勘違いでもないかもしれない
千歳とおばあちゃんの老人ホームに来ている。LINEでその都度報告はしていたのだが、俺は改めて父親と母親の現状がいい方向に向かっていることを話した。アパートを見つけて引っ越すこと、新しい商売、占い師の上島ミツさんのおかげで母親が素直に治療を受け始めたこと。
おばあちゃんは首を傾げた。
「その上島ミツさんって人、大丈夫な人なのかしらあ?」
「大丈夫だと思う」
俺はうなずいた。
「会って話したけど、病院が効く人は医療につなげてる人だし、実際お母さんは素直に治療受けるようになったし。あと、詳細は言えないんだけど、千歳の仕事関連ですごく重要なアドバイスくれて……そういうアドバイスをまず俺達にするって決めて実行するあたりも、有能な人だなって」
「あらあ、そんなこともあったのお」
千歳が言い添えてくれた。
『ワシら、すっごく大事なこと教えてもらったんです。上島ミツさん、本当に霊能力者でもあるけど、多分それだけじゃなくていい相談役なんだなって思います』
「まあまあ、千歳さんもそうなの。なら、大丈夫かしらねえ」
俺は言った。
「一応、お父さんとはそれなりに連絡とるから。あとここからはいい話なんだけど、千歳が宝くじ当たったお金で家建ててくれてね、建ったら引っ越すんだ」
100%千歳が稼いだお金なのだが、あまりにも大金なので宝くじということにしてある。
「まああ! そうなの!?」
おばあちゃんは目を見開いた。
「どんなお家なの?」
「4LDK。赤い屋根にベージュの壁に、飾りでレンガつける感じの家」
『かわいい家になるんです!』
「建てるのかなりゆっくりだから、今年中にに入れるかなってところなんだけど」
建築現場は人手不足らしい。千歳が、霊的なことで家を壊されないための札を金谷さんからもらってきてくれて、大工さんに頼んで四隅に仕込んでもらったとかで、そういう意味では安全な家になるんだけど。
おばあちゃんは、少し真剣な目になった。
「じゃあ、豊ちゃんと千歳さんは、これからもずっと一緒に暮らすってことでいいのかしらあ?」
おばあちゃんが真剣な目をしているのは、俺と千歳は人生を共にするのか? と尋ねたいせいだと思う。
千歳と人生を共に……したいなあ! ずっと一緒にいたい! なんなら恋愛飛び越して結婚してほしいまである! でも俺と千歳は恋愛関係でもなんでもないわけなので、俺だけ片思いしてるのを恋愛関係とは言わないので、これ頷いていいやつなのか!?
俺が一瞬判断に困っている間に、千歳が『ずっと一緒です』とあっさり頷いてしまった。
「まあ、ワシも和泉もいろいろあるけど、それでも一緒に暮らせるように、今建ててる家リフォームもできるって確認したりしました。ワシがいないと和泉は元気なくなっちゃうから、ずっと一緒に暮らします」
字面だけ見ると完全に人生を共にする覚悟のやつだ!!
俺は、覚悟を決めて言った。
「……ずっと、千歳と一緒にいたいって思ってる。そのために、できるだけのことをしようって思ってる」
おばあちゃんは、嬉しそうに微笑んだ。
「そうなのお……よかったわ」
こ、この笑顔、孫が結婚報告したと思ってる顔だよな……いいのか!? かなり現実と乖離があるが!?
しかし、嬉しそうなおばあちゃんに俺は何も言えず、その後は当たり障りのない話をして帰ったのだった。




