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32.<新国王視点>アンデッドギガース出現の報告



 ඐඐඐ ここから新国王視点 ඐඐඐ



 どうしてだ、どうしてだ、どうしてだ、どうしてアンデッドなどという魔物が、突然、国内各地に現れたのだ!? 俺が新国王になって早々、こんなトラブルに見舞われるとは……。


 宮廷まじない師を呼びつけた。


「アンデッドの問題、お前のまじないでなんとかならないのか」

「申し訳ございません。これにつきましては専門外でございます」

「くうううううぅー、役立たずめっ!」


 低頭する宮廷まじない師を、蹴りとばした。

 宮廷まじない師が起きあがる。


「ですが、発生の原因ならばわかっております」

「原因だと? 申してみろ」

「はい。ドラゴン像の破壊が原因に間違いありません」

「な、なんだと。そんな馬鹿な!」

「では陛下。ドラゴン像が建てられた理由をご存じでしょうか?」

「知るものかっ」

「古い文献では、アンデッドを封印するためだとされております」

「…………」


 ドラゴン像がアンデッドを封印していた?


 あれを壊すように命令したのは俺だ。

 ならば俺が引き起こしたことになるのか。



 歯ぎしりした。呼吸が荒くなった。


 だが、俺にこのようなことをさせたのは、呪竜の目のアイツだ。

 アイツさえいなければ……。ああ、むしゃくしゃする。


 スタスタスタ。


 側近が真っ青な顔してやってきた。

 玉座の前でひざまずく。


「陛下!」

「何を慌てているのだ」


 またどこかでアンデッドの群れが現れたのか?

 その話ならばウンザリだ。


「国内にアンデッドギガースが現れました!」


 何っ、アンデッドではなく、アンデッドギガース……? まさか!!


 アンデッドギガースの伝説ならば、聞いたことがある。単に超巨大なアンデッドというだけではない。聖水でも回復魔導でも、ほとんどダメージを与えられないと聞いている。よりによって、そんな最悪といえる化け物まで登場したのか。


 側近が報告する。


「多くの兵士や冒険者に対応させましたが、ことごとく惨敗しております」


 ぐぬぬぬぬぬぬぬ。


 我が国の誇る聖魔導騎士団はどうなっている?

 それから魔老七賢人はどうなっている?



 聖魔導騎士団や魔老七賢人についての報告は、翌日届いた――。



「陛下。聖魔導騎士団が一晩かけて、一体のアンデッドギガースを倒しました」

「さすがは聖魔導騎士団。やってくれたか」


 それでも側近の表情は重々しかった。


「しかしながら、彼らは満身創痍の状態です。肉体的にも精神的にも消耗しているため、当分は戦力外として休息をとらせる必要があります」


 休息? 馬鹿か。こんな状況で休みを認めるわけにはいかないだろ。


「許さぬぞ。休ませるな!」


 別の側近がやってきた。


「陛下、報告がございます」

「申してみるがいい」

「魔老七賢人がアンデッドギガースに敗北しました」

「なぬっ、敗北だと?」

「はい。まったく歯が立たなかった模様です」


 俺は頭を抱えた。


 あの魔老七賢人が? 信じられないことだ。

 アンデッドギガース……。それほどまでに強敵なのか。


 さらに別の側近も報告にやってきた。

 とりあえず内容を聞いてみる。


「隣国からの応援部隊『梟たちの茶会』がアンデッドギガースを撃退しました」「おお、隣国の…。彼らは活躍してくれたか」


 本来ならば、他国の部隊などに活躍してほしくないところだ。

 しかしこの状況では、そうも言っていられない。


 ところが……。


「陛下。しかしながら隣国からの支援は、明日までという取り決めがございます」

「ならば報酬をいくらでもくれてやれ。何がなんでも引き留めるのだ」

「はいっ、ただちに交渉いたします」


 側近は交渉に向かった。


 ああ、不安だ。カネで説得できるだろうか。どうにか国に留まってくれなければ困る。いまアンデッドギガースに対抗する手段がほとんどないのだ。



 翌日、その側近から報告があった。

 もちろん、隣国からきた応援部隊『梟たちの茶会』についてだ。


 報告の内容を聞き、怒りが湧いてきた。報酬について指値があったというのだ。

 しかもこっちの足元を見るようなとんでもない金額だった。

 これでは国家が破産してしまう……。


 それでも受け入れるしかなかった。背に腹は代えられないのだ。


「要求どおりの報酬を用意してやれ」


 俺はそう告げてうなだれた。



 しばらくして、新たな報告が入ってきた。

 報告するのは、さっきとは別の側近だ。


「アンデッドギガースが、ここ王都にも現れました」

「まことかっ。この王都にまでやってきやがったか」

「しかし陛下。アンデッドギガースはある者により、即座に倒されました」


 なんと、アンデッドギガースが即座に!? いったい何者が……。

 もしや身近なところに、勇者や大英雄が隠れ住んでいたのか。


 前のめりになって詳細を聞く。


「そのような手練れが王都にいたとは喜ばしい。その者はどこにいる?」

「現在、国外へ輸送中です。これから事故を装って処刑といたします」


 はあ? どういうことだ……。

 なんとなく悪い予感がする。


「い、意味がわからんが……まさか?」

「呪竜と同じく空色の目を持つ者です」


 アイツか! やはりアイツだったか!!

 イヤな予感が的中してしまった。しかし何故アイツなのだ。


「その話は聞かなかったことにしよう」


 側近の真剣な顔に、大汗が流れる。


「陛下、しかし問題が起きております」

「どうしたのだ」

「非常に困ったことになっておりまして……」


 頭をさげながら、とつとつと話し始めた。


「……アンデッドギガースを倒した人物について、噂はまたたく間に国じゅうに広がりました。その人物が呪竜の目を持っていることも、すでに多くの国民が耳にしております。国民は望んでいます。罪人の国外追放が無効とされ、正式に迎え入れられることを」


 なんたることだ。ヤツが処刑予定であることまでは、さすがに国民に知られていないようだが……。


 だいたいヤツの国外追放は、国民だって強く支持していたではないか。

 誰もが刑の執行を喜んでいたのに。まったくこの変わりようはなんだ!


「だとしてもヤツを迎え入れることなどできない」


「ですが、陛下。多くの国民がアンデッドの出現に怯え、国外へと流出しております。アンデッドの問題がなくならない限り、国民の流出は止められません」


 ああ、もうどうすればいいのだ。

 国民流出は国の弱体化を意味する……。


 頭がくらくらしてきた。何も考えたくはない。

 アイツ、どこまで俺をイライラさせれば気が済むのだ。


 アイツめ、アイツめ、アイツめ、アイツめ、アイツめ。

 ああ、憎たらしい!!


 ぎゅっとコブシを握り締め、椅子の肘掛けを叩いた。


「ヤツを呼び戻せ。アンデッドギガース退治に回すのだ。国外追放も処刑も取りやめだ」



 ඐඐඐ ここまで新国王視点 ඐඐඐ




ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!

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