことでできることあんまりなくない? こんな事思うの悪いけど……。
千歳が金谷さんに聞いた。
『和束みやびと和束美枝って、どんな人なんだろうな?』
「和束家の人間が話したがらないんですけど、和束ハルと高千穂さんならあるいはということで、今度、緑さんが聞きに行く予定です」
『遠いから大変じゃないか? ワシ、午後暇だから、和束ハルんち行って聞きに行こうか?』
「え、いいんですか?」
『いいよ、相手が暇か知らないけど』
本白神社に電話をかけたところ、和束ハルも高千穂先生も今日家にいて時間あるということで、千歳は午後に話を聞きに行くことになってしまった。
そして千歳は俺に言った。
『お前は留守番な』
「え!?」
『え!? じゃないだろ。お前がいたら和束ハルびびって、話せることも話せないぞ』
そう、和束ハルは俺のことを怖がっているのである。
「うーん……じゃあさ、ボイスレコーダーアプリの使い方教えるから、2人の話を録音してきてくれない? 俺も本人たちの話聞いておきたいし、金谷さんに録音渡しても役に立つと思うし」
『ふーん、わかった』
そういう訳で、千歳のスマホにボイスレコーダーアプリを入れて操作方法を学んでもらったあと、俺は千歳を送り出したのだった。




