コロシアム
娯楽が飽和したと言われて十数年。刺激に飽きた社会は、ついに人の死をエンターテイメントにすることを受け入れた。
創作の世界のものだったデスゲームが、現実に存在する企画として成立するようになったのである。
当然現実のものとなれば金銭が絡み、金銭が絡めば厳しい規則ができる。そうして成立したのが、『安全安心なデスゲームガイドライン』だった。俺からしてみれば、一行で矛盾するということ以外は何も凄くない文書だ。
出演者は全員、応募した人間であること。誓約書にサインをしていること。死体や内臓など、気分を害するものは極力映さないこと。生放送は禁止。一人二人は生き残るように調整すること。人数は最大で百人まで、期間は百日までとすること。ゲームを行う場合は、そのルールが視聴者にも分かるようにすること。運営側が横紙破りを行わないこと。
何というか、いつの時代も娯楽を提供する側は大変だなと思う。
そして当然、エンターテイメントであるからには、それを成立させるためにある程度の仕込みというのは必要になる。俗にいう偽客。視聴者だって知っているような公然の秘密だ。デスゲームにおいては、ルールを初めから把握している導き手だとか、主人公に設定された出演者を際立たせる脇役だとか。映像を切り貼りして数時間に収める中に、理不尽な恐怖があって、人間ドラマがあって、感動のラストが欲しいわけだから、素人に任せてなんかいられない。
そんなわけでできた新しい仕事が、俺達デスゲームサバイバーというわけだ。
さて、長々と説明をしてしまったが、つまり俺は、今まで結構な数のデスゲームをこなしてきた。今日もまたデスゲームに参加していて、事前に運営から聞いた情報では、二十五日間の完全クローズド、サバイバル型らしい。無人島一つ借り切った、なかなか贅沢な舞台だ。二十五日はまあギリギリ仲間割れが発生しにくいし、食料が少なくても死なない程度。割と優しい。しかも、島の地図には三か所の補給小屋があった。速い話、そこを押さえられればヌルゲーもいいところだ。
気分だけは鼻歌まじりで、初日、全員にざっくりとルール説明がされる場所で待っていた。人数は二十人。舞台にしては小規模だ。
『参加希望者にまずは感謝する』
そうそう、デスゲームは参加希望者がいないと始まらない。一人二人ならサバイバーで埋められるが。
『ここに来るまでの船内で、日数などの説明は受けただろう。ここは完全な無人島で、凶暴な野生動物は猪程度だ。気候からしてそうそう死にはしないだろう』
デスゲームとしてはどうかと思う。
『さて、君達には今から二十五日のサバイバルをしてもらうわけだが、まず、事前に地図を見せたが、あれは全てダミーだ。この島には補給所は一か所、五日に一度ヘリで物資を投下する』
……ん?
『また、二十五日後に生き残れるのが三人というのも嘘だ。生き残る条件は伏せる。鍵がひとつ、とだけ伝えよう』
ざわついてきた。俺は、嫌な予感に顔をしかめる。
『君達は様々な技能や手段を持っている。せいぜい生き延びてくれたまえ、デスゲームサバイバーの諸君』
ざわつきがしばらくして収まってから、全員、示し合わせたようにため息をついた。
ドキュメンタリー風漫画の後半でやるやつだろうが、これ。




