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どんな時でも追いかけたい

「何!? ちょっと待って!? 助けて!!」


 巨大鷲の鉤爪に掴まれて大空を飛んでいる。完全に得物にされてるじゃん俺、それともこれ探してる魂の一体だったりする!? もう本当になんなの!?

 頭上から野太い声がした。


「うるさいな、男気がある奴と聞いたがただのヒョロガリじゃないか」

「しゃべった!?」

「しゃべるくらいするわ、これがただの鷲だと思ったのか?」

「いや、思うわけないけど……」


 こんなデカい鷲いないよ普通。


「えっ、どなた!? 閻魔大王様が探してる魂の人!?」

「違う。大体の奴は俺をブンと呼ぶ」

「え、ええと、ブンさん? なんで俺をさらうんです?」

「怨霊の涙が必要なんだ」

「千歳の?」

「相方が傷つけば、さぞ泣くだろうと思ってな」


 相方……俺!? 俺を傷つける気なのこの人!?


「いや、ちょっと勘弁してくださいよ!」


 下手すると今の時点で千歳泣いてるぞ。


「黙れ。よし、着いた」


 緑の山々の下に小さな空き地が見え、ぐんぐん降下していく。鉤爪を離してもらえるかと思ったら、空き地にとぐろを巻いていた太い縄がひとりでに動き、あっという間に俺を縛り上げてしまった。

 巨大鷲は、縛り上げられて地面に転がされた俺の横に優雅に降り立ち、ボンと音を立てて浅黒い肌の若い男の姿になった。長身の美丈夫、人さらいでなきゃモデルか俳優かと思うところだが……。

 ブンさんは俺を縛った綱を握り、近くの大木のうろまで俺を軽々と引っ張っていった。


「俺の土地に行くぞ、そこで怨霊が泣くまでいたぶってやる」

「いや、今の時点で泣いてますから、かんべ……」


 勘弁してくれ、と言いかけた瞬間、真っ黒い拳がブンさんの顔に迫り、次の瞬間ブンさんは空き地の彼方までブッ飛んでいった。


『和泉!!』


 黒い一反木綿の姿の千歳が、ブンさんをぶん殴り終わって俺に飛びついてきた。


『大丈夫か!? ケガしてないか!?』


 ほら、千歳もうすでに泣きそう!


「だ、大丈夫、縄ほどいてくんないかな?」

『うん、大丈夫か?』


 千歳は真剣な目で縄に取り掛かったが、縄はほどくまでもなくするすると取れた。ブンさんが縄を操ってただけで、特に結び目とかなかったのかな?


『肩大丈夫か、あんなすごい爪で握られて』

「あ、うん……」


 そういえば、あんな鉤爪で肩掴まれて持ち上げられたらそれだけで大怪我だよな? でも、痛くないぞ?

 肩を触ってみたが、服は鉤爪の形に破れていたものの、肌に一切の傷はなかった。


「え、なんも怪我ない……」


 不思議に思ったが、ひとつ思い当たったことがあった。


「あ、宇迦之御魂神様と閻魔大王様のお守り効果!?」

『あ、そうか、あれで怪我しなかったのか!』


 ひとまずホッとしたが、そしたらブンさんを放っておいていいのかということに思い当たった。


「あの鷲の人、ブンって名乗ってたけど、起きてきたらまた暴れない?」

『思いっきり殴ったから一発KOだと思うけどなあ』


 千歳が思いっきり殴ったら、下手すると消し飛ばないか……?

 2人でブンさんが吹っ飛んでいった方向に向かったのだが、そこで見つけたのは人ではなかった。


「……たぬき?」

『化け狸だ……』


 一匹のタヌキが、白目をむいて気絶していたのだった。

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