番外編 金谷千歳の宣言
ワシは朝イチでお見舞いに行った。和泉は前と同じ病室にいた。
『おはよう! 大丈夫か!?』
「千歳! 久しぶり!」
ワシは和泉に会えて、とっても嬉しかったけど、すぐ心配になった。直接会うと、和泉は前よりももっと頬がこけて見える。
『食べてるって聞いてたのに、なんか前よりもっと痩せてる気がする……』
「うーん、今日はメイバランスもプロテインゼリーも食べれたんだけど、やっぱりカロリーまだ足りないみたい」
『そっか……』
ワシはベッドの傍らの椅子に座った。
『ワシ、何でもしてやるぞ』
「何でも?」
『何でも』
和泉は少し考えて、それから言った。
「……手を握ってくれない?」
『うん』
ワシは、両手で和泉の右手をそっとつつみ込んだ。骨ばった手。去年の春に手を握ってもらったときより、ずっと痩せた手。
手を握る、か。恋人同士なら、普通にすることだ。和泉は、ワシとずっとこうしたかったのかな。やっとこうできたのかな……。
『あのさ』
「うん」
『お前の気持ちに気づかなくて悪かった』
「いいよ」
和泉は、少しさみしげに微笑んだ。ワシは、ずっと和泉につらい思いをさせてたんだよな。
『あのさ、ワシもお前が大事だよ。ずっと一緒にいるつもりだ』
「え、本当!?」
色めき立つ和泉。
『でも、お前が自分の子供よりワシが大事なんて信じられないから、ワシはお前のそばで、お前がいい女と結婚できるように引き続きやっていく』
とたんに和泉はしぼんだ。
「信じてくれないのかあ」
『つーわけだから、ちゃんと体治せよ、再発とかするなよ』
和泉はじっとワシを見つめ、そして言った。
「ねえ、千歳」
『なんだ?』
「俺が一生結婚しなかったら、そしたらずっと千歳が好きだって信じてくれる?」
は!? こいつマジで一生独身のつもりなのか!?
『だからなんでそんなにワシのこと好きなんだよ!』
「一言じゃ説明が難しいな」
和泉は屈託なく笑った。
『説明しなくていい!』
でも、久々に会えた和泉は幸せそうに笑ってる。まあ一応はこれでいいのかな。ずっと一緒にいて、ずっと大事にすれば、一応はこれでいいのかな?




