夕焼けの似合う街
坂の上まで競争、とどちらが言い出したかは分からない。けど、鞄を抱えて、二人で、傾斜のきつい坂道を駆け上がった。半ばくらいで若干後悔して、先を行く君を見てぐっと奥歯を食いしばる。
「わあー!」
坂の上の曲がり角は、街が一望できる。このあたりは新興住宅地だが、見下ろした町は、古くからある温泉街だ。
「綺麗」
「いつも見てんじゃん」
「いつ見ても綺麗でしょ!」
ガードレールに手をかけて、君は笑う。もう社会人なんだからいい加減落ち着いてほしい。僕は息を整えるので手一杯だ。
「はあー、地元戻ってきてよかった! 私、ここからの景色ほんと好きでさあ」
「知ってる」
中学まで、夕焼けがきれいな日は必ず付き合わされたから。
「特にこの時間がいいよねえ。昼と夜のちょうど間くらい。いつも透明な太陽の光に色がついてさあ。街が、こんなに鮮やかになるなんてそうないし。勿論、晴れた日の景色も好きだよ? でも、古い街だからちょっと地味な色だしさ。夕焼けが一番似合うよねえ」
「……うん」
「ごめんね、付き合わせて。じゃあ、帰ろっか」
好き勝手話すだけ話して、君は僕を振り返る。僕は、その瞬間を逃さずシャッターを切った。かしゃー、とスマホのシャッター音が響く。
「……ちょっと、盗撮!」
「景色撮ってただけだし」
「嘘! 消してよ?」
「分かってるよ」
仕方ないので、データは消した。完全消去じゃなくて、一時ゴミ箱に入れるだけって形で。我ながら犯罪者みたいなことをすると思う。
でも、夕焼けで、すごくきれいだから、目に焼き付けるだけじゃ足りないって思うのは、どうしようもない。
文句はあるけど、僕も、夕焼けの中で見るこの景色は好きだ。
何より、夕焼けのおかげで、顔が赤いのがバレにくいのが一番いい。




