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22.魔物の棲む洞窟


 仙人先輩ガロットから出された課題は、ある剣を入手してくること。

 ガロットを除く『梟たちの茶会』の六人で、剣を探す旅に出た。


 山で出会った女の子フィアのおかげで、僕は潜在能力を大きく引き出された。それでも僕の呪魔導はまだまだ荒削りだし、眠ったままの部分が多いようだ。だからこの旅で大きく成長したい。それからまだ一度も成功していない回復系、補助系、防御バリア系の魔導も、できるようになったらいいのだけど。


 それにしても、この旅はやたらと危険が多い気がする。厳しすぎる大自然、頻繁に出現する魔物、旅人を騙そうとする人間……。僕たちは様々な魔導を駆使し続けた。


 課題の剣はどこにあるのだろうか。仙人先輩ガロットが言うには、剣の特殊な魔導を感じ取ることが大切だとか。途方に暮れながらも、各地で地道な情報収集に励んだ。失敗しがちな占術魔導にも頼ったりした。ようやく、ある程度は範囲を絞ることができたけれど、見つけだすにはまだ少し広すぎるか。



 ある山の麓で――。


「ねえ、疲れたわ。ちょっと休んでいかない?」


 巨乳先輩スウの足が止まった。

 強面先輩オーグヌスが彼女を睨む。


「ふざけるな。いま休んだら、日が暮れる前に町には着かない。急ぐぞ」

「なんであなたが決めるの? リーダーでもなんでもないでしょ」

「うるさい。ガロットのいないときは、いつも俺が判断してただろ」

「勝負でシドに負けたくせにー。ここじゃシドがリーダーになるべきよ」


 ちょっとちょっと、ここで僕の名前を出さないでよ。

 喧嘩に巻き込まれるのは、どうか勘弁してほしい。


「ねえ、休憩にしましょうよ。シド」


 僕に話をふらないでください……。


 助けを求めて巨漢先輩ファンモに視線を送る。しかし顔を背けられた。狐目先輩テチオンも幼女先輩ミリイも同様だった。皆、後輩を助けてくださいよ。


「ぼ、僕はどちらでも……」


 じっと僕の顔をうかがう巨乳先輩スウ。


「わたし、足が痛くて歩けないんだけど」

「だったら休憩にした方がいいかも……」

「ほーら、シドも言ってるんだし」


 チッと舌打ちする強面先輩オーグヌス。


 少しの間、休憩となった。しかし強面先輩オーグヌスが言ったとおり、昼間のうちに町に到着できなかった。そのため渓谷の畔で野営となった。


 さっきからずっと強面先輩オーグヌスの機嫌が悪い。僕のせいらしい。目が合うと睨み返された。でもこれ、巨乳先輩スウのせいですよ? 彼女は美味しそうに野イチゴを頬張っていた。


 眠る前にちょっとトイレへ……といってもこの大自然の中では、人目につかないところすべてがトイレなのだ。


 用を足して仲間のもとへと戻る途中、奇妙なものを発見。洞窟の前に『柱』のようなものがあった。人為的に立てられたものだ。立派なものだった。こんな辺境の山奥に人間が?


 これ、いったいなんだろう。


 ちょうど強面先輩オーグヌスが歩いてきた。彼も用を足しに来ていたのだろう。僕は彼を呼び止め、奇妙な柱のことを告げた。洞窟前まで連れてくる。


「うむ。この標柱は……儀式の跡だな。まだ新しい」

「こんなところで儀式ですか? 近くに町も村もなさそうなのに」

「魔物だ。魔物がいるんだ。しかも儀式をするくらいだから集団だろう」

「ま、魔物! するとこの洞窟にその群れが?」


 強面先輩オーグヌスの口角がつりあがった。


「良かったな。お前ら冒険者は、魔物が大好物だろ」

「大好物って言い方は……」

「案外、そこに棲んでいる魔物が、課題の剣を持ってるんじゃないのか」

「なるほど。では、すぐに皆で行ってみましょう!」

「俺たちはずっと歩きっぱなしで、疲労が溜まっている。行くなら明日だ」

「明日の朝ですね!」

「別にお前だけで行ってきても構わないんだぜ?」

「僕一人で……?」


 彼は仲間たちのもとへと帰っていった。


 僕は洞窟の前で考え込んだ。もし一人で行って魔物を倒してきたら、仲間たちから褒められるんじゃないか? きっと強面先輩オーグヌスだって僕をきちんと認めてくれるに違いない。


 一人で洞窟に入っていくことにした。


 奥へ進んでいくと地面が石畳になった。この洞窟ってダンジョンだったのか。

 途中、足にヒモのようなものが絡んだ。カラカラと音が鳴る。


 しまった――。

 この張りヒモ、侵入者を知らせる仕掛けだったか。


 奥からドシっドシっと足音が聞こえてくる。

 その響きからすると、図体のデカい魔物に違いない。数も多いようだ。

 姿が見えた。


 あれはオーガの群れじゃないか!


 しかも……文献で見たことがあるぞ。

 確かバイソンオーガとかいったっけ。

 見た目は恐ろしい。とにかく迫力があった。


「喰らえっ」


 ファイアボールを打ち放つ。


 僕の魔導はフィアのおかげでかなり強力になった。その後もさらに特訓を続けてきた。そのためだろうか。バイソンオーガは火だるまになったのち、ほんの一瞬で灰と化した。


 我ながら、ずいぶんと派手な魔導になったな……。


 ほんの数日前までは、ジワジワと敵を弱めていくだけのファイアボールだった。しかしいまの炎は、強さも大きさも半端じゃなかった。


 とはいっても、バイソンオーガは数が多すぎる。

 一発ずつ打つファイアボールではとても間に合わない。

 それじゃ、冷系の魔導だ! 喰らえっ。


 カチカチカチカチカチカチカチカチ……


 バイソンオーガのようすをうかがう。

 群れが氷漬けとなっていた。


 おお、あっと言う間に!

 僕の魔導、ヤバいかも。


 こうしてバイソンオーガの群れは、簡単に片付けることができた。

 こんな弱小だったとは。ちょっと肩透かしを喰らった気分だった。



 しかしこの洞窟の冒険は、まだ終わりではなかった……。



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