番外編 怨霊千歳の対決
ワシはとにかく文京区、根津神社を目指してすっ飛んでいった。
下を見ると、道の端に座り込んでいる人や倒れてる人がいて、根津神社に近づくにつれてそういう人が増えてきてる。くそっ、もう霊障がひどい!
東京に入ると霧が濃くなってきた、和束ハルの影響か?
霧の向こうに根津神社が見えてきて、本殿から生えた巨大な影が鎌首をもたげた。
女の上半身、太いヘビの下半身。下半身のヘビは本殿に巻き付いて、尾はあちこちに枝分かれしている。
『……和束ハルか、お前が!!』
「来たか、怨霊」
女は、にやりと笑った。
ワシはできる限りでかくなって、和束ハルに組み付いた。
『この野郎、やめろ! 霊障撒き散らすのだけでもやめろ!』
「やめろと言われてやめるボケがいるかあ!」
和束ハルは組み付いたワシを逆に掴んで、ものすごい力で引き剥がしてぶん投げたので、ワシはびっくりした。これまで霊力で互角の相手とやり合うことなんてなかった、それが、今の和束ハルは互角、いや、もしかしたら……。
でも、諦めるわけには行かない。緑さんはワシに和束ハルの臍の緒を預けてくれたんだ。ワシが和束ハルをどうにかしなきゃいけないんだ。
臍の緒は……ワシの体にくるんで使おう、ワシの体結構自由自在だから、武器みたいなのを作ろう!
ワシは、手に霊力を込めて、こねて、刀みたいな形のものを作った。中には和束ハルの臍の緒と、ワシの守り刀を入れた。刀の使い方なんて知らないけど、でかい刃物ってだけで役立つだろ!
ワシは思い切り振りかぶり、和束ハルに切りかかった。刀は和束ハルの肩にざっくり刺さったけど、和束ハルは不敵に笑った。
「無駄や、うちが何も考えとらんわけないやろ!」
刀が刺さった傷口から肉芽が盛り上がり、刀はあっさりと外れてしまった。
『くそっ! この!』
何度も切りかかって、いいところまでいくんだけど、そのたびに回復されてしまう。
「うちの体の一部でも手に入れたか? 髪の毛くらいならあってもおかしないと思ってなあ、対策くらいしとるわ!」
切ってダメなら刺すならどうだ!
ワシは上に思い切り飛び上がって、和束ハルが見上げるのを見下ろしつつ背中に回り、後ろから心臓をめがけて全力で突き刺した。
和束ハルは吠えた。
「そんなんでやられるかあ!」
やられるとは思ってない。でも。
ワシは和束ハルを背中から突き倒して、刀で地面に縫い付けた。
『お前をここから動けなくするのはできるぞ!』
和束ハルはワシを振り返り、舌打ちした。
「多少の間や、日本中から霊力を吸い取りきればふっ飛ばしたる!」
『……多少あればいいんだよ。いいか、あんたの大事な人が高千穂先生ってこと、バレてんだぞ』
和束ハルの眼の色が変わった。
「何したんや……」
『話聞いただけだけど、和束ハル対策本部に連れてくって言ってたし、どうなるかな』
そう言うと、和束ハルは全力でもがき出した。
「この……この、許さん! 高千穂さんを、高千穂さんを!」
あんまりびたんびたん跳ねるから、抑えきれなくてワシも跳ねた。くそっ、マジで多少の間しか抑えきれないぞ!
その時、1台の車が全速力でやってきて、ワシらの前で急ブレーキをかけた。
車からバラバラっとでてきた人達を見て、和束ハルは叫んだ。
「高千穂さん!!」
和泉に連れられて、高千穂先生がそこにいた。




