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あなたをすぐに慰めたい

千歳は、ボロボロ泣き出した。南さんが慌てた。

「だ、大丈夫ですよ、悪霊の影響は泉さんからもう感じられませんよ!」

『あ、悪霊からは助けられたけど、そうじゃないんだ、あいつずっと苦しかったんだ、それ、ワシずっと知らなくて』

南さんは千歳にハンカチを差し出したが、泣きじゃくる千歳には全然見えていなかった。千歳は独白するように泣きながら話した。

『あの怨霊にあいつが捕まった時、あいつの気持ちがワシに流れてきたんだ、あいつ、生まれてこなきゃよかったって思ってた、ものすごく思ってた』

え、そんな現象起きてたの!? どうしよう、確かにそう思ってたけど、千歳、泣くことないだろ、ごめん、泣かないでくれよ!

千歳は、しゃくり上げながら言葉を続けた。

『ワシ、ワシの中の奴らも、きつい思いはたくさんしてきたけど、それでも生まれてこなきゃよかったなんて思ったことないのに、あいつそんなに辛かったのかって、そりゃ親が悪い事してて、金なくて、体壊してて、友達も趣味もないんじゃ、なんにも楽しいことないのかもしれないけど、ワシあいつのそばにずっといて、あいつけっこう楽しくやってるのかと思ってたのに、あいつすごく優しいのに、ワシあいつが辛いってずっと気づかなかったんだって、そう思ったら、ワシ、ワシ……』

うわー、確かに千歳の言う通りな現状の俺だけど、でも、そんなに泣かないでくれよ! 俺、千歳が来てからすごく幸せなんだよ! そりゃ最近は落ち込んでたけど!

思わず千歳に寄ってなだめようとしたが、それで千歳が俺のことを知覚するわけもない。

南さんが千歳の背中をなでて、ハンカチを渡しながら慰めようとした。

「大丈夫ですよ、あの、和泉さんは千歳さんがいて嬉しいと思いますよ」

千歳は渡されたハンカチで一生懸命涙をぬぐって、それでも涙が止まらないみたいで、目にハンカチを押し当てながら涙声で言った。

『でも、でも、あいつ本当に辛かったんだ、生まれてこなきゃよかったと思うくらい、そんなに辛かったんだ、どうしたら助けてやれるんだ、人生って、話してて楽しいとか飯がうまいとかじゃだめなのかなあ、それでも生まれてこなきゃよかったと思ってるのかなあ、どうしたら、どうしたら、あいつのこと、助けてやれるのかなあ』

背中を震わせながら、千歳はどうしても泣き止むことができないようだ。

どうしよう、どうしよう、いや今の俺じゃ千歳に何もできない、まず体に戻らないと!

千歳ごめん、俺すぐ元気になるから、そしたらたくさん千歳のこと慰めるから、俺、千歳がいて本当に嬉しいよって言うから、ちょっと待っててくれ!

俺はフロアガイドのパネルに急行し、救急病棟への生き方を確かめて、全速力で救急病棟に向かった。

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