まともな服を着させたい
目のやり場に困りつつ、千歳と朝ごはんを食べる。
とりあえず、このままじゃ千歳を外に出せない。誰かに診てもらうこともできない。とにかく千歳の服を手に入れなければいけないが、女性用下着を買いに行くのは気後れするし、女の子のファッション全然わからないし!
「あのさ、女の子の下着とか俺買えないから、星野さんに事情話して、服買いに行くの手伝ってもらうの頼めないかな?」
そう提案すると、千歳はしょんぼりした。
『ワシ、こんな体で星野さんに会えない……』
え、千歳的には今の格好、評価低いのか?
……うーん、すごくかわいいんだけど、千歳が忌み子とされた理由が頭をよぎる。
孕むことも孕ませることもできない体。さっき千歳のフルヌードを見てしまったが、胸とご立派な竿はあったけど、睾丸はなかった。もし女性器もないなら、孕むこともできない認定されてたのに筋が通る。まあ、あんまりない体つきではある。でも、生まれつきなんだし、千歳は何も悪くないんだし。服着れば超絶美少女だし。
「えーと、服さえなんとかなれば、ぜんぜん大丈夫だよ! 星野さんに連絡できないなら、俺からするけど」
千歳は首を横に振った。
『いや、ワシのことだから、ワシから頼む』
「じゃあ、よろしくね。俺からもちゃんと言うけど」
朝ご飯後、俺が食器洗ってる間に千歳はスマホをいじり、星野さんにLINEしたようだ。
『いろいろあって、姿が裸から変えられなくなっちゃって、服買って欲しいけど、ワシは行けないって話した。星野さん、サイズ教えてくれって』
「サイズ……」
す、スリーサイズとか!?
『背丈とウエストがわかればいいって』
よ、よかった……。
定規があったので、千歳の身長と俺の身長(171cm)の差を測ってもらい、千歳の身長を類推した。うーん、154か155cmか。
スマホで身長とサイズ対照表を調べてみたら、Sとのことだった。俺が調べている間、千歳は定規をお腹周りに添わせてウエストを調べていた。
『ウエストはちょうど60cmだ』
「じゃあ、サイズはS、ウエストは60cmって星野さんに伝えて」
俺のスマホにも星野さんからのLINEが来た。
「女の子の下着って、要するにブラとショーツでしょう? ユニクロのブラトップが楽だし、ユニクロなら他の服も揃うから、とりあえず駅ビルのユニクロまで車出すわね」
「ありがとうございます、助かります。下着以外の服は私の方で買いますんで」
と言っても、女の子のファッションわかんないんだよな……。
千歳に「どんな服がいいとかある?」と聞いたら『スカートはちょっと恥ずかしいから、やだ』とのことだった。じゃあ、パンツとかデニムとかか……。
星野さんは「九時半に迎えに行くわね」とのことで、俺はお礼を言って時間を待った。
時間通りに玄関のチャイムを鳴らした星野さんを出迎え、俺は頭を下げた。
「本当にすみません、千歳、姿が変えられないこと以外には特に問題ないんですけど、恥ずかしがって星野さんに会いたがらなくて」
千歳は今、『星野さんに嫌われたらやだ!』と寝室に引っ込んでしまっている。
「そうなの? なんだか変な格好なの?」
「いえ、すごくかわいい女の子なんですけど、本人的には恥ずかしいらしくて」
ごく一部、あんまり女の子じゃない部分があるが、服着れば見た目は完全に女の子だ。
「そうなの……まあ、お年頃だといろいろあるわよね」
星野さんは頷いた。
「まあ、さっと買ってさっと帰って、千歳ちゃんにまともな服着せてあげましょう」
「ありがとうございます」
俺はまた頭を下げた。
ユニクロでは、星野さんに女性下着を見繕ってもらい、俺は店員さんに「すみません、中学生くらいの、サイズSの女の子に似合いそうな服を、スカート以外で4セットくらい見繕ってもらえませんか?」と全てを丸投げした。いや、俺女の子のファッションなんてわかんないんだもん!
店員さんは涼し気なブラウスやショートパンツをいくつか選んでくれて、俺は言われるがままにそれらを買った。星野さんが下着を持ってきてくれたので、それも買った。
「じゃあ、すぐ帰りましょうか。千歳ちゃん、気にいるかしら」
「スカートじゃなければいいって話だったんで、多分大丈夫です」
車はかなり飛ばして、すぐ家についた。星野さんに言われた。
「ね、やっぱり心配だから、千歳ちゃんの顔少し見たいんだけど、ダメかしら?」
「まともな服着れば変なことはないと思うんですけど……とりあえず着てもらって、恥ずかしくないよって説得してみます。少し待っててもらえませんか」
俺は「ただいま」と家に入り、寝室のふすまをノックした。
「服買ってきたよ、店員さんに選んでもらったから全然変じゃないよ。ね、星野さんが心配してるから、服着たらなんにも問題ないから、着て星野さんにちょっと会わない?」
ふすまがそろそろと開き、千歳が顔を出した。浮かない顔である。
『服だけでどうにかなるかなあ』
「服さえどうにかなれば全然問題ないよ! すごく見栄えするよ!」
『……とりあえず、着る』
「はい、服。好きなの着な」
俺は服が詰まったユニクロの袋を千歳に渡し、しばらく待った。
ふすまが開いた。
『変じゃないかなあ?』
ふんわりドレープの効いた水色のシャツ、すんなりした足がかわいいショートパンツ。いや、足に目をやるな俺! いやでも、十分外出られる格好だし、かわいい!
「すごく似合うよ、全然変じゃないよ」
『星野さんに嫌われないか?』
「全然そんな心配いらないよ!」
『……じゃあ、会う』
玄関を出て星野さんに千歳を見せると、星野さんは目を見開き「まあ、まあ、まあ」と言った。
「ずいぶんかわいくなっちゃって!」
『か、かわいいのか?』
千歳は、明らかに戸惑っていた。
「すごくかわいいわよ、いつにもましてかわいいわ!」
『そ、そうかな……』
千歳は嬉しそうでなく、本当に戸惑っている。うーん、今の千歳すごく美形なんだけど、それをあんまり理解してないのかな?
「今の千歳、すごく美人だよ。あんまりピンとこない?」
『び、美人!?』
千歳はものすごく驚いた。
「鏡見てわからない?」
『は、恥ずかしいからあんまり見なかった……』
星野さんが千歳の頭をなでた。
「まあまあ、恥ずかしがることなんてないのに。本当に、すごくかわいいわよ」
『あ、ありがとう……』
千歳は、恥ずかしそうに首をすくめた。
とりあえず、これで千歳の服装問題は解決だ。あとは……緑さんや南さんに相談だな。狭山さんや高千穂先生に診てもらって、異常なかったら、単に疲れってことだしな。




