失恋
家が隣同士で、小学校から高校まで同じで、しかもクラスまで一緒になるという漫画みたいな幼馴染がいる。
隠しているわけじゃないが、家が近所だとか出身校が同じだとかいうと、恋愛関係を勘ぐられるのでちょっと嫌だ。別に互いにそう意識はしていないけど、帰る方向も一緒だしたまに寄り道も一緒にするから、そう考えている奴らもいるのかもしれない。
「いっそ、マジに付き合ってみるか?」
「え、やだ」
一秒くらい考えてくれてもいーじゃねえか。
「恋人になったら意識しちゃうじゃん。そんなの疲れるから、友達のままがいい」
「あっそう」
「あんたと恋人にはなりたくないけどさ」
そいつは、自転車で並んで、俺を振り返らないままで言った。
「あんたと夫婦になるのはいいなって思うよ」
こいつが目を合わせない時は、照れていると知っている。
「……あっそう」
言われて自覚する程度の恋心なら、俺にもあったらしいが、その意見には残念なくらい同意できた。好きも嫌いも趣味の変遷もクセもいいところも嫌なところも、全部知っている相手なんてそういない。
「じゃあさ」
信号が青になったので、俺達は揃って自転車を漕ぐ。
「あと十年くらい経って互いにおんなじ気持ちだったら、結婚しようぜ」
「いいよ」
そんな軽口を叩いて、笑い合った。
あの日から十年経った。ついに恋人同士になれないまま、俺達は今日、初めてキスをする。




