行く途中でも注意したい
土曜日の朝、深山さんちに行く日。九さんが案内に来てくれた。
「おはよう、迎えに来たぞ」
『おはよう! よろしく!』
「おはようございます、ありがとうございます」
九さんは千歳を見やり、目を丸くした。
「ずいぶんと大荷物じゃな」
千歳は、着替えその他のお泊りグッズの他に、でかいリュックにお米10キロ詰めて背負ってるのである。
『いっぱい米食わせてほしいから、いっぱい米持ってこうと思ってさ』
「なるほど。まあ、安全な場所で力を蓄えておくべきじゃな」
九さんは、一度玄関の扉を閉めた。
「一度群馬の山寺に入っての、その山寺の奥の扉を開けば深山の土地じゃ。まず山寺につなごう」
九さんは、閉じた玄関に手を当てて、何事か唱えた。
「よし、つないだ。行こう」
九さんが玄関の扉を開けると、そこには緑豊かな境内が広がり、遠くに立派な本堂が見えた。
「わあ、すごいお寺ですね」
『いいとこだ!』
玄関を出て歩いていくと、新緑が今まさに盛りを迎えていて、曇りじゃなかったらもっときれいだっただろうなと感じた。
新緑の木立を抜けたあたりに、お坊さんとその奥さんらしき人がいて、俺たちに頭を下げた。
「お待ちしておりました、深山様のところにご案内いたします」
え、俺たちこんなに厚遇される人間なの!?それとも九さんに対しての礼儀!?
九さんが俺達に言った。
「ここは、この間の和束ハル事変で霊力を奪われたところでな。お主たちが和束ハルを倒さなかったら、ずいぶん困っていたじゃろう」
「あ、そういうつながりが」
『そっかあ』
千歳も納得したようだ。
『ちゃんと霊力戻ったか?』
「おかげさまで、何とかなっています」
『よかった!』
千歳は笑い、お坊さんが言った。
「本堂の裏が深山様の土地につながっています、ご案内いたします」
そういう訳で、俺達はお坊さんの後ろについて行ったのだが、上からバサバサと羽音がして、俺はふと空を見上げた。
「なんだ?」
ずいぶん大きい鳥が空を飛んでいる、なんだろう、鷲とか?
その大きい鳥は、こちらに向かって飛んでいるのかどんどん大きくなり……いやデカすぎるぞ!? 人よりでかいぞ!? 本当に鷲か!?
「な、何あれ!?」
『え、なんだ!?』
俺たちは構えたのだが間に合わず、急降下してきた巨大な鳥は、鋭い鉤爪で俺の肩を引っ掴み、そして俺は大空に舞い上がってしまった。




