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閑話 スマートフォンと合挽き肉

最近、祟ってる奴は散歩の時、近所の花をよく撮っている。老人ホームにいるお祖母さんが花が好きで、花の写真をLINEで送ると喜ぶんだって。お祖母さんはスマホ持ってないけど、老人ホームの友達がスマホ使えるから、その人経由で見られるんだって。

きれいに手入れしてある花壇の満開のツツジを撮りながら、祟ってる奴はつぶやいた。

「カメラがしっかりしてるスマホでよかったよ、けっこうきれいに撮れる」

『どんなふうに撮れたんだ?』

「こんな感じ」

祟ってる奴はスマホをこっちに向けて見せてくれた。濃いピンクのツツジが燃えるようだ。

『他の写真も見たい』

「うん」

祟ってる奴はスマホをいじって、何枚か見せてくれた。色とりどりのパンジー、紫のアヤメ、満開の藤棚、薄いピンクのシャクナゲ。どれもけっこういい写真だ。スマホならきれいに撮れるのかな?

ワシもちょっと撮ってみたくなった。

『なあ、ワシも写真撮ってみたい』

花もきれいだけど、料理がうまくできた時とか、写真にとって記念に残しておきたい。

「一応、千歳のタブレットも写真取れるよ?」

言ってから、祟ってる奴は少し考える顔になった。

「いや、やっぱり千歳にスマホ持ってほしいな……そんなにないけど、帰りが遅い時とか、Wi-Fiなくてもできる連絡手段ないと心配だし」

ワシは首を傾げた。

『ワシ、強いから、さらわれたりしないぞ? 逆にぶっ飛ばすぞ?』

祟ってる奴は、ちょっと難しい顔をした。

「うん、千歳が強いのはわかってるけどさ、でも、千歳、帰りが遅いなと思ったら変なおじいさんにちょっかい出されて巨大化してたり、変なおばあさんに刺されてバラバラになったりしてるじゃん」

『う、それもそうだな……』

言われてみれば、けっこう大変な目に遭ってた。相手が悪かったと思うけど、帰りが遅いと心配だって言われたら、言い返せない。

「カメラがちゃんとしてるスマホ選ぶからさ、マイナンバーカードができたら契約しようか? 俺も費用出すからさ」

ワシが使うのだし、ワシ持ちでいいけど、と思ったけど、わざわざそう言うってことは、スマホって結構値段するのか?

『スマホって高いのか?』

祟ってる奴は、さらに難しい顔になった。

「うーん、ピンキリ。二万から二十万ってとこ」

『え、二十万は出せないぞ!』

お金は毎月けっこうもらってるし、なるべく貯めてるけど、二十万も出すかどうかはまた別の話だ。

「いや、でも、三万くらいあれば十分なの買えるよ。二十四回払いとか選べるし。中古だと一括だけど、総額はもっと安くなるはず」

『じゃあ、中古でいいカメラの探してくれ』

「おっけー」

その後も、花を探してぶらぶら歩きながら、夕飯の話をした。

『なあ、合いびき肉が安かったんだけどさ、いっぺんに使ってハンバーグにするか? それとも、野菜炒めとかじゃがいもの煮っころがしにちょっとずつ使うほうが好きか?』

こいつ、何出してもおいしいって喜ぶけど、おいしいの反応にも幅があって、肉ドーンと出すより、肉の出汁が染みた野菜とかのほうが反応がいい気がするんだよな。

予想通り、祟ってる奴は野菜の方に反応を示した。

「うーん、ケチるわけじゃないんだけど、じゃがいもの煮っころがしって聞いたら、そっちが食べたくなっちゃったな……ハンバーグも好きではあるんだけど……」

『カボチャと一緒に煮て、あんかけにするのもできるぞ?』

「あ、それもすっごく食べたい。ちょっとずつ使う方がいいな」

やっぱり野菜のほうが反応がいいな。こいつの好きなものは肉の出汁が染みた野菜、覚えておこう。

『じゃあ、今日の夕飯はイモの煮っころがしな。カボチャが安く買えたら、あんかけも作る』

新じゃが買ったから、皮付きのまま適当に切って煮ればいいや。タブレットでの写真の撮り方こいつに聞いといて、写真も撮ろう。うまく撮れたら、Twitterで他の人がやってるみたいにインターネットに乗せるのもやりたいな。

Twitterの料理垢に紛れるタイプの怨霊

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