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ふたりの家を守りたい

 朝の散歩では、千歳が買った家の建ち具合をいつも見ることにしている。

 家は少しずつながら着実に建ってきている。今は地面を均して鉄骨を植えて、下をセメントで覆っているところだ。


『買い物の時とか、大工さんにいつもあいさつしてんだ』

「そっかあ」


 そう言えば、建設中に家主が頻繁に顔を出すといい家が建つって聞いたことあるな。千歳がそういうことやってくれるのはありがたい。


『なあ』


 千歳が俺を見上げた。


「何?」

『この家が建つ頃には、魂10体見つけられるかなあ?』

「うーん……」


 俺は考えた。

 はっきり言って……無理じゃない? 家が建つのだいぶゆっくりだけど、今のところ手がかりは朝霧春太郎氏しかないし、俺たちを襲ってきたりもしてないし……。


「ちょっと……今の進行具合を考えると難しいかもね。この家を根城にしてやっていくつもりじゃないと、ダメかも」

『そっかあ……』


 千歳は少し残念そうにした。


『結構かわいい家になる予定だろ? ベージュの壁にレンガの飾り付けてさ』

「うん」


 不動産屋で、家を建てる打合せにおいて外装についても話したのだが、千歳に『どんな家がいい?』と聞かれて「千歳の好きに作りな」と答えたら『何でもいいが一番困るんだよ!』と怒られたので「じゃあ落ち着く感じの……」と言った結果、不動産屋にいろいろ候補を見せてもらって、薄いベージュの壁・飾りのレンガ・赤い屋根に落ち着いたのである。


『魂10体が襲ってきて、家壊されたらやだなあと思ってさ、せっかくかわいいの建てるのに』

「あー、そうだねえ……」


 保険に入っておけばあるいはと思うが、ものすごく強い霊に壊されるのってなんの保険に該当するんだ?


「不動産屋さんに入れって言われた保険あるだろ、何をどれくらいカバーしてもらえるか聞いてみたほうがいいかもね。保険会社にも聞いてみて、よさそうなのがあったら検討してみるとか」

『強い霊に狙われてるって言って?』


 千歳は微妙な顔をした。確かにその理由は通りにくいな……。


「うーん、たちの悪いストーカーがいて、建てた家を壊してくる可能性があるから、そういうのカバーできる保険ですか? みたいな感じでいいと思う」

『なーるほど、物は言いようだ』

「俺、不動産屋に聞いてみようか?」

『いや、ワシの買い物だしワシが聞きに行く。ていうか、お前最近外出る用事多かったから、その分仕事忙しいだろ?』


 まったくもってその通りなのである。俺の仕事を慮ってくれてありがとう。


「じゃあ、千歳に任せるね。俺は仕事がんばる」

『うん、がんばれ』


 千歳は笑った。

 生活にはいろいろある。こなさなければいけないことがたくさんある。何が待ち受けていようとも、食べて、仕事して、家事して、寝る、をやらないと生活が回らない。

 今回のこと、1人だけだったら絶対に無理だ。でも、俺には千歳がいて、2人でやれるから、まだ何とかできる気がする。

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