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18.呪魔導VS強面先輩


 強面先輩と勝負することになった。

 その内容は『魔導あり』の格闘だ。

 強面先輩としては、僕を懲らしめたいらしい。


「せめて【魔防具】を使ってくれないか?」


 狐目先輩が魔防具を差し出した。特殊なものらしい。

 強面先輩は拒否するも、皆から説得されてしぶしぶ装備。

 僕も装着した。


 狐目先輩の合図で戦闘開始となった――。


 すぐさまファイアボールを飛ばす。さほど即効性のある攻撃ではないが、着火さえすればジワジワと敵にダメージを与えてくれるものだ。


 ところが強面先輩の身体能力は高かった。

 僕の繰り出すファイアボールをフットワークで回避してしまう。

 悔しい~。当たらない……。


 一方、強面先輩が放ったのは特大のファイアボール。

 避けようと思っても、大きすぎて避けきれない。


 うわあああああああああああああああああ


 凄まじい熱。それでも魔防具が彼の魔導を吸収してくれたようだ。

 僕は少し火傷を負ったが、なんとか堪えられる程度だ。

 もし魔防具がなかったら、悲惨なことになっていたと思う。



 強面先輩は次々と強烈な魔導を放ってきた。

 電気ショックや光の矢、岩石破裂…………など。

 僕はことごとく魔防具に救われたようだ。


 強面先輩がジロッと狐目先輩をひと睨み。


「くっ、こんな魔防具、どこで手に入れてきやがった」

「ひひひひ。秘密だよー」


 そんな会話がされている。しかし僕はもう限界にあった。

 強面先輩の魔導は半端なものではなかったのだ。


 僕も早く攻撃に転じないと……。


 だったらウォーターカッターで攻撃を?

 それは駄目だ。強面先輩が真っ二つになる。死んでしまう。


 ならばカマイタチで攻撃を?

 それも駄目だ。強面先輩が細かく切り刻まれて、やはり死んでしまう。


 では底なし沼なんてどうだ?

 それだって駄目だろう。制御に自信がない。

 地面に呑み込まれる前に、ちゃんとストップできるのか。


 だいたい魔防具って、【呪魔導】をどれくらい緩和できるのだろう。

 底なし沼は別として、もしかして結構防いでくれるのか? 

 いや、確信できないのならば使用不可だ。命がかかっているのだ。


 ああ、何か確実に安全な方法で勝てないだろうか……。

 このままでは本当にマズい。

 次の攻撃を食らえば、さすがに僕の負けかもしれない。


 強面先輩の様子をじっと伺い続ける。

 すると不思議な変化が起きた。


 おや?


 強面先輩の装備している魔防具が黒ずんでいく。

 それを見た狐目先輩は、彼の体を指差した。


「ねえ、それ……」


 ハッとする強面先輩。

 黒ずんだ魔防具を手でこする。


 ボロボロボロボロボロ…………。


 こすった箇所が砂のように崩れ落ちた。

 彼の魔防具は不思議と脆くなっていたようだ。


「なんだ、これは?」


 理解できない様子の強面先輩。

 それに答えるのは狐目先輩だった。


「たぶん腐食魔導じゃないかなぁ」

「はあ? 腐食魔導? 聞いたことないぞ」

「世の中には呪魔導っていうのがあって、その一つとされているんだ」

「呪魔導って……あの伝説のヤツか」


 狐目先輩も強面先輩も、呪魔導を知っていたらしい。

 強面先輩にゆっくり首肯する狐目先輩。


「そう、それ。腐食魔導っていうのは、最悪級の魔導だよ。ただじっと凝視するだけで、『障害だと認識した物体』を腐食させてしまうんだ」


 僕は腐食魔導のことをいま初めて知った。

 凝視するだけでいいなんて、便利でラクちんな魔導だな。



「呪魔導……。あっ、そういうことかぁ」


 巨乳先輩が声をあげると、幼女先輩は首をかしげた。


「なんのこと?」

「あの子の目、空色してるでしょ。伝説の呪竜と同じなのよ」

「ふうん。だからなんなの?」

「彼、龍神族かもしれないわ。自らを呪竜の仲間だと信じる民族よ」

「呪竜の仲間だから呪魔導を使えるって言いたいわけ?」

「だってそう考えれば、しっくりくるでしょ」


 しかし狐目先輩が巨乳先輩の意見を否定する。


「龍神族のような『古の民』(いにしえのたみ)が現在も生き続けている――なんて思えないなあ。それに若い龍神族は魔導をあまり使えなかった、という伝説も残ってる。魔導のほとんどが、二十歳になるまで目の中に封印されるとかで」


 そういえば僕の呪魔導――。

 ダガーナイフが目に刺さったのが始まりだった。



 強面先輩は脆くなった魔導具を、自ら払い落とした。


「俺に防具など不要だぁ、ぬおおおおおおおお」


 超特大のファイアボールを打ってきた。

 今度こそ喰らったら僕の負けだ。でも僕には防御系魔導はない。


 こっちに飛んでくるファイアボール。


 僕の冷系呪魔導で火を消せないものか。冷系では間に合わない?

 水系呪魔導の方が手っ取り早いか。ああ、駄目だ。

 ウォーターカッターで火を切ったとしても避けられない。


 頭がパニックになったまま放ったのが、水系呪魔導だった。

 しかしこれまでのウォーターカッターとは違っていた。

 僕が呪魔導を使える前の水流魔導に近いものだった。


 これも呪魔導なのか?


 僕の水流呪魔導は、超特大ファイアボールを消してしまった。

 わっ、こんなこともできたのか。


 いままでの呪魔導は、どれも殺傷能力が高かった。

 でもこの水流魔導ならば……。


 僕は以前から、日常生活にも役立つ魔導を熱望していた。

 この前は失敗したけど、飲み水用に使えるのでは?


「ううううううううううううう」


 強面先輩のうなり声だ。苦しそうに叫んでいる。

 やがて地面に伏し、転げ回った。

 あれ? どうしたんだろう。


 狐目先輩は心配そうに強面先輩の様子をうかがった。

 振り返って僕に尋ねる。


「ねえ、いまのは猛毒水?」

「し、知りません。初めて使いましたので」

「知らないって。イメージせずに、これほどの魔導を? 信じられない」

「すみません」

「キミの魔導って、呪魔導で間違いないね?」

「はい、呪魔導です」


 頭を抱える狐目先輩。


「ああ、なんてことだ。まさか本当に、伝説の呪魔導だったなんて」

「ううううううううううううう」


 強面先輩がうなり声をあげ続けている。


「解毒しよう。この勝負の勝者は、呪魔導を使う彼でいいね?」

「うううううううう……。ふざけるな。勝負は終わっちゃいねえ……」


 苦しみながらも、まだ諦めていないようだ。

 狐目先輩が僕に頼み込む。


「いまさらで悪いんだけど、キミにお願いがある」

「僕にですか? なんでしょう」

「魔防具のことだけど、キミの呪魔導を防ぎきれない可能性がある」

「はあ」

「だから殺傷力の高そうな攻撃魔導は、この勝負に使用しないでほしい」

「初めからそのつもりです。それでいま苦労してるんです」

「な、なんと。恐れ入ったよ」


 横から幼女先輩の声。


「その話、もう関係ないみたい。ほら、気絶しちゃったから」


 彼女の言うとおり、強面先輩は気絶していた。

 狐目先輩が解毒魔導を施したのち、巨乳先輩が回復魔導を施す。



 目を覚まして起きあがる強面先輩。


「おい、回復魔導なんてやめろ。勝負を続けるぞ」

「気絶した時点で完敗でしょーがっ!」

「…………」



 ここでまた新たな魔法陣が浮かびあがった。

 そこから人が出てくる。


 老人だ。仙人のような白い髭と髪。

 周囲を見回し、僕のところで目が止まった。


「やはり来たな。我々『梟たちの茶会』は歓迎する」

「えっ、ああ!」


 思いだした。僕は彼に会っている。

 魔導サロン『梟たちの茶会』について教えてくれた人だ。

 彼も『梟たちの茶会』のメンバーだったのか。

 僕は心の中で彼を『仙人先輩』と呼ぶことにした。


 ふらふらの強面先輩を、仙人先輩が一瞥。


「ハハハハハ。さっそく一戦交えたか」


 僕が答える。


「勝てば『梟たちの茶会』に入れてくださるとのことでしたので」

「ほう。結果、呪魔導が勝利したのだな」

「もしかして呪魔導のこと、初めから承知してたんですか」


 仙人先輩は首を横に振った。


「その目の色、あのときの火魔導……。だが半信半疑ってところだった。しかしそれに加えてヤツに勝利。呪魔導だと確信したのは、ついさっきだ」


 僕は皆に向く。


「あのう、『梟たちの茶会』に入会していいのでしょうか?」

「入会の条件が、彼に勝利することだったからね」


 と狐目先輩にポンと背中を叩かれた。

 巨乳先輩、幼女先輩、巨漢先輩と続く。


「大歓迎よ」

「よろしくね」

「面白そうなヤツが加わってくれた」


 そして強面先輩も……。


「チッ、仕方ねえ。仙花のことは不問としてやる」


 最後に仙人先輩が笑顔でうなずく。


「全員一致で決定だ」



ここまでお読みくださり、ありがとうございます!!


次話から先輩たちの名前が出てきます。

ですが先輩たちの名前は、きちんと覚えなくても大丈夫です。


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