楽しく遊びに連れてきたい
博物館行き当日。金谷さんが車で迎えに来てくれた。車の中で金谷さんは言った。
「遠くからの見守り役として、私ともう一人も博物館に入りますが、本当に見守り役ですので、いないものとして扱ってください」
『じゃあ、あくまであの子を一番に扱う感じでいいな?』
「それでお願いします。あの子の心残りをなくすために、好きなものをたくさん見せてあげてください」
『お前も、頼むな?』
千歳が俺を小突いた。
「できるだけのことはやるよ、それこそ肩車とか」
『それでいい』
早朝の道路は割と空いていて、車は比較的早く以前の大きな病院についた。金谷さんに案内されて駐車場の裏の茂みに行くと、見覚えのある小さい子が飛び出てきた。
「「「おじちゃん!」」」
三歳くらいの、たぶん男の子。その子は千歳を見て「おじちゃん、おじちゃんじゃない……?」と首を傾げた。千歳は笑ってその子を抱き上げた。
『いまおっさんの姿になれないけど、ちゃんと前に遊んだおっさんだぞ! 今日はたくさん遊ぼうな!』
「「「あそぶ!」」」
幼児の霊は大いにはしゃいで笑った。金谷さんが言った。
「私が細工してるので、今のこの子はその辺の子と同じように他の人にも見えます。ご飯食べたりも、この子ならできます」
「じゃ、普通に遊んであげて、お昼とか食べさせてあげれば大丈夫ですね?」
「「「でんちゃのる!!」」」
千歳に抱っこされた幼児の霊がでかい声で言った。
「電車に乗るのも、普通で大丈夫です」
「じゃあ、大船から普通に乗ります」
俺は千歳に「荷物千歳の持つから、その子見ててあげて」と行って荷物を受け取り、みんなで金谷さんの運転する車に乗った。幼児の霊は、千歳の隣のチャイルドシートでずっとはしゃいでいた。
「「「きょうりゅういゆ? たくさんいゆ?」」」
「こういう恐竜の化石がいる博物館に行くよ、すっごく大きい化石もあるよ」
俺は、事前にプリントアウトした、小田原の博物館のリーフレットを幼児の霊に渡した。
「ほら、この恐竜の化石が一番大きいやつ」
「「「きゃー!!」」」
幼児の霊は小さい子特有の高音を発した。うるさいが、ご機嫌なのはいいことだ。
車は無事に大船駅に着き、「「「でんちゃ!」」」と騒ぐ幼児の霊を千歳と二人であやしつつ、改札を通った。東海道線のホームに行き、しばらくすると乗る予定の電車が来た。
『ほら、この電車乗るぞ?』
「「「きゃー!!」」」
「他の人もいるから、静かにね。具合悪い人もいるかも知れないからね」
「「「ばんそうこう、はゆ?」」」
「静かにしてたほうがいいからね」
電車の中でこの子を静かにさせるのは難儀だなと思ってたけど、意外にも幼児の霊はそんなに騒がなかった。窓の外の景色に夢中だったからだ。
「「「びゅんびゅんすゆ」」」
『早いなあ、楽しいだろ?』
千歳は、幼児の霊を膝の上で膝立ちさせて窓の外を見せながら、笑った。
「「「うん!」」」
電車は無事に小田原につき、そこからバスに乗って、俺達はやっと博物館に着いた。




