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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第14シーズン

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準備整え参りたい

 千歳は部屋でタブレットで泣ける映画鑑賞中。九さんはブンさんの土地と物置の裏扉を繋げ中。深山さんはブンさんを監視しつつ防護の術式書き中。俺は部屋にいてもよかったのだが、千歳を邪魔しちゃ悪いと思って物置の隅のボロ椅子に座らせてもらって、とりあえずスマホで緑さんと金谷さんに現状を連絡している。

 連絡し終えて大きく息をつくと、ブンさんが恨みがましく言った。


「くそっ、お前は男気のあるやつだと聞いてたのに全然かばってくれないじゃないか、俺にだって事情があったのに」

「かばえる部分が何もないんですけど」

「なんだと!?」

「あなたに守るべきものがあって、そのために千歳の涙が必要というのはわかりました。でも、私をさらわなくても、普通に千歳に頼めば、泣く努力をしてくれたと思いますよ。あなたの取った手段は乱暴すぎるんじゃありませんか?」

「…………」


 ブンさんは黙ってしまった。俺は聞いた。


「なんか、さっきも男気とか言ってましたよね、なんでです?」


 深山さんが、術式を書き終えたらしく言った。


「ああ、化生の間では、あなたは男気のある人って噂になってますのよ」

「えっ、なんでです?」

「なんでって、とんでもない痛みの塊から金谷千歳を庇って、代わりに痛い目に遭ったじゃありませんの、恩人だからって言って」

「それ、男気なんです?」

「まあ、そう伝わってしまってますわ」

「別に、私が女でも同じ状況なら同じことしたと思いますけどね」

「ふうん?」


 深山さんは、少し愉快そうな顔で俺を見た。ブンさんが毒づいた。


「くそっ、気に入られやがって……」


 物置の表扉が開いて、千歳が『涙とってきた!』と入ってきた。


『言われたとおり、このハンカチに全部染み込ませてきた』


 千歳は深山さんに湿った感じのハンカチを渡した。


「ありがとう、助かりますわ」

『どうやって使うんだ?』

「飲みますわ」

『飲むのか!?』

「なんのためにお湯を持ってこさせたと思いますの」


 そういや、さっきお茶を持ってきてくれた女の子に頼んで、魔法瓶にお湯詰めて持ってこさせてたな……。

 深山さんは急須にハンカチを突っ込み、魔法瓶のお湯を注いで、箸でハンカチをすすぐようにした。そして急須の中身を大きな茶碗に全部出して、もうもうと湯気が立っているそれを一気飲みした。


「あっついですわね!」

『そりゃ一気は無理だって』

「でも急いだほうがいいでしょう」

『そうだけどさ』


 九さんが深山さんに声をかけた。


「妾のほうがもう少しかかる、すまぬ」

「いえ、無理を言って悪いですわね」


 九さんが扉をつなげるの待ちで、しばらく場を沈黙が支配した。なんとなく気詰まりだったので、俺は深山さんに話しかけた。


「あの、千歳は安全なここでお米でたくさん食べて力を蓄えたいということで、お米10キロ持ってきたんですよ。余ったら差し上げますので、どうかお米たくさん炊いていただけませんか?」


 深山さんは「あら! 助かりますわ!」と目をきらめかせた。


「最近お米は買ってるので、高くて困ってましたのよ」

『後で台所まで持ってくな』


 深山さんが俺に嬉しそうな顔を向けるので、ブンさんがまた恨みがましい目で俺を見た。


「くそっ、鼻の下伸ばしやがって……」

「別に伸ばしてませんよ」

「くそ! 俺の方がよっぽどいい男に化けられるのに!」


 深山さんはブンさんを鼻で笑った。


「いくら見た目がよくても、それ以外がダメではねえ」

「何が違うんだ、この男だって女に家のこと全部やらせて悠々自適って話じゃないか!」


 千歳が変な顔をした。


『ワシ、別に女じゃないぞ』

「え!?」


 ブンさんは目を丸くした。千歳はブンさんをジロッとにらんだ。


『それに、確かに家のことは大体ワシがやってるけど、和泉だってけっこうやってるからな! 皿洗ってくれるし風呂掃除してくれるし、ワシが忙しいときは洗濯全部してくれるし、ワシが寝坊したときはちゃんと朝メシ作ってくれるし、ワシが疲れて寝てるときはワシ用のメシ作ってくれるし!』

「ええ……」

『それに、和泉はお前と違って、すっごく優しくていい奴なんだからな! ワシの飯毎日おいしいって言ってくれるし、何かするたびにありがとうって喜んでくれるし、お礼にってワシの好きなお菓子わざわざ選んで買ってくれるんだ!』

「…………」


 ブンさんはついに黙ってしまった。


『ワシ今のこと全然知らないけど、和泉はバカにしないでいっつも丁寧に教えてくれるし、ワシがあんまり大人じゃないからいつもいつもすっごく助けてくれるし!』


 千歳の言ってることは事実なのだが、こんなに手放しで褒められるとかなり面映ゆい。俺は千歳に声をかけた。


「あ、あの、千歳、恥ずかしいからその辺で……」


 深山さんがブンさんを睨んだ。


「いいこと、これが【男気】ですわよ」

「…………」


 ブンさんはしおれてしまった。九さんが裏の扉から手を離した。


「扉がつながったぞ、行こう」


 千歳が首を傾げ、俺に聞いてきた。


『いるかな、閻魔様が探してる魂』

「どっちにしろ、捕まえられるなら捕まえたほうがよさそうだよね、今回の原因の霊」


 縛り上げたブンさんを深山さんが持ち、俺達は全員で物置の裏扉をくぐった。

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