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桜吹雪

 桜を見に行こう、と言い出したのはどちらだったか。


 家から歩いて五分の河川敷には、花見客がレジャーシートを敷いて、まだ日も高いというのに上機嫌でアルコールをあおっていた。川辺の遊歩道は、散り始めの桜の花弁で模様ができている。


「乾杯しようか」


 缶入りの炭酸飲料を軽く掲げて、プルタブを起こす。今日は夜勤があるので、酒はおあずけだ。レジャーシートもなければキャンプ用の折り畳み椅子のひとつもない。遊歩道の端に座っただけだ。けれど、炭酸飲料が思ったよりもおいしくて、気分ばかりは花見になっていた。

 楽しそうな人々を見下ろして、僕は二本目の炭酸飲料に手を付ける。散ってきた桜の花びらが、僕の視界でうるさいほどに舞っていた。


 桜を見に行こうと、どうしてあの時言ったのだろう。


 君が桜吹雪に攫われて、三回目の春が来た。


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