表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

740/849

まずは抱っこをしたげたい

 日曜の昼下がり。千歳が、なぜか久々に幼児の姿になり、座椅子に座ってる俺の膝に乗ってきた。


「久々だね、その格好」

『うん』


 千歳は俺を座椅子にしたいのかと思っていたが、千歳は俺に向き直って両手を広げてきた。


『抱っこ』

「抱っこ!?」


 驚いたが、断る理由もない。俺は両手を伸ばして、千歳を抱っこするように抱きしめた。


「どうしたの、なんかさみしくなった?」

『さみしいっていうんじゃないけど』


 千歳は俺の胸に頭を押し付けた。


『お前はさ、ワシのこと抱っこしてくれるよな』

「まあ、してるけど」

『……あの子たちは、抱っこしてもらったのかな?』


 あの子たち。閻魔様に頼まれて探してる、魂10体のことだ、とすぐに分かった。

 赤ちゃん。抱っこ。あまりにも普通の組み合わせだ。

 しかし、相手は普通ではない。ブンさんの土地で出会ったあの子、他の子もおそらく似たような境遇だろうあの子たち、果たしてまともに保護者の胸に抱かれたことがあるのか?

 言葉が出ず、身を固くしてしまった俺に、千歳はつぶやくように言った。


『ワシのことはさ、お前が抱っこしてくれるけどさ、あの子たちは誰が抱っこしてくれるんだろう?』


 あまりにも重い問いに、俺はとっさに言葉を返せなかった。


「……その、操作の術式だっけ、それをはがさないとどうにもならないと思う」

『うん』


 返事にならない返事をすると、千歳は、俺にさらにぎゅっと抱きついてきた。


『ワシのことはさ、お前が抱っこしてくれるからさ、ワシはさ、あの子たちを抱っこしてやりたいって、そう思ったんだ』

「…………。そっか……」


 俺も、千歳を抱きしめた。


「俺も、あの子たちを抱っこするよ」

『うん、それがいいな』


 千歳は、顔を上げて笑った。

 俺が千歳に注いだ気持ちがあるから、千歳は他の人に気持ちを注ごうって思えるようになったのか。そうか……。

 そうだな、あの子たちが赤ちゃんなら、まずは抱っこしてあげないと、だよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ