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23.毛深いゴブリン


 バイソンオーガの群れを始末し、ホッとしていたところだった。


 アチチチチチチ


 僕の腕を掠ったものがあったのだ。いまのはファイアボール?

 またもや飛んできた。うん、明らかにファイアボールだ。


 この洞窟にまだ魔物がいたのか。しかも魔導を使えるとは。

 ようすをうかがっていると、向こうが姿を現してくれた。


 毛深いゴブリンだ。しかもまた群れではないか。

 再度ファイアボールがきた。今度は十発くらい同時に。


 間一髪、身をかわす。

 おっとっと……危ない、危ない。


 ファイアボールの攻撃が止まった。


 氷漬けのバイソンオーガを見て、唖然とする毛深いゴブリン。

 丸くなった目をこっちに向けてきた。


「おい! お前一人でバイソンオーガを……」

「わあっ、毛深いゴブリンが喋った!?」

「誰がゴブリンだ! 我々はダークドワーフだ」

「ほぼ同じじゃん」

「ぜんぜん違う!」


 本人がそう言うのなら、やはり違うのか。

 まあ、確かに服を着ているので、少し人間っぽいかな。


 ダークドワーフの群れがふたたび攻撃開始。

 見たこともない魔導だった。


 炎の棍棒、光の鞭、触れたらヤバそうな泡、宙を舞うコウモリ人形……


 僕には防御魔導も回復魔導もないため、喰らうわけにはいかなかった。

 いったん後方へと引き返し、距離を取ったところで振り返る。


 それっ、『カマイタチ』を喰らえ!


 うぎゃああああああああああ


 ダークドワーフの悲鳴とともに血飛沫が舞う。ヤツらは足止めとなった。

 しかしまだ反撃がくるかもしれない。だから次の攻撃を急ぐ。


 いくぞ、『底なし沼』だ。


 実際には沼ではない。床は石畳なのだ。

 それでもダークドワーフの群れが、石畳に沈んでいく。


「待て待て待ってくれ。降参する。命だけは助けてくれ」


 命乞いする魔物は、初めてだったかもしれない。

 だけど魔物は退治しなくてはならない。それが冒険者の使命だ。


「もし見逃してくれるなら、我々の秘宝を与えよう。貴殿の仲間も解放する」


 ダークドワーフの秘宝って……?

 石斧とかそういうのか。なんか要らなそう。


 それよりも『仲間』とか言ってなかったか? どういうことだろう。まさか魔導サロンの誰かが捕まったとか。いや、まさか。そんなことはないはずだ。この洞窟にきているのは僕だけだし、『梟たちの茶会』の仲間がこんな弱い魔物にやられるわけがない。


 無視しようと思った。

 けれどもなんとなく気になる。


 呪魔導『底なし沼』を解いた。


 石畳に埋もれつつあったダークドワーフが這いあがる。

 深く埋もれたダークドワーフは、他のダークドワーフが掘り起こす。

 その集団がいっせいに土下座した。


「ただいま秘宝を持って参ります」


 一体のダークドワーフが走り去った。

 しばらくすると戻ってきた。両手に何かを抱えている。


 ふうん。それが秘宝ってやつかぁ。やっぱりショボいな。


 とりあえず受けとっておいた。

 そのあと最下層の牢まで案内された。


「はっ、僕をここへ閉じ込めるつもりか?」

「とんでもないです。ここには貴殿の仲間がおります」


 暗い牢の扉が開けられた。

 中から大勢の人間が出てきた。百人近くいるだろうか。


 『梟たちの茶会』の仲間でなくてホッとした。ダークドワーフの言った『貴殿の仲間』とは、『僕と同じ人間』って意味なのだろう。


 解放された人々の恰好からすると、全員が冒険者のようだ。でもちょっと不思議な気もする。どうして大勢の冒険者が、こんな弱小なヤツらに捕まっていたのだろう?


 牢から出てきた人々に、ダークダークドワーフが告げる。


「このお方に免じ、お前らを解放する」


 僕がダークドワーフの味方みたいな言い方、やめてほしいんだけど。


 解放された人々からは歓喜の声。皆それぞれ僕に礼を言う。

 なんだか照れくさい。こういうのは少し苦手だ。


「あっ」


 僕は思わず声をあげてしまった。

 人々の中に知っている顔が三つあったからだ。

 古巣パーティ『爆裂ペガサス』の元仲間だった。


 三人が僕の顔を見てポカーンとしている。

 僕もポカーンとなった。


「あ……あの……」


 古巣の元仲間に声をかけられた。

 何か話があるようだ。なんだろう?


 おっと、こんなところで時間を潰している場合ではなかった。急いで帰らなければ、『梟たちの茶会』の皆が心配するだろう。何しろ僕は夜中に突然姿を消したわけだから。


 話しかけてきた元仲間に謝る。


「ごめんなさい。ちょっと急いでいるんで」 


 彼らに軽く会釈し、洞窟出口へと向かった。




 出口付近に『梟たちの茶会』の仲間たちがいた。


「シドだ!」「良かった、シドだわ」「心配したぞ」


 皆の安堵した顔。心配してくれていたらしい。

 強面先輩オーグヌスが正面に来て土下座する。


 えっ、なんだ?


「悪かった。俺があんなことを言ったばっかりに。実はあのとき、そこの標柱を見てすぐにわかったんだ。この洞窟には、実に厄介な魔物が……」


 意外だった。この先輩もこんなに心配してくれていたとは。

 僕は強面先輩の話を途中で遮った。


「安心してください。弱い魔物しかいませんでしたよ」

「え? そんなはずはない」

「本当です。洞窟にいたのはバイソンオーガの群れと……」


 ここにいる仲間の皆が言う。


「「「バイソンオーガの群れ!?」」」


 皆の声がきれいにハモっていたので、少し嫉妬。


「あと、それからなんだっけ……。そうだ、喋る毛深いゴブリン!」


 またもや皆の声がハモる。


「「「はあ?」」」


 強面先輩オーグヌスが顔を近づける。

 ――やはり怖い。


「シド。この標柱からすると、ダークドワーフの群れじゃないのか?」

「そうそう、それです。ゴブリンじゃなくてそっちでした。すみません」

「まさかお前一人で……」

「なんだかわかりませんが、秘宝もらっちゃいました。粗末なものですけど」


 その秘宝を皆にみせた。


「これ、ガロットの出した課題の剣だぞ」


 嘘っ?



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