25.<リーダー視点>いまさら
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俺は覆面で顔を隠し、シドを懲らしめてやるつもりだった。
しかし凍結の魔導で返り討ちにされてしまった。
この体は凍ったため、動けもしないし、喋れもしない。
弟分のジェムが少し険のあるような声で言う。
「リーダー、カチカチに凍ってますけど……。熱湯、かけてみましょうか」
馬鹿、やめてくれ! 拷問か!!
くそっ、叫びたくても声に出せない。
しばらくしてパッと動けるようになった。自然と少しずつ体が解凍されていったのではない。どう考えても人為的なものだ。つまりシドの情けによって魔導が解かれたってことか。
それにしても、この俺が惨敗するなんて……。
いつからシドはこんなに強くなったんだ?
名高い魔導サロンの一員であることも納得できる。
俺と弟分の二人で、妹分を追うことにした。
運よく一本道だったので、見つけることができた。
だが、シドの姿もあるではないか。
ようすをうかがってみた。
二人がカフェに入っていく。ならば俺たちも……。
あまりカネを無駄遣いしたくないが仕方ない。
二人は並んで座っていた。席は少し遠いが、耳を澄ませてみる。
妹分ムンムンは科を作るように、シドに肩を寄せるのだった。
「ちょっ……近いよ。ムンムン」
「いいじゃない。少しくらい」
彼女は何やってるんだ?
「ああっ、ムンムンが……」
弟分ジェムが椅子の肘掛けを叩く。
俺は弟分ジェムの頭を殴った。
「おい、静かにするんだ。気づかれたらどうする?」
「でも、あれ、いつものムンムンじゃありませんよ。女の目になってます」
「いいから黙れ。お前が喋ると会話も聞こえなくなる」
会話に集中し、耳を澄ます。
彼女の声が聞こえた。
「あたしね、シドがいなくなって、ずっと寂しい思いをしていたの。本当よ」
「な、なんのつもりでしょうか。要件を早く聞かせてください」
「もぉー、シドったら冷たいのね」
「ちょっと、ムンムン。どうしたんですか。さっきから近いですよ」
「もしかして照れてる? フフフっ」
「そろそろ話してください。いったい、きょうはなんの用ですか」
「あたし、シドがいないのなら『爆裂ペガサス』をやめてもいいかなって思って」
えーーーーーーーーっ
ムンムンがパーティをやめるって!?
そんな……待ってくれよ。
衝撃を受けたのは、ジェムもいっしょのようだ。
「リーダー、ムンムンがあんなことを言ってます!」
「静かにしろ。何度も言わせるな」
俺は平静を装った。
「それって僕は関係ないじゃないですか」
とシドの声。
拗ねたように頬を膨らませる妹分ムンムン。
「関係なくないわよ。同じパーティの仲間だったじゃない。シドはあたしのこと、キライなの?」
媚びるようにシドの目をじっと見つめる。
「少なくとも、あまり好感はもてませんね」
「ぶううぅ。ひどーい。じゃあ一つ教えて」
「何をですか」
「どうして魔導師として急に成長できたの?」
そうだ、ムンムン。
俺も聞きたかったことだ。
「あなたのところのリーダーが、僕の目にダガーナイフを当てたこと、覚えていますか? そのケガがきっかけだったんです。目の中に封印されていたものが、解放されたようなんです」
あのとき俺の投げたダガーナイフが……。
すべてあれがきっかけだったか。
シドは席を立った。
「もう僕は帰ります。これ以上、話すことはありません」
そう言ってカフェを出ていく。
「待ってよ」
ムンムンがシドを追う。
ああ、シドが行ってしまう。
俺たちも追わなければ。
とりあえず謝ろう。そしてパーティに戻ってもらうんだ。
でなければ、借金を抱えた俺たちは……。
シドを追いかける。
そして大声で呼んだ。
「シドぉーーーー」
聞こえなかったようなので、もう一度叫んだ。
すると今度は振り返ってくれた。
「リーダー……?」
不思議そうな顔のシド。
俺はすかさず土下座する。
「このとおり謝る。俺たちのもとに帰ってきてくれ。また組もうじゃないか」
「えっ、何を言ってるんです? もう、あなたに殴られるのはイヤなんです」
「二度と殴らない。シドを追放したことをいま後悔してるんだ。許してくれ」
「いまさら何を言っているのでしょう。謝るの、遅すぎませんか。僕は数えきれないほど暴力を受けました。特にダガーナイフなんて目に刺されば、どれほど痛いものなのか……。あなたに想像できますか」
「そう言われると……。だけどお願いだ。帰ってきてくれ。なんでもする!」
しばらくの間、沈黙が包んだ。
俺は土下座したままだった。
やがてシドが溜息を吐いた。
「なんでもですか?」
「ああ、約束する」
このままだと、俺は借金のために奴隷落ちだ。どうしても仲間にしなければ。
シドは腰にさげたナイフを、ポンと地面に放り投げた。
「わかりました。ならばこうしてください。そのナイフで自分の左目を刺してみてください。あのときの僕の痛みがわかると思います。それができましたら、あなたのパーティに復帰しましょう」
なんだと……。こ、このナイフで自分の目を……?
我慢してやるしかないのか。
俺はナイフを拾った。
イヤだ。無理だ。
できるはずがない。
「急いでくれませんか? そろそろ魔導サロンに行く時間なんです」
そんな……。
俺の手が震えている。やはり無理だ。できない。けれども借金返済のためには、どうしてもシドに帰ってきてもらわないと困る。
そうだ!
「わかった。俺に代わって、コイツがやる」
弟分を指差した。
「え!? リーダー、酷いですよ。どうして俺なんです!」
「いいからお前がやれ」
唇を噛み締める弟分ジェム。
目がキッと鋭くなった。
「断ります。イヤに決まってるじゃないですか! 本当にあなたって人は……。もう、リーダーの下で働くのはゴメンです。これまでとします。さようなら」
ジェムが去っていく。
妹分と目が合った。
「なあ、ムンムン。俺たち、カネが必要なのは理解してるだろ? 頼む。ムンムンがこのナイフで……」
ジェムと同じような目を俺に向ける。
「はあ? どうしてあたしが? シドの目を刺したのは、リーダーじゃない。もうやってられない。あたしもアンタから離れることにするわ。お達者で」
ムンムンまで行ってしまった。
俺はナイフを落とした。
自分の目に刺すなんてできない……。
シドもその場を歩き去った。
それから二十日くらいが過ぎた頃、俺は借金取りに捕まった。
このまま奴隷落ちとなる可能性は高い。逃げれば殺される。
ジェムとムンムンも、どこかで捕まったことだろうか。
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