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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第25シーズン

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君と二人でデートしたい

 もっと千歳と恋人っぽいことがしたい。ひと言で言うなら、デートらしいことがしたい。でも遠出はまだ不安だな……いや、駅前までくらいなら行けるか? バスも出てるし。

 駅前で千歳が喜びそうなのは、そうだな……駅ビルがある方の駅にある、コメダ珈琲とかどうだ? あそこなら、おいしいものが特盛で食べられるし。

 朝ごはんのとき、千歳に「今日はさ、散歩がてら駅前のコメダに行かない?」と聞いてみた。


『前シロノワール食ったところだっけ?』

「そうそう、デザートも食事系もいっぱいある。おごるからさ、コメダでお昼食べない?」

『食べる!』


 千歳の目はキラッキラ。俺は思わず笑った。


「あそこ、おいしいメニューたくさんだもんね」

『うん、シロノワールとみそカツパン食べたいし、あともう一品くらい欲しいな』

「最近はさ、カッサータって言うケーキもおいしいらしいよ、ドライフルーツ入りのチーズケーキ」

『じゃあそれ!』


 そう言うわけで、お昼前に家を出た。千歳はうきうきと嬉しそうだ。


『お前と外食、久しぶりだなあ』

「そういえばそうだね、本当だ」


 3月からこっち、がんで手術だわ抗がん剤だわで外食どころではなかった。退院してからも、散歩したら疲れちゃって遠出どころではなかったし。

 俺はてっきり、千歳はコメダのご飯が楽しみでたまらないのだと思っていたが、千歳は俺にはじけるような笑顔を向けて言った。


『お前がさ、駅前まで出れるくらい元気になってよかった!』

「…………」


 千歳、俺が元気になったことが嬉しかったのか……。

 思わず千歳を抱きしめて頬ずりしたくなったが、道がバス停に近くなり、人通りがあったのでぐっとこらえた。代わりに言った。


「千歳のおかげだよ」

『まあ、いろいろ食わせたからな』


 千歳は得意げだ。

 バスに乗り、駅に着いた。駅ビルの近くのフードコートに行き、フードコートの隅っこにあるコメダ珈琲の店舗に入る。店員さんが席に案内してくれた。

 千歳は、さっそくメニュー表を開いた。


『みそカツパンは絶対だろ、あ! シロノワール、新しいのがある!』

「どんなの?」

『シロノワールクランキー! これ頼む!』

「あとはカッサータ?」

『うん、コーヒーも飲みたいからデザートセットでコーヒーつける』

「じゃ、俺もコーヒーと、あとハムサンドにしとくかな」


 そう言うわけで店員さんを呼んで注文し、食事が続々と運ばれてきた。


『んまーい!』


 千歳はみそカツパンを頬張り、もぐもぐと幸せそうだ。俺が頼んだハムサンドも、からしマヨが効いて、レタスがシャキシャキでおいしい。まあ、ちょっと量が多いけど。

 千歳は、デザートに運ばれてきたシロノワール攻略に入った。キリッとした顔で言う。


『ソフトクリームとデニッシュ、最後まで一緒に口に入れられるように配分をしっかり考えるのが大事なんだ』

「プロだなー」


 コーヒーを飲みながら、シロノワールをもりもり食べる千歳を眺める。千歳が幸せに食べてるのを眺めるのは、今まで何度もやってきたことだ。だから新鮮なことじゃないけど、俺はこれが幸せだから、これでいい、これがいいんだよな。

 千歳はカッサータもしっかり食べ、俺たちは帰途についた。バスに乗って降りて、家へと向かう。


『いやー、んまかった!』

「そりゃよかった」


 話しながら俺は気づいた。これ、千歳はデートと思ってないな? 単においしいもの食べに行っただけだな?


「千歳、あのさ」

『何だ?』

「今日、デートのつもりだったんだけど」


 俺が苦笑してみせると、千歳はやっと気づいたみたいだった。


『え!? マジか?』

「あんまりロマンチックじゃなかった?」

『いや、その、うまいもの食べることしか考えてなかった……』

「まあ、そうだと思ってたけどね」


 俺は、大通りから住宅街に入って、人気がないことを確認し、自分から手を伸ばして千歳と手を繋いだ。そして、千歳に笑いかけた。


「俺がまだ全快じゃないから、近場だったけどさ。これからいっぱいデートしようね、いっぱいいろんな所行って、いっぱいおいしいもの食べようね」

『…………』


 千歳は、目を見張った。


『お前、ワシのこと好きすぎだろ……』

「そりゃあもう、この世で一番好き」

『なんでそんなに好きになっちゃったんだよ!』

「一言じゃ説明が難しいな」

『しなくていい!』


 でも、千歳は俺の手を振り払わなかった。俺は、それだけで満足だった。

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