天秤にかけてこうしたい
血飛沫を上げながら倒れ込む高千穂先生を、俺は抱きとめた。
なんでこんなことを……いやそれどころじゃない。
「止血! 止血しなきゃ!」
女装の一環で手袋をしていたのでそれで傷口を押さえこむが、そんなので止まるようだったら致命傷ではないのだ。血は吹き出し続け、高千穂先生も俺もみるみる赤に染まった。
近くにいた緑さんたちも仰天し「救急車!?」「いや今の状態で来る!?」と大騒ぎしている。
和束ハルは「高千穂さん!! 高千穂さん!!」と暴れ続け、その体がずるずるっと動いた。千歳が『嘘だろ!?』と叫んだ。
……刺された傷口が広がるにも関わらず、こちらへ来ている?
「高千穂先生に触らせてえ!! 血くらいなら止められるから!!」
泣き叫ぶ和束ハルを信じていいか迷ったが、高千穂先生に関してだったら変なことはしないのではないだろうか、俺はそう思った。
俺は出血する高千穂先生を引きずって、和束ハルの手が届くところまで歩いた。
「高千穂さん!!」
和束ハルの手が高千穂先生に触れ、その途端新たな出血が治まった。いや、でもこれまでの出血だけで命の危機では!?
俺は高千穂先生の脈を取った。弱いながら脈はある、一応呼吸もしている、でも顔面蒼白でぐったりして意識はない……病院に運ばなくちゃいけない、でも。
ここに来るまで多くの人が霊障で倒れてた、救急も病院も、機能してるのか?
俺は和束ハルを見た。
「……どうする? みんなが霊障で動けないと病院は機能しない、高千穂先生助からないかも、それでも世界を壊す?」
「……!」
和束ハルは息を呑んだ。
「うち、うちは……」
和束ハルはうめき、顔を伏せて「怨霊……」とつぶやいた。
「うちの下半身を切り落として……それで止まるから、全部……」
千歳はその言葉を聞いて、和束ハルに刺さっていた刀を抜き、思い切り振り上げて和束ハルの下半身、蛇部分を両断した。
峰紅さんが、ご老人とは思えない速さで和束ハルに駆け寄り、何かの札を貼った。
「お前はもう自由に動けると思うな!」
千歳が俺のところに来た。
『もうワシが連れてったほうが早くないか、病院!』
「それもそうだ、近場の救急どこだ!?」
『スマホでナビしてくれ!』
巨大千歳は高千穂先生を抱きかかえ、俺もひょいと抱きかかえて、上空に舞い上がった。




