皿の上の愛情
※残酷な表現あり
白い皿の上に、肉の花が咲いている。それを見て、綺麗と彼女は目を細める。
「人間は変な生き物だ」
僕はナイフとフォークで花を崩す。途端、彼女は僕の皿への興味を失った。
「愛おしいものを食おうとする」
彼女の皿には、焼かれた魚が乗っている。つい数十分前に、水族館で、彼女はその魚を可愛いと言った。同じ個体でなくとも、同じ姿の魚だ。それが皿の上にあっても、彼女の顔は曇らない。
たとえば魚が人のように話せたのならば、可愛いと愛でるものを喰らうとは何たる矛盾かと言うだろう。
「変かなぁ」
彼女は、丁寧に魚を分解しながら言う。
「君だって、その子を目一杯可愛がったじゃない」
僕の皿の血だまりを、彼女は箸で指差した。この行儀の悪ささえなければと思う。
「それでも君はその子を食べた」
それは僕にとって、それが当然というだけのことで。
「ねえ、××」
未だ理解できない僕に、彼女は優しく微笑んだ。
「私のことも、おいしく食べてね」
数か月前までやせぎすだった彼女は、ほどよくふっくらしてきていた。
熱を持った肉を、熱いままで分解して、皮を剥いで、真っ白な床にどこまでも広がっていく鮮血から、君の残骸を丁寧に拾い上げる。
『私がおいしいといいのだけど』
五分前まで愛おしかった彼女の心臓は、舐めるとまだ温かかった。
「ああ」
それは僕にとっては、食糧以上ではない肉の塊だ。
「死んでしまった」
けれど僕にとって君は、やはり愛おしい存在だった。
どうして、愛おしいと思うのに食べられるのだろう。僕は僕自身が分からなくなった。
「いただきます」
皿の上に、君を花のように盛り付けた。
テーブルの向かいの少女は、それを見て綺麗と目を細めた。




