侵入者
微ホラー
玄関の外に、何かがいる。
そんな夢を見る。
恐ろしいとは思わない。ただ自分は、夜中だというのに目が覚めて、何となくカーテンを開けて、月の明かりだけで部屋の中を見ている。
昔から、妙に明るい夜空の夢を見た。まるでアニメの中のように、月の光がくっきりと雲を照らしているのだ。街灯のない満月の夜でも、部屋の中を照らすほど明るい月の光はそうそうない。
青白い光のフィルターがかかったような景色。わたしの家は、大学生によくある、キッチンと水回り、それから一部屋という間取りだ。
わたしは、足音を立てないように玄関に近付く。真夜中だ。玄関横の小さな窓からは、藍色の夜空が見える。
誰かがいる。
それは確信だった。わたしは、何度も、玄関の窓から外を見る。何も見えない。何も通らない。私の家の前に来るためには、その窓の前を通らなければいけないのに。
けれど、誰かがいる。郵便ポストには内側にバンダナを張り付けてある。開いても中が覗けないように。覗き穴にはガムテープを二重に張っている。それらに異常はちっともない。
けれど、その扉一枚を隔てた先に何かがいる。その確信だけを持って、わたしは玄関の前で、入ってくるなと念じていた。
目を覚ます。そんな夢のことを忘れる程度の日数が経つ。
また、夢を見る。ベッドの上から、玄関を見ていた。
誰かがいる。ドアノブを回したり、ドアを揺らしたりしている。そんなことをしても入って来られないとは分かっているのに、わたしは、入ってくると確信をもって恐れていた。
目を覚ます。朝日の差し込む部屋を見て、安堵する。そして恐怖を忘れる程度の日数が経つ。また夢を見る。
玄関から部屋の入り口までの間に、何かがいた。
真っ黒な影だ。向こう側が透けて見える。景色に、掠れた筆ペンで何度も縦線を引いたようなもの。
動きはしない。ただ、そこにいる。
目を覚ましたのは夜明け前だった。目をつぶって電気をつけた。玄関までの道が一直線になっていないことを何度も確認した。それから、玄関のカギとチェーンがかかっていることも。
「いる」
そう声が聞こえた。自分の声だったと思う。けれど、口を開いたという意識はなかった。
また夢を見る前に、引っ越そうと思う。




