表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/100

茅野

 近所に、ススキに埋め尽くされた野原があった。誰かは、チガヤノと呼んでいた。昔は誰かの大きな畑だったらしい。けど今はその家が絶えてしまったので、すっかり荒れ果てている。周囲はきちんと畑として整備されているのだけど、そこだけが荒れ野になっていた。そんな場所は、僕達にとっては最高の遊び場だ。

 見上げるほどの草をかき分けた先に、草を倒して作った秘密基地がある。大人はみんなそこに秘密基地があることを知っていたし、秘密基地を卒業した世代なんかは、また今年もあそこで遊んでるのか、なんて言っていたから、公然の秘密ではあったんだけど。


 僕はその日、一人だった。稲穂が秋の色になってきたから、家の仕事で駆り出される友人も多かったので、さして気にしていなかった。「どこにいくの」と祖母に言われて、「秘密!」と元気に答える。それだけで僕の行き先はみんなに知れ渡っていた。


 その年は、ススキの背がいっとう高かった。僕の頭を越したススキは、秘密基地をすっぽり覆い隠していた。その間をかき分けかき分け進んでいくと、秘密基地に出る。大体子供が三人寝転がれる程度の広さ、草を切って、ワラを敷いていた。ただそれだけだ。

 僕は一人で、秘密基地で地図を書いていた。日が高く登ってきたあたりで、少し暑くなったので、屋根が欲しいと思った。


 あっちのススキとこっちのススキ。上で結んだら、屋根になるだろうか。


 引っ張ったススキの先を結び付ける。屋根というには低くて、ワラの上に寝転がってようやく通れるような隙間なのだけど、それでも僕にとっては素晴らしいアイディアで、宿題なんかよりよっぽど楽しいことだった。

 そうして、五つくらい結んだころ。がさがさと、輪の向こう側のススキが揺れた。誰か来たのかな、と思って、僕はこの素晴らしい「発明」を披露してやろうと得意になっていた。

 はたして現れたのは、甚平姿の少女だった。ススキの輪をくぐってこちらに来て、「遊ばない?」と言われた。見覚えのない子だったけど、誰かの親戚かな、なんて勝手に納得した。学校で流行りの簡単な遊びを教えると、お返しにあやとりを教えてくれた。



 別にだから何かあったわけではない。けれど、あの子は人間ではなかったのだろうと、僕は思う。

 いつの間にかすっかり整備されて、あの茅野はなくなってしまった。けれど、草刈りをしても、毎年必ず、二本のススキがすらりと揺れている。

 輪を作ったら、またあの子につながるだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ