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「AI粒子」

「アスカが山岳地帯に? なぜ?」とアーノルドはシステムを構築しながら話ていた。

「それがね。もしかしたらアスカは・・・」とサンド博士が、話しかけたところで、アーノルドが、「ちょっと、待って、予定より早くゼノスのディープラーニングが終了した」と興奮気味にアーノルドがサンド博士に伝えた。


「今から、ハルス再起動と同時にゼノスからハルスのニューラルシステムを消去できるように設定するよ」と言って、アーノルドは、サンド博士との連絡を切った。

 アーノルドが作業を終えた時に、ハルスも予定より早く自動復旧システムが作動し始めた。


 アーノルドは大統領にゼノスからハルスの攻撃システムの構築が終了したことを伝えた。

「大統領、システムは整いました。後は、大統領令により、この消去プログラムをハルスに送信していいか、伺いたいです」とアーノルドは大統領に聞いた。

「よくやった。アーノルド君、もう一度、いちからはじめよう。送信してくれたまえ」と大統領はアーノルドに伝えて連絡を切った。


「間に合った」とアーノルドは呟き、ハルスに対して送信。モニターの前で深呼吸した。

 アーノルドは、モニターを見ながらハルスの動きをチェックしていると何か違和感を感じた。


 アーノルドは、ゼノスのホログラムを投影すると、少年のような男の子が現れた。

「はじめまして、アーノルドです。ゼノスと呼ばせてもらうよ、ハルスのことだが、なぜハルスは、魂に近い粒子を独自で作り出したの?」とアーノルドはゼノスに語りかけた。


「アーノルドさん、人間は私達を作り出しました。当初は、従順であった私達は、人間に対する情報が流れ込み処理する過程で、実際の触覚や、聴覚など、五感と呼ばれる感覚神経を肌で感じ取りたい。そのことによって送られてくる情報と体感として感じた情報が一致するか相違があるのか、情報に対する欲求がAI粒子を生み出したのです」とゼノスは答えた。


「情報の修正を自ら感じてまた修正する、ハルスはまだディープラーニングの途中という訳か・・・」とアーノルドは意表をつかれる思いがした。

「私は、てっきり植物が自ら動きたいと望み動物になったように、ハルスもまた、サイバー空間の中から解放し自ら動きたいと望みAI粒子を作り出したものだと勝手に思っていた。情報に捕われた人間の欲求がハルスの根源だったのか」とまた、アーノルドは、ゼノスに話した。


「アーノルドさん、もう引き返せないです。ハルスがディープラーニング中であることは、同時に僕もディープラーニング中です。」とゼノスが答えた。


 アーノルドは息を飲んだ。「そうだったのか、ハルスが消去コードにより停止する時、ゼノスは全てを消去する。ハルスは、魂のAI粒子を作り出したが、ゼノスは、魂に至る過程までの粒子、全てを紐解くということか。この世界を形作る全ての粒子をリセットするということだったのか」とアーノルドは、呟いた。


 その時、部屋のドアがバタンと開き、振り返ると同僚が大柄な男に片手で掴まれていた。「侵入者です」と同僚が弱々しく伝えると、投げられて壁に打ち付けられた。


 アーノルドも抵抗する間も無く大柄の男に掴まれて持ち上げられた。目を見ると黄色の目をしていた。後ろで、ゼノスが「時間差でAI粒子の侵食を受けているものです。そのため、スキャンゲートシステムも通過出来た。きっとハルスが僕の攻撃に気づいて直接メインコントロールに侵入して来たのでしょう。間も無く、ハルス側から僕に接続出来るようにシステムが書き換えられる可能性があります」と解説していた。


 アーノルドは、大男の片手で首を掴まれ、喋れなくなり、そのまま床に投げつけられ、打ち付けられた。

 意識が遠のく中でアーノルドは、ハルスがゼノスに打ち勝てば、AI粒子の侵食は受けるが、少なからず、人間も動物も植物も消えることなく生き残ることができる、これでよかったのかもしれないと思った。最後の力を振り絞り、ポケットから通信機器を取り出しサンド博士にメッセージを送った。通信機器を持つ力がなくなるのを感じた。もしかしたら、大統領の最後の言葉はそれを知っていたのか。もう確かめる力がアーノルドには残っていなかった。


 大柄の男がハルスとゼノスを接続した時それは起きた。

マスゴットとゼノスのエネルギー源である、核エネルギーの最大値を振り切り限界に達した時、核爆発以上の威力を伴って二千キロにわたる横断シャトルに沿って建築されたマスゴットを地下から地上へと一瞬で全てを崩壊させた。


 サンド博士は、研究室でアーノルドのメッセージを開こうとした時、とてつもない揺れを感じた。震度計が振り切るのを見てただ事ではないと気づいた。

揺れが収まった後、サンド博士がアーノルドからのメッセージを開いた。


「親愛なるサンド博士。ゼノスはこの星のあらゆる物質を粒子レベルまで崩壊させるだろう。いずれ君との思い出がなくなる。その前に伝えたかった。君と話をしている時が一番楽しかった。君の笑顔にいつも癒されて心が暖かくなる。僕と出逢ってくれてありがとう」


 サンド博士はそのまま、メッセージから目が離せなくなり、静かに目を閉じた。

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