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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第9シーズン

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全部やったし旅立ちたい

 博物館上階のレストランは、ずいぶん広くて明るかった。昼時でそこそこ人がいたが、俺達は運よく席を見つけられた。


『いい感じのとこだな』

「「「えびふらい! おこしゃまランチ!」」」

「うんうん、すぐ頼むからね」


 俺は千歳にメニューを渡し、千歳は幼児の霊に『ほら、お子様ランチあるからな、これ頼もうな』とメニューを見せていた。店員さんを呼び、おのおの注文する。


「「「おこしゃまランチ!」」」

「おろしそばください」

『エビフライ定食とチキンカツカレーください!』


 あれ、千歳アジフライ定食頼むって言ってなかったっけ?


「アジフライ定食じゃなくていいの?」

『うん、まあ、ちょっとな』


 幼児の霊用にオレンジジュースも頼み、しばらくして頼んだメニューがやってきた。お子様ランチには小さいエビフライとミニハンバーグとフライドポテト、最後に旗付きチキンライスが並んでいて、いかにも小さい子が好きそうなラインナップだ。


『ほれ、でっかいエビフライ、おまけだ』


 千歳が自分のエビフライ定食から、大きいエビフライを1本お子様ランチに乗せた。幼児の霊は目を輝かせた。


「「「きゃー!!」」」

「あ、千歳このためにエビフライ定食頼んだの!?」


 うわー、気が利かなかったな、俺!


『まあ、子供用のって小さいからな、1本くらい景気よくてもいいだろ』


 千歳は、なんでもないように言った。


「なんかごめん、全然気づかなくて」

『別に気にすんな、食べよう、いただきます』

「「「いただきまちゅ!」」」


 幼児の霊がちゃんと食事を食べられるか心配だったが、多少食べこぼしつつも、スプーンとフォークでよく食べていた。千歳より俺のほうが早く食べ終わったので、俺は食事で汚れた幼児の霊の口と胸元を、紙ナプキンで拭いてあげた。わー、手もドロドロだな。


「「「おいちかった!」」」

「よかったねえ」


 千歳が食事の手を休めて、幼児の霊の手の方を拭いてくれた。


『えらいぞ、好き嫌いしなかったな』

「「「うん!」」」


 千歳が食べ終わるのを待って、会計を済ませ、レストランの外へ出た。


『午後、めぼしいのあるか?』

「ジャンボブックの展示とか、よさそうなんだけど……」


 すると、幼児の霊が俺と千歳の手を掴んだ。


「「「ねえ、とってもたのちかった!」」」

「あ、そうか、よかったね」

「「「きょーりゅーみれて、他にもいっぱい見られて、おいしいのたべれた!」」」

『…………』


 千歳が険しい顔になって、幼児の霊を抱き上げた。


『ちょっと、人気が無いところ行ったほうがいい』

「え、なんで?」

『この子、心残りなくなったから、もう分解するぞ』

「え!?」


 と言われても、人気のないところなんてすぐ見つからない。とりあえず、近くの階段の踊り場を目指して駆け下りた。

 踊り場で立ち止まると、後ろから金谷さんと、もう一人女性が付いてきていた。確か村上さんと言って、千歳がバラバラになった時、駆けずり回ってくれた人たちの一人だ。

 千歳に抱き上げられた幼児の霊は、千歳に「「「だいちゅき!」」」と抱きついた。


「「「そっちのおじちゃんにもすゆ」」」

「俺!?」

『ほれ、やったれ』


 千歳から幼児の霊を差し出され、俺は慣れない手つきで、なんとか幼児の霊を抱っこした。幼児の霊は、俺にもぎゅっと抱きついた。


「「「おじちゃんも、だいちゅき。たのちかった!」」」


 俺の腕から、幼児の重さがふっと消えた。幼児の霊の姿はあっという間に透明になって、蛍火のような光がいくつか残り、その蛍火もあっという間にあちこちに拡散してしまった。え、これ、成仏したってこと……?

 金谷さんが残念そうに「あー、飛び散っちゃいましたか」と言った。


「だいたいご両親のところに寄ると思いますけど……追跡が大変ですねえ……」

『でも親の所行ったら、もうあの世行くだろ』

「それはそうなんですけどね」


 金谷さんといっしょに来た女性も、「あの霊たちの親は、ほぼ連絡先確認できてますから」と金谷さんを慰めるように言った。俺はまだよくわかってなくて、金谷さんに聞いた。


「えっと、これは、あの子、心残りなくなって成仏したってことですか?」

「えーと、心残りなくなって、個々の霊に分離しました。個々の霊は多分親御さんのところに行って、それからあの世に行くと思います」


 あ、そうか、あの子、病院で亡くなった子供の霊の複合体だったもんな。そっか、心残りなくなったならいいんだけど、午後もいろいろ見せてあげられると思ってたんだけどな……。

 よかったと思いつつ、なんとなく寂しい気持ちになっていると、千歳に声をかけられた。


『お前もお疲れ。いろいろやってくれてありがとう』

「ああ、いや、なんてことないよ」


 俺は頭をかいた。金谷さんが言った。


「本日は、お二人ともありがとうございました。肝心な部分は終わりましたので、このままお帰りいただいても大丈夫です」

『まっすぐ帰るのもアレだな。小田原駅になんかお土産あるかな?』


 千歳が俺に聞く。切り替え早いなあ、感傷に浸ってるの俺だけなのかな?


「まあ……焼きかまぼことか有名だって聞くけど……」

『じゃあそれ買おう。じゃ、あかりさん、村上さん、お疲れさま!』


 そんなこんなで、俺たちは博物館をあとにした。

 駅までのバスを待ちつつ、俺は千歳に聞いた。


「こんなんでよかったのかなあ、もっといろいろ見せてあげられたんだけど」

『よくなかったら分解してないぞ。お前、ずっとあの子に優しかったな』

「そうかな?」


 なるべく、大人としてやるべきことはしよう、と思ってたけどさ。

 考えていると、千歳はふっと優しく笑った。


『お前、いい父ちゃんになれるぞ』

「え!?」

『だからさあ、咲さんでダメだったのにめげないで、早いとこ結婚して子供作れよ』

「ええー、結局それかあ……」


 ……俺は、千歳とあの子と、家族みたいに歩く方が楽しかったよ。まあ、千歳には言えないけどね。

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