初雪
鼻歌まじりに歩く。
イルミネーションの綺麗なこの季節は、夜こそ本番だろう。車で十分で山の中のような、田舎の都市だからこそ良く映える。都会の煌びやかもいい。けれど、だだっ広い駅前広場が華やかになっているこの景色が、やはり好きだ。
駅の二階にはスタバがある。大学生になって三年目、ようやく入ろうという気持ちになった。地元にはないものだし、入り口が小さくてレジが遠いから、つい二の足を踏んでしまっていた。
適当にそれっぽいメニューを頼んで、キッシュを温めてもらって、窓際の席へ。駅のコンコースの上に、橋のようになっている席がある。高校生が勉強したりする席だ。浮かれた大学生が隣にいたら、私なら嫌なので、二つほど離れた席に座った。
ほどほどに暖かいキッシュ。ぬくぬくの店内。それから、フラペチーノ。
雪がちらつく外を眺めながら、私はキンキンに冷えたフラペチーノを啜る。
背徳的だ。そう自覚すると、今の幸せが倍増されるようだから不思議だ。子どものころ、降ってきた雪にワクワクするのとはまた違う幸福。ついでにカロリーを考えて少し憂鬱になる。
フラペチーノもキッシュもなくなって、携帯の充電も怪しくなってきたころ、ようやく店を出ようと思った。外が程よく暗くなってきている。イルミネーションを眺めながら、お気に入りの本屋に寄って帰る。美味しいパン屋もあるので、夕飯はそこのクルミパンにしようかと思う。
焼きたてのパンの香りはどうしてこう、幸せにあふれているんだろう。朝、もうすぐ炊き上がるご飯の香りで起きるときと同じ気持ちになる。この店はスーパーのパン屋よりは割高だけれど、その分美味しい。
店に入ると、メロンパンが焼きたてだったので、誘惑に負けた。こんな幸福な敗北は人生でそうない気がする。
何分田舎なので、隣駅の自宅に帰るには電車を待つ必要がある。改札を通った時に電車が丁度出ていったので、あと三十分、寒空の下で待つ。
少しテンションが下がってきた。私のお腹には今冷えたフラペチーノしか入っていない。なのでガラス張りの待合室に入って、ついでに、近くにあった自販機でコーンスープを買った。
温度差で曇っているガラスごしに、冬空を見る。初雪は段々と勢いを増していた。
つもりそうだ。




