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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第9シーズン

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楽しめるとこは楽しみたい

 千歳(朝霧の忌み子のすがた)がまた星野さんの旦那さんの畑の手伝いに行って、夏野菜をたくさんもらって帰ってきた。


『ただいまー! 見ろ! 大漁だぞ!』


 千歳の両手にはパンパンに詰まった大きなビニール袋がある。


「お帰り、大丈夫だった?」


 大丈夫? とは、いま千歳が普段と姿違うことを星野さんの旦那さんに納得してもらえたか、という話である。


『大丈夫だった。お前の言う通り、特殊メイクとコスプレが趣味で今はすっぴんって言ったら、何も言われなかった』

「ならよかったけど」

『ナスもトマトもいっぱいもらっちゃった、何作ろうかなあ』


 千歳は袋を持って台所に引っ込み、『そう言えば』とまた顔を出した。


『今度さ、本白神社の近くの公園で夏祭りやるんだって

「え、そうなんだ」

『そんでさ、星野さんにさ、浴衣貸すから着たら? って言われたんだけど、今のワシ浴衣似合う感じか?』

「浴衣?」


 今の千歳の見た目は、超絶美少女である。どんな服だって似合うと思うんだが。


「絶対似合うよ。貸してもらったら?」

『じゃ、夏祭り一緒に行こう!』


 千歳は笑った。


「え、星野さんと行くんじゃないの?」

『星野さんは旦那さんと夏祭りデートだって』

「へえー」


 まあ、夫婦仲がいいのはいいことだ。

 仕事が一段落ついてたので、俺はもう少し千歳と話そうと台所まで行った。もらってきた野菜をじゃばじゃば洗う千歳に話しかける。


「そう言えばさ、狭山さん、うちの近くにいいマンション見つけたんだって。すごく近く」

『え、どこだ?』

「そこの坂の下のマンション」


 うちは坂の上にあるアパートで、坂を下りたところにまだ新しいマンションがひとつ建っている。


『え、すごく近い!』


 千歳の目がきらめいた。やっぱ、推しの作家が近所に住むのは嬉しいんだろう。


「狭山さん、「近すぎてウザかったらすみません」なんて言ってたけど、いや千歳喜びますよって言っといた」

『うん! 嬉しい! 本出たら毎回サインもらいに行く!』


 狭山さんの現シリーズ、唐和開港綺譚はうちに献本が来るのだが、千歳は『ただで読ませてもらっちゃまずい』と毎回紙の本を買っている。それを狭山さんに話したら「なんていい人だ……」と感動していた。まあ、サインくらいしてくれるだろう。


『お前、食べたいナス料理とかあるか?』


 千歳が洗ったナスをザルにあげながら言った。


「ナスなら、浅漬け食べたいな。あと、焼きびたしもおいしかったし……前作ってくれた、スパイスカレーの上に焼いたナス乗せてくれるやつも食べたい」

『じゃ、トマトもあるし、昼飯はカレー作るか。浅漬けは夕飯まで待て。焼きびたしはそのうちやる』

「ありがとう」


 今日の最高気温は37℃。灼熱の夏である。生きているだけで厳しい季節だけど、夏野菜はおいしい。俺は幸い在宅仕事だし、千歳も熱中症の心配がいる存在じゃないし。無理しないで、楽しめるところを楽しめたらいいな。

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