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すごいことだけど伝えにくい

 朝霧春太郎氏に子供がいる!? 状況からして彼が不妊なのに!?

 俺はミツさんに聞いてみた。


「えっと、それはどのようにしてできた子なんでしょうか?」

「経緯は知らないよ、ただ、朝霧緑が朝霧春太郎の内情を暴露したとき、12年くらい前かね、気になって術で調べてみたら、朝霧春太郎の血を分けた子供が生きてたよ、1人ね」

「ええ……?」

「だけどね、話の肝はここじゃないんだ」


 ミツさんは、キセルの灰を灰皿みたいなのに落とした。


「あんたら、閻魔大王から頼みごとをされただろう」

「はい」

『うん』


 俺も千歳も頷いた。


「アタシも最近その話を聞いて、気になってね。そんな霊力の魂を入れられる器は、朝霧春太郎の子供くらいじゃないかと思って、同じ術を使ってみたんだ。そしたらやっぱり血を分けた子供が一人生きてたけどね、別の子供だったんだよ」

「え……ええ!?」

『どういうこと!?』


 子供二人もいるってこと!?でも12年前と別人!?

 ミツさんはタバコの葉を摘み、キセルに詰めた。


「アタシにわかるのは、今1人生きてるってことと、12年前とは別の子供ってことだけなんだよ。場所とか母親とかは、なんにもわからん。だから、12年くらい前に朝霧春太郎の子供がひとり生きてて、最近も朝霧春太郎の別の子供がひとり生きてて……12年前の子は生きてないってだけだね」


 12年前の子は亡くなってる!?


「2人いて、ひとり亡くなってる……!? え、もしかして……」


 俺は、閻魔大王様の頼みを聞いたとき、頭によぎったことがある。おそらく同じ両親から生まれた子供10人。霊力の高い子どもばかり作る、子ども工場の可能性。そして、子どもたちの生死はわからない。


「も、もしかして、2人どころか10人いて、1人以外は死んでる可能性とか……?」


 千歳も、俺が何が考えてるのかわかったみたいだ。目を丸くした。


『えっ嘘だろ!?』


 ミツさんはマッチを擦り、キセルの葉に火をつけた。


「その辺はあんたらで調べておくれよ。アタシは野良だから信じてもらえないかもしれないけど、同じ術を使える人は上島家に一人二人いると思うからね、そいつらに確かめてもらえば、嘘じゃないってわかるはずさ」

「……わかりました。しかし、えらいことだな……」


 10体の魂の子供、父親は朝霧春太郎氏の可能性。こないだ決まったことは、母親の方を探すことだったけど。


『……緑さんに、言ったほうがいいのかなあ』


 千歳はしおれていた。


「まあ、伝えるなら緑さんだろうけど……」

『かわいそうだ、緑さん、旦那のせいで子供作れなかったのに、旦那は子供いるなんて……』

「…………」


 それは、あまりにもそう。


「……でも、伝えないわけに行かないよ、重要なことだからね」


俺は諭すように言った。


『わかってるけど……』


 千歳はうつむいた。

 ミツさんが、少しだけ微笑んだ。


「金谷千歳さん、あんたいい子だね」

『別に、そんなに』

「謙遜しなくていいんだよ。あと、和泉さん」

「なんでしょう」

「あんた、除霊したって体にするけど、お母さんと関係改善する気はあるかい?」

「……できれば、関わらずに生きていきたいです。あの人の面倒は、もう見たくないので」


 この人は、母親からどれくらい俺のことを聞いてるんだろうな? 一応、俺のことを俺の口から言っておこうか。


「私は、子供の頃、母親の機嫌を取るためにがんばってきました。ああいう性格の母親をなだめたり、詐欺と言っていい仕事を手伝ったり。でも、それで幼馴染と絶交する羽目になりました。それから、私は、自分は悪い奴だから友達なんて作る資格ないと思って生きてきました、千歳と会うまで。今思えば、とても寂しくてつらかったから……その原因の人には、もう関わりたくないです」

「……そうかい。じゃあ、うまく伝えておくよ」


 ミツさんはキセルを吸い付けた。


「言って聞く人ですかねえ?」

「そこはアタシにまかせな。あんたのお母さんみたいな人はそれなりにいるからね、やり方はわかるんだよ」

「では……お願いします」


 俺は、ミツさんに深く頭を下げた。

 帰り道、千歳にこう言われた。


『お前、ワシのこと友達って思ってたんだな』

「え?」


 あ、そう言えばそう取れる事を言ったな、さっき。


「えっとその、何ていうか、とっても親しくしてくれてる人だと思ってて……千歳もそう思ってくれてたらうれしいなって……」


 友達と思ってるとは言えなかった。だって、好きな人なんだよ。大事な人なんだよ。


『まあ、ワシもお前のこと友達ってことにしといてやろう、祟ってるけど』

「……ありがとう」

『だからさあ、緑さんにどう伝えるか、一緒に考えてくれな』


 ああ、やっぱりそれ気にしてるのか。


「……事実を曲げるのはできないから、二人で直接話しに行くのはどうかな?」

『頼む』


 千歳は頷いた。

 そう、事態は多分動いたんだよな、予想外の方向だったけど……。

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