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無言電話

 最近夜中に電話が鳴る。

 実家の固定電話だから、電話番号の流出ーなんて気にするようなものでもないけれど、セールスやら世論調査ならともかく、迷惑電話、それも夜中はとても困る。両親は、私達が独立したからと言って四半世紀越しのハネムーン中。着信拒否にしてもいちいちかかってくる。その根性を違うことに使ってほしいと思う。


 会社の同僚に相談すると、留守電にしたらと軽く言われた。留守電にしてもコールは鳴るし、コールから留守電の音声になる流れを何度も繰り返される。結果、眠りの浅い私は叩き起こされる。


「もしもし?」


 不機嫌な声で出ると、電話はぴたりと止む。いっそ受話器を外しておきたいところだけど、緊急の連絡があったら、とか思うとなかなかそうもできない。


「そういうのにはね、精神攻撃が効くよ」


 同僚のアドバイスに従って、色々な音源を集めてみた。まずは般若心経。用意したその日の夜中に電話が鳴って、案の定無言電話だったので流した。「うわっ」と声が聞こえた。

 受話器の向こうに人がいると確認したので、音量を上げた。切られた。

 勝ったぜ。



 そう思った翌日の夜、また電話がかかってきた。案の定無言電話。用意していた、ひたすら女の人が笑うだけの音源を再生。一緒になって笑っていた。怖かったのでこの音源は没にした。

 次の日の夜。川のせせらぎと鳥の鳴き声を再生した。五分くらいでぷつっと切れた。私の方が寝落ちするかと思った。


 次の日の夜。大晦日のお笑い番組でよく聞く効果音を流した。「え、アウト?」と声が聞こえた。知ってんのかよ。


 次の日の夜。某国民的アニメの次回予告を流した。ちょっと気持ちの悪い笑い声がした。


 次の日の夜。私の方がネタ切れになったので、お酒を飲んで待っていた。


「あああもう私の歌を聞けぇい!」


 歌ってやった。カラオケでの十八番を、全力で。夜中を気にする理性はお酒で溶かしておいたので、恥じらいもなかったと思う。何しろ一か月くらいこの電話に悩まされているものだから、苛立ちもK点越えというやつだ。

 四分くらい歌い切って、満足して受話器を置こうとしたら、向こう側から声が聞こえた。


「六十点」

「めげねえな!?」


 しかもカラオケの辛口採点より厳しい。


「……ふふっ、試行錯誤がかわいいね。また明日、歌声を聞かせておくれ」


 そんなことを言って、その日は電話が切れた。

 わたしはそっと、その番号を着拒にした。

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