今さら一人は超さみしい
九さんから連絡が来るまで特にやれることもなく、俺と千歳は普通の生活をしている。俺は仕事、千歳は家事と組紐作り。
お昼のきのこスパゲッティを食べていたら、千歳に聞かれた。
『四月からの新しい仕事、どんな感じだ?』
「うーんとねえ……頑張って早く終わらせると、「もっとやれるよね!」ってもっと仕事が来る」
俺は苦笑した。基本週二十時間、超過しても三十時間以内と言う契約にしてるけど、毎週三十時間になりそうだ。まあ、萌木さん、俺を育てるための仕事を割り振ってくれてるし、俺も萌木さんが育休と時短をするための負担くらい請け負いたいし、いいんだけど。
『そんなにたくさん大丈夫なのか?』
千歳が心配そうにするので、俺は安心してもらおうと少し説明した。
「仕事の総量自体はさ、整理し始めたからそこまでオーバーワークにならない予定。萌木さんのところの仕事最優先で、残りの時間は富貴さんと狭山さんの仕事にして、あとはよっぽどの仕事じゃないと断る感じにしてる」
富貴さんのところの仕事も継続的にあり、割がいい。狭山さんとの仕事については、ものすごく割がいいわけじゃないが、三巻から出版社との契約にすることになったので、俺にちょっと箔がつくのだ。
『ふーん、じゃあ残業しなくて済む感じか?』
俺は、夕飯の後の仕事を残業と呼んでいる。
「うん、まあ多少はするかもだけど、基本しないで済むようにスケジュール組んでる」
『そうか』
「千歳はさ、組紐の進み具合、どんな感じ?」
『もう七月納品の組紐まで出来たぞ!』
千歳は自慢げに胸を張った。
『だからさ、お前の名前を呼べるようにする解呪で、少し時間かかっても大丈夫なんだ』
え、解呪ってすぐ出来るものじゃないの?
「解呪って、そんなに時間かかるの?」
『術によるけど、解呪できる奴が限られるような難しいのは、まあ時間かかるかなあ』
千歳は考えるように首を傾げた。
『しばらく精進潔斎してどっかこもるとかも必要かも。でも、深山っていう古狸がやりやすいようにやると思うから、細かいところは本人に聞かないとよくわかんないな』
「そうなんだ……」
じゃあ、解呪の見通しが立ったら、千歳はしばらく外に泊まりになる可能性があるのか。
じゃあ、しばらく家に俺一人になる可能性があるのか……え、それ、考えただけですごく寂しいんだけど……。
感情のネガティブさが俺の顔に出てしまったのか、千歳は『安心しろ』と言った。
『精進潔斎で留守にするんでも、留守の間の飯は作っといてやるから』
「あ、うん、ありがとう……」
それはありがたいけど、そういうことじゃないんだよな。




