24.<リーダー視点>嘘っぱち
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俺たちはダークドワーフから解放された。信じがたいことだが、危機を救ってくれたのはあのシドだった。いったいどういうことだ。いま頭が混乱している。
そうだ、絶対に何かの間違いに決まってる。なぜならバイソンオーガやダークドワーフの群れを、あのシドが一人で倒せるわけなどない!
例のダンジョンから最も近い町に寄った。九十三人の冒険者集団は、この町で解散となった。結局、今回のクエストでは何も得ることができなかった。まったくの骨折り損ということだ。
ああ、借金の返済はどうしよう……。
俺たち『爆裂ペガサス』の三人は酒場に行くようなカネもなく、ただ広場のベンチに座っていた。三人とも疲れ切っていた。弟分のジェムが俺の隣で、顔をチラチラとうかがっている。何か話したいことがあるのだろう。
「なんだ、ジェム。気持ちわりぃーな。話があるのなら言ってみろ」
「では……その……シドをまた我々の仲間に入れたらどうでしょう」
「馬鹿言え。却下だ」
「そろそろリーダーも、シドの実力をわかってきたんじゃないんですか」
コイツ、何を言ってやがる。
「ふざけるな!」
弟分ジェムを殴った。
地面に倒れても、また立ちあがる。
「なんだ、その不満そうな目つきは」
「別になんでもありませんよ」
すると横から妹分のムンムン。
「あたし、ジェムの意見に賛成なんだけど」
「お前まで言うか」
「だって……」
「うるさい!」
妹分ムンムンを怒鳴りつけた。それから誰も何も言わなくなった。
そろそろ夜だ。さっさと安宿で寝ることにした。俺は焦っていた。借金の返済期限が、三日後に迫っていたからだ。その日を過ぎれば利子が跳ねあがり、たぶん返せなくなって奴隷落ちだ……。
翌日、この町の冒険者ギルドに三人で行ってみた。
もしかして自国のギルドよりいいクエストがあるのではないか、と期待して。
しかし実際、なんら変わりがなかった。
ギルドなんてどこもいっしょのようだ。
ある記事がギルドの掲示板に張られていた。
記事を発見したのは妹分のムンムンだ。
「あっ、これシドよ」
確かにアイツの似顔絵がある。
その下にシドという名前もあった。
その記事を読んでみた。
近隣国の魔導サロンについて書かれていた。そこには様々な国から極めて優秀な魔導師が集まっているらしい。メンバーは現在七人。そのうちの一人がシドだというではないか。
そんな馬鹿な……。どうしてあの出来損ないが?
まったくいい加減な記事を書きやがって!!
妹分ムンムンが嬉しそうな顔をする。
「ほら、シドはやっぱり……」
「騙されるな。こんなのは嘘っぱちだ」
「もう、そういうのやめてよ! いい加減、認めたらどうなの?」
こんなに怒った妹分ムンムンの顔を見たのは初めてだった。
「リーダー。一度でいいからシドに会ってみたらどうですか」
弟分ジェムが言った。コイツの不満が溜まってきていることを知っている。このままでは『爆裂ペガサス』が解散となる日も遠くない、そんな気配のようなものを強く感じた。
「わかった」
今度ばかりは俺が折れることにした。
ムーリア王国に三人でやってきた。
この国に魔導サロン『梟たちの茶会』があると聞いている。
まずはシドを探す。はたしてシドに会えるのだろうか。
この国の人々は、ほぼ全員が『梟たちの茶会』のことを知っていた。シドの知名度もなかなか高かった。しかし彼らの集まる場所については、知っている者がいなかった。
『梟たちの茶会』の場所は不明だったが、苦労の末、シドの行きつけの食堂を突き止めた。ちょうどいまシドがそこでメシを食っている。しかし俺たちはその食堂に入っていくことができなかった。料理がちょっと高めの店だったからだ。
店からシドが出てきた。
弟分ジェムが念を押すような口調で言う。
「さあ、リーダー。ちゃんとシドと話してくださいね」
「まあ、待て。人通りが少なくなるまで、シドをつけていく」
「人通りなんて関係ないと思いますけど……」
ジェムを無視して尾行を続ける。
人通りが少なくなった。
「お前たちはそこに隠れて見てろ。絶対に出てくるな」
ここで俺は覆面を被った。
「なんのつもりです?」
「黙って見てろ」
二人をその場において走った。
シドに先回りして立ちはだかる。
こっちを見てポカンとするシド。
俺のことは覆面があるので、バレてないはずだ。
「お前に仕置きしてやりにきた」
「へっ、なんです?」
小首をかしげるシド。
ヤツは微弱な魔導しか使えない。ファイアボールにしたって極小だ。
俺の特大ファイアボールを見ろ。そして泣け。いまそれを見舞ってやる!
てのひらに炎を生成した。
それぇーーーーーーーっ
同時にシドも魔法を仕掛けてきた。
カチカチカチカチカチカチカチカチ……
なんてことだ! いったいどうなっている?
俺のファイアボールが一瞬のうちに消えた。
急激に辺りが凍りつく。もちろん俺の体も同様だった。
痛い。体が凍りついて動かない。
俺、まさかシドに負けたのか?
出来損ないの役立たずに負けたのか?
そんなの信じられない……。
シドは俺を氷漬けにしたまま、歩き去ってしまった。
「リーダー、しっかりしてください。大丈夫ですか」
弟分が駆け寄ってきた。
俺は体が動かないので返事もできない。
溜息を着く弟分。
「話が違うじゃないですか。一度話してみるんじゃなかったんですか。これ自業自得ですよね。ムンムンは怒っていっちゃいましたよ」
言葉だけは丁寧だったが、内心、穏やかでないことは明白だった。
シドを追っていく妹分の姿が見えた。別行動を許した覚えはない。
俺、もう愛想を尽かされたのだろうか。
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