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休める場所を作りたい

 仕事中、副社長の久慈さんから「今ちょっと直接話いい?」とSlackで話が来て、GoogleMeetで応じたら開口一番「和泉さん平気!?」と聞かれた。


「またトラブル巻き込まれたって聞いたけど!?」

「えっとその、今のところは大きなことは起こっていませんが、ちょっとした頼まれごとがありまして……」

「ちょっとしたことじゃなくない? 地獄に招かれて閻魔大王様に指示出されるって」


 それはそう。しかしどこから話が回ったんだ。

 久慈さんは猫又に知り合いがいて、つまり心霊業界のことがわかってる人だ。なので、俺は現状を詳しく話した。


「そういう訳で、普通に暮らすよう要請されてますし、よっぽどのことがない限り仕事に穴は開けませんので」

「まあ……確かに今回のことが起きてからもよくやってくれてるけど……」


 久慈さんはあごに手を当て、頷いた。


「私、防御用のお守りも貰ってるんですよ、すごく強いの。めったなことは起きないと思います」

「うーん、閻魔大王様的には、和泉さんに普通に仕事をしてもらうほうがいいって感じかな?」

「まあそうですね、普通に暮らして相手に行動を読みやすくしろと言われてるので」

「襲われるために普通に暮らさなきゃいけないの? 大変だね……」


 久慈さんの眉尻が下がる。確かに言われてみると大変なんだけど、現状襲われるようなこと起きてないからなあ。


「まあ気は抜けませんけど……和束ハルの件ご存知ですか、ほっとくとあれよりひどいことになると言われると、何もしないわけには行かなくて」

「うん、まあ、そうだね……」


 久慈さんは考え、そして言った。


「萌木と北明にも今のこと伝えとくね。閻魔大王様のことは出すけど、なんていうか、キツめのストーカーにまた狙われてるようなもんで、相手の尻尾をつかむために行動を読みやすいように普通に暮らさなきゃいけない、みたいな感じで」


 萌木さんは俺の恩師で会社の部長的な人、北明さんは社長である。久慈さん・萌木さん・北明さんは3人とも大学時代の友人だそうだ。


「ありがとうございます」


 俺は頭を下げた。

 そして夜、九さんが訪ねてきた。


「大丈夫かお主ら。話は聞いたぞ」


 なんかあちこちから心配されている!

 千歳が言った。


『今んところ、和泉が閻魔大王様にさらわれたくらいしかないけどさ』


 あ、そういや千歳的にはそれは大きなことか……。

 俺は、久慈さんに言ったのと似たようなことを言った。


「気を抜かずに、でも普通に暮らしたほうが良さそうです」

「いつまでも持たんじゃろ……」


 九さんはため息混じりに言い、「そうじゃ」と顔を上げた。


「気を抜ける場所に渡りをつけてやろうか?」


 どういうこと? あ、そうか。


「襲われない場所ってことですか?」


 千歳が首を傾げた。


『九さんち?』

「うちもじゃし、深山の家もじゃ。他にも探せばいくつかあるのう」

『どうする?』


 千歳が俺を見る。


「そうだねえ……」


 俺は少し考えた。確かにいつもいつでも気を張ってる、というのは無理があるんだよな。定期的に、どこかで安心して休める、というのは大事かも。


「その、今すぐどうこうというわけではありませんが……疲れてしまう時もあると思いますので、そういうときはご厚意に甘えさせていただいてもよろしいですか?」

「よし、任せておけ」


 九さんは、ドンと胸を叩いた。

 仕事と言い、休む場所と言い、こんな状況でも何とかなりそうだ。周りの人に本当に恵まれてる、ありがたいことだ。

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