番外編 和束ハルの観察と目論見
和泉豊と怨霊は、何事もなかったように暮らしている。今朝は二人で何か宣言していた。
「なんとしても年末年始休む!」
『なんとしても年末年始休む!』
そう言って、土曜なのに二人で仕事している。
『御札、絶対27日までに終わらせるんだ』
「俺も、27日に仕事締めたい……」
怨霊は、私の捜索に使うための札に霊力を込めている。きちんとした術式の札ではあるが、それで見つかるような真似をするわけがないだろうが。
怨霊は、手を動かしながら和泉豊に話しかけた。
『クリスマスはちょっと料理に時間かけたいからさ、その分の時間も作りたいんだ』
「丸鶏焼くため?」
『他にも、作りたいサラダとかスープがある』
「そっかあ、楽しみにしてるね」
和泉豊が怨霊に向ける柔らかい笑顔は、怨霊の料理への揺るぎない信頼という感じだ。優しいだけが取り柄の、何の脅威もない人間にしか見えない。
……見えないだけだが。
怨霊の力を狙うに当たって、和泉豊にはさんざん邪魔されてきた。ひょんなことで怨霊に祟られただけの一般人だと思っていたが、確かに一般人ながら、怨霊を助ける覚悟の決まり方が尋常ではない。
もう少し地道に力を集めることにしたが、怨霊の力で邪魔されるだろうし、怨霊と事を構えるとなると、やはり和泉豊が不確定要素だ。何とかして無力化したい。
しかし、和泉豊に害を与える系の手段は完全に封じられている。まあ一度殺そうとしたし、無理もないのだが。
無力化……害を与えずに無力化する方法はないか……。何とかして役立たずに……。
あ、そうだ。
あれなら、害とは見なされない。むしろ益、祝福、長寿と見なされる可能性がある。
しかし、私の術式をもっても、ある程度霊力がないとできないな……まあ、朝霧春太郎から霊力を奪う算段はある程度立ったから、その霊力を使おうか。




