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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第9シーズン

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自分でやるしか道はない

 コメダで狭山さんと会っている。狭山さんはコメダの環境にはしゃいでいた。


「わ、マジでフリーWi-Fiある! コンセントもあるし、ずっといられますねえ」

「リモートワークで気分変えたいときにもいいんじゃないですかね」


 とりあえずコーヒーを頼んだら、モーニングでかなりでかいトーストとゆで卵まで付いてきちゃった。今こんなに食べて、お昼入るかな……ただでさえここデカ飯なのに……。

 狭山さんはなんのためらいもなくみそカツパンとポテチキも頼み、「今日は節制を忘れます!」と宣言した。


「もうね、健康でいたいから普段は節制に励んでるんですけど、本当はいくらでも食べたいんですよ……」

「胃腸が強いのは生き物として強い証拠ですよ」


 俺は狭山さんを慰めた。俺なんて、量を食べられないからいつまで経っても太れないし。

 狭山さんはみそカツパンをもしゃもしゃしながらため息を付いた。


「まあ、程々に食べて程々に運動するしかないんでしょうねえ……僕、白折先生の事尊敬してますけど、唯一尊敬できないのが暴飲暴食で早死にして書ききってくれなかったことなんで」


 白折先生とは、狭山さんがずっとファンの作家で、脳溢血か何かで急死した人である。その霊と俺や千歳にも、ちょっとした縁があった。


「健康は何物にも代えがたいですよね……」


 俺は頷いてトーストをかじった。一度爆裂に体を壊した者として、健康は宝だと誇張なく言える。

 それからお互い近況をなんとなく話した。狭山さんは結婚生活うまくいってるようだ。俺も、8月から会社員になれるので生活が安定することや、千歳は姿が変えられないだけで元気モリモリなことを話した。


「まあ、千歳がもとに戻ったら、また結婚しろ子供作れって言うようになると思うから、どうしようかなって」


 俺は今の生活の唯一の懸念を話した。俺は千歳の事好きだから、誰よりも好きだから、千歳以外の人と結婚して子供作れとか、もう無理なんだよな。

 狭山さんは、気遣わしげな顔をして「あの」と言った。


「和泉さん、もし結婚相手が欲しいってなったら、金谷家の人や緑さんあたりに言えば、人を探してくることはできるんですよ」

「え、そうなんですか?」

「和泉さんを通してでも千歳さんと縁を結びたい、という人はそれなりにいますし。そういう人なら、千歳さんとの同居も許容してくれますし」

「そうですか……」


 え、千歳との同居を許容してくれる人か……うーん、得難い人ではあるけど……。

 いや、でもダメだな。俺、心底千歳のことが好きだもん。咲さんには悪いことした。また同じことは、したくない。

 俺は首を横に振った。


「いや、いいです、結婚はその、あんまりしたくなくて」

「そうでしたか」

「というか、その……」


 どうしようかな、狭山さんになら言ってもいいかな。狭山さんなら、口止めしとけば守ってくれるだろうしな……。


「あの、ここだけの話にしてほしいんですが」

「何でしょう?」

「私、最近、千歳のことが本当に好きだと気づいてしまいまして。こんな状態で、他の人と結婚とか考えられないんです」


 言っちゃった。ついに人に言っちゃった。

 狭山さんは、大きく目を見開いた。


「え、あ、そうでしたか……」

「意外でした?」

「いや、やっぱりという感じなんですが、言わないことにしてるのかなと思ってたので……」


 あ、傍から見ても「やっぱり」なのか……。


「まあ、その、大っぴらにはしたくないですし、千歳には伝えないですが、狭山さんには話しても大丈夫かなと思って」


 俺は冷めたコーヒーをひとくち飲んだ。


「千歳、恋愛も性愛もピンときてないし、幼いところもあるし。幼いせいじゃなくて、アロマンティックでアセクシャルな可能性もあるし。そういう人に、私のこういう気持ちは、ぶつけられないので」

「あ、だから千歳さんには伝えないんですか……」

「伝えません。狭山さんも、どうしても誰かに伝えなきゃならない時は別に言ってくれていいですけど、千歳にだけは言わないで欲しいです」


 俺にめちゃくちゃ縁談が持ち込まれるような事態になったら困るから、そういう時は今の事実を上手く使ってくれて構わないし、狭山さんは割とそういうのが出来る人だと思うけど、千歳にだけはダメだ。

 狭山さんは真剣な顔で頷いた。


「誰にも言いませんよ、ここだけの秘密にします」

「ていうか、「やっぱり」に見えるんですね、私が千歳のこと好きなの」

「まあそりゃねえ……咲のことがなくても、人生どん底のときにいきなり押しかけてきて世話してくれて、愛嬌があって明るい人、って言ったら、好きにならない要素なくないですか?」

「ははは、本当だ、言われてみたら好きにならない要素ないですね」


 俺は苦笑した。狭山さんはまた気遣わしげな顔をした。


「そんな人が、他の人と結婚しろ子供作れって言ってくるの、厳しくないですか?」

「……割と厳しいです。私は、千歳と穏やかに仲良く暮らせれば、それが一番幸せなんですけどね」


 本当、これだけはどうすればいいんだろうな。でも、自分の力でどうにかしなきゃいけない問題だからな……。

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