表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/849

お前と梅を試したい

『もう飲めるかなあ、氷砂糖まだ溶け切ってないけど』


 怨霊(黒い一反木綿のすがた)(命名:千歳)が梅シロップを仕込んだ大きな瓶をぐるぐる振っている。一日一回は振って梅に砂糖を行き渡らせないといけないらしいが、もう十分液体が滲み出て、梅の実が浮いている状態だ。

 俺は作業の手を止めて、千歳に話しかけた。


「味見くらいしてもいいんじゃない?」

『うーん、そうか、一口くらいいいかもな……』


 俺は、ふと気がついてスマホを見た。そういえば、届く予定は今日だ。時間からして、もう届いていてもおかしくない。スマホの通知は、置き配が完了したことを示していた。


「あ、よかった、ちょうど届いてるよ。製氷機の氷も使えるやつだし、作って試したら?」


 千歳は不思議そうな顔をした。


『何か頼んだのか?』

「うん、シーズンに入って安かったから」


 玄関を開けて、置いてあった段ボール箱を持ち上げ、家に入れる。開けて千歳に中身を見せた。


「ほら、かき氷機。暑くなったし、作って食べてもいいんじゃない?」

 千年は目をまん丸くした。

『え、わざわざ買ったのか!?』

「うん、流石にかき氷作るためだけのは家にないから」

『で、でも、自分でそんなに食うわけでもないだろ!?』

「でも、千歳に梅シロップかき氷おいしいって勧めたの俺だし。大丈夫、値引きのやつに溜まってたポイント足して買ったから、かなり安い」


 そう言って千歳にかき氷機を渡すと、千歳は目をまん丸くしたままかき氷機を見て、その次に俺をまじまじと見た。


『お前……』


 千歳はかなり驚いているようだが、悪い気はしていない感じの反応だと思う。千歳的には俺は祟る対象なので、お礼などを言う筋合いはないみたいだが、ひょっとしたらこれはお礼を言われるやつかもしれない。

 千歳はキラキラした目で俺とかき氷機を見比べつつ、しみじみと言った。


『お前、実は結構いいやつなのか……?』


 ……お礼とは違ったけど、まあいいか。喜んでいるのはよくわかる。

 千歳とは話が通じるから割とうまくやれてると思ってるけど、千歳の感情表現が割とはっきりしててわかりやすいのも、結構ありがたいことかもしれないと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ