夜更かし
明日も仕事だというのに、何となく眠れない日はある。日付が変わったころに、寝なければという焦燥感には襲われるのだけど、いつもなら頭に重く圧し掛かる眠気というのが一向にやって来ない。明日の仕事の準備も要らないし、家事も風呂も終わって、あとはベッドで明日ご飯が炊けるのを待つだけなのだが、その待つ時間を睡眠にあてるという気分にならないのだ。
何となく手に取った本が思いのほか面白く、気付けば夜中の一時半になっていた。普段の起床時間まではあと五時間と少しある。仕事の時はやたら長い五時間だというのに、何で夜の五時間はこう短いのだろう。と思ったが、寝ていてほぼ意識がないのだから短いのも必然か。
タブレットPCでSNSを開く。私の友人は健康優良児が多いようで、ほとんどがお休みの挨拶を残していなくなっていた。仕方がないので動画サイトを開く。月額九百円程度で見られる新旧様々な映画を、ざっとスクロールしてランダムに選ぶ。傑作からB級以下のような駄作まで、古今東西の映像作品を見られるというのは、なかなか贅沢なものだ。
さてまた気付けば三時を過ぎていたのだが、これほど時間を無駄にしたような九十分も珍しい。感動させよう、ここで感動しろと言うような押しつけがましい演出と、驚くほど棒読みの役者たち。小学生の学習発表会の方が、まだずっとマシだろう。実に無駄な九十分だった。
まあ確かに、手垢のついた、しかしよく言えば王道でかつ理解のしやすい簡潔なストーリーで、情報量が百五十分の映画と同程度あったと思えば悪くない作品だ。しかし、実に無駄な九十分だった。
目が疲れてきたのでベッドに入ったが、やはり眠気はやってこない。光の出る画面を見つめていたのだからそれも仕方なかろうが、そもそもの眠気が来ないのだから目の裏がちかちかするなど些事になってしまう。
古典的に羊を数えるなど思い浮かべるが、あれは英語だからこそ意味があるので、日本語で言えば耳元でねむくなーるねむくなーると言われているようなものだ。暗示に近い。ネムクナール。某製薬会社の睡眠導入剤にありそうだ。現状私はネムクナーイなので、少しほしい。
何はともあれ、流石に一睡もせずというのは仕事に支障が出そうだ。白湯を一杯飲んで、私はようやく枕元の電気を消す。きちんと目覚ましがセットされていることを確認して、私は目を閉じた。




