21.<リーダー視点>パーティ連合
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本業の『冒険』も副業の『大道芸』もうまくいかない。
きょうこそは、と意気込んでダンジョンに乗り込んだ。しかしまた散々な結果に終わった。今回は『ホブゴブリン』より格下の『レッサートロール』にさえ粉砕される始末。命からがら逃げてきたのだ。
俺は膝をつき、何度も地面を叩いた。
「おかしい。こんなはずでは……」
弟分も疲れた顔で、地面に寝そべった。
「これってスランプってヤツですかね」
「知るかっ」
ゲンコツをくれてやった。だが弟分の言うとおり、俺たちは『スランプ』なのかもしれない。こんな借金を抱えたときに、スランプなんて勘弁してくれ。そのうえ副業もスベリまくりだ。
「ねえ、リーダー。やっぱりさあ、シドを追い出したからじゃない?」
妹分はずっとそればかりだ。
「馬鹿言えっ! よーく思いだしてみろ。アイツはどうしようもないクズでヘッポコだったじゃないか」
と怒鳴ってみたものの、もしかして妹分の主張は正しいのか? 『シドの小さな炎が魔物を弱らせていた』というのが、ここ最近の妹分の主張だ。聞き続けているうちに、俺もなんだかそんな気がしてきた。
いやいや、違うぞ! そんなことはありえない。うん、ありえない。
失敗が続くと、おかしなことを考えてしまうものだ。冷静にならなきゃ。
だが冷静になったところで、借金額は変わらない。まとまったカネが入ってくる当てだってないのだ。どうすりゃいいんだ……。
とりあえず、またギルドへ行ってみた。
パーティ募集のチラシを見つけた。国外からの依頼らしい。
いくつものパーティと組み、大集団で一攫千金を狙おうというものだ。
詳細を聞いてみたところ、受付嬢はこう話してくれた――。
ある没落貴族の屋根裏から古文書が見つかった。古文書には莫大な財宝の在処が書かれていた。しかしそこは凶暴な魔物らの巣窟。これまで多くの冒険者を雇ってきたが、挫折の繰り返しだった。それで今回、大集団を組むことになった。
俺の率いる冒険者パーティ『爆裂ペガサス』も参加することにした。参加には審査がある。しかし前々回のコンテストで入賞しているため、俺たちの審査はパスとなった。ラッキーだ。
パスした冒険者は九十三人。名高い冒険者もいる。頼もしい限りだ。
この大勢で目的地へと向かうことになった。途中、恐ろしい魔物に何度も遭遇した。しかし同行する冒険者たちが、ことごとく倒してしまった。これは楽な仕事になりそうだ。俺たちの出番はなかった。というより、俺たちの実力では何もできなかった。
しかしこの冒険にずっと『順調』が続くわけではなかった。
突如として、皆に緊張が走った。俺も弟分も妹分も震えが止まらない。いままでに感じた中では桁違いの殺気。まさに生命の危機。俺たちはとんでもない化け物に狙われたようだ。
姿が見えた。
なーんだ、バイソンオーガだったか。
俺はホッと胸を撫でおろした。
もちろんバイソンオーガの凶暴さについては、よく知っているつもりだ。一般のオーガよりも巨大でずっとパワフルだ。通常、そんなものに出くわしたら逃げるしかない。だが俺たちは九十三人という大集団。いくらなんでも負けるわけがない。
しかし安堵に浸っていたのは、俺、弟分、妹分だけだった。
右の岩陰からバイソンオーガの顔がもう一つ。そして左や背後からも。
これってまさか……。やっと皆が緊張しているワケを理解できた。
俺たちはバイソンオーガの群れに囲まれていたのだ。
集団であることはヤツらも同じ。数の力でなんとかなると思っていた俺は、大馬鹿だった。ヤツらの群れは十数体。確かに数だけは俺たちの方がずっと多い。だが実力を考えると、まだまだ人数が足りない。ぜんぜん足りてない。
ヤツらが襲ってくる。皆で必死の抵抗を試みた。俺たち『爆裂ペガサス』は、なんの役にも立っていなかった。弟分も妹分も半べそをかいている。俺だって、この死の恐怖に泣きたいものだ。
バイソンオーガの群れは圧倒的に強かった。
俺たちはさらに驚愕させられた――。
なんと! ヤツらは魔導攻撃を始めたではないか。
信じられなかった。バイソンオーガって魔導も扱えたのか? いいや、そんなのは初耳だ。ならばどうして……。これについて、のちに真相を知ることとなった。
この冒険者の大集団はすべて捕らえられた。
その場で殺されず、生け捕りにされたのだ。
皆、首をかしげるばかりだった。バイソンオーガが人間を生け捕りにするなんてありえない。少なくともヤツらに、そのような知性はなかったはずだ。
実は裏でバイソンオーガの群れを使役していたものがあった。それが『ダークドワーフ』の群れだと判明。そうか。ならばあれらの魔導……バイソンオーガが使用していたのではなく、すべてダークドワーフによるものだったか。
ヤツらは人間の言葉を話していた。その会話の内容からすると、どうやら俺たちは食用の家畜にされたらしい。ただし食用といっても、ダークドワーフの食料となるわけではない。ダークドワーフが所有する労働用家畜のエサとなるようだ。
俺たちは絶望の淵に立たされた。これから先、エサとなる日に怯えながら、暗い地下の人間飼育場で生きなくてはならない。
食べ物と水は毎日運ばれてきた。ただし一日に一回。マズいし、臭いし、不衛生なものだ。それにトイレなどないので悪臭が酷い。寝る場所は硬い地面。
きょうこの人間飼育場から、三人の不運な冒険者が連れていかれた。
バイソンオーガのエサとなるためだ。
三人の悲鳴が地下牢に響いた。俺は耳を塞いだ。
どうして。どうして。どうして。どうしてこんなことになったんだ。
これが九十三人もの冒険者が団結した結末なんて、誰が想像しただろうか。
しかも選りすぐりの冒険者たちだったはずなのに。楽な仕事のはずだったのに。
いったいどこで歯車が狂ってしまったのか。
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