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できれば平和に過ごしたい

仕事は詰まっているが、千歳が用意してくれるおやつはなんとか食べている。レモンジンジャークッキーはピリッと辛くて、シャープなレモンの風味が追いかけてきて、すごくおいしい。『これもそんなに油っぽくないぞ!』と千歳が分けてくれたメープルビスケットも甘くておいしくて、入れてもらった紅茶にとても合う。

千歳(幼児のすがた)もちょいちょい俺と一緒におやつ食べるのだが、今日は白いクリームとジャムを乗せたスコーンをもふもふ食べている。紅茶を教えてくれた人が勧めてくれたお菓子で、これも紅茶、特にミルクティーがすごく合うらしい。

「ミルクティー、ハマってるねえ」

『うん! 夜、またミルクティー作って、てんころのアニメ見ながら飲むんだ!』

千歳は満足げにスコーンを頬張りながら言った。

てんころのアニメはよく出来ていて、評判も上々だ。千歳が好きな小説がちゃんとしたアニメになって、本当によかったよ。

俺としても、狭山さんは仕事相手であり、友だちになれそうな人であり、その人が関わったアニメがいい出来なのは嬉しい。

お茶を飲み終わるころ、ポケットに入れていたスマホが震えた。この震え方のリズムは、LINEだ。

スマホを見ると、金谷さんからだった。

「いきなりの連絡で申し訳ありません。これから言うことは、全て千歳さんに秘密にしてください。私からのこのLINEも秘密にしてください」

へ?

俺は面食らった。え、最近平穏に過ごしてたと思ったのに、何かあるの? 千歳絡みで? 大変なこと?

追いかけるように、また金谷さんからLINEが来た。

「できるだけ早く、明日にでもお会いできませんか?」

き、緊急事態?

何らかのまずい事態で、それが千歳に関することなら、俺はできるだけのことをしたいし、しないといけない。仕事は詰まってるが、予想より進行具合はいいので、俺はスマホに入れているスケジュールを見直して簡単にリスケし、金谷さんに返事した。

「明日九時から一時間だけなら空けられます」

俺が難しい顔でスマホいじりだしたので、千歳は不思議に思ったらしい。

『仕事の連絡か?』

やべ、何か察された。俺はとっさに答えた。

「うん、その、明日ちょっと外出る用事できた」

『仕事で? 珍しいな』

「えっとその、狭山さんと会うんだ」

俺は千歳に答えながら、超速で返信した。

「千歳に仕事で外出すると誤魔化したいので狭山さんとの話ということにしてもらえませんか?」

超速で返事が来た。

「狭山さんも参加するよう手配します」

て、手配……参加予定はなかったけど、参加をすぐ手配できる程度に重要なのか……。一時間で済むのかな……。

とりあえず、明日九時に、前に金谷さんと会った個室のある喫茶店で待ち合わせということで、話はまとまった。

「ねえ千歳、明日、星野さんちの畑の手伝いで朝早いんだよね?」

星野さんがくれる野菜はだいたい星野さんの庭の畑産なのだが、星野さんの旦那さんの実家の庭の畑もあり、そこの手入れに人が足りないので、千歳は普段もらう野菜のお礼にお手伝いに行くのだ。

『うん、七時半に出る』

「俺は九時に待ち合わせなんだけど、千歳が帰る前に帰れないかもしれないから、スペアキー持っていって」

『わかった』

千歳はうなずいた。

まいったなあ、最近平和に暮らせてて、悩みといえば仕事が忙しいくらいだったんだけどな……。千歳に秘密にしないといけない話、何なんだろうな……。

いろいろ気にかかって、考え込んでしまい、その日は、せっかくの千歳の夕食があんまりおいしく味わえなかった。

千歳は星野さんに野菜だの梅だのびわだの柚子だのもらいまくっているが、お返しに星野さんに簡単おいしいレシピを教えたり、もらった梅で作った梅干しを分けたり、もらったゆずで作ったゆずジャムを分けたり、今回みたいに畑を手伝ったりしているので、Win-Winでやれている

野菜は星野さんの旦那が趣味で作っており、星野さんはとれまくる野菜の消費に常に困っている

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