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ウタ

 それはどうしようもない衝動だった。


 僕はオートライダーから飛び出して、行儀よく並ぶポールを蹴倒して、走った。体育の授業でもないのに、走るなんて初めてで、たくさんの警備ロボが慌てて僕を止めようとした。オートライダーは一斉に高度を上げて、道がまっさらになったので、僕はますます速度を上げた。今なら、メトロポリスの端のその先まで行ける気がした。

 けれどそんな夢みたいなことが起こるわけもなくて、僕はあっさり機械アームに釣り上げられて、両手をきっちり拘束される。

 その瞬間、衝動は最高潮に達した。喉の奥。どこからだとも分からない。そこから、せり上がってくる何か。


 知らない。「これ」が何かを僕は知らない。きっとみんな知らない。けれど、体は、この肉体は、「それ」が必要なものだと知っている。


「わああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーっ!」


 喉から飛び出したのは、空気がびりびりと震えるような何かだった。

 息を吸って、吐いて、それでも喉の痛みは治まらない。僕が吐き出したのは、何だ?



「君は才能があるね」


 はっと気が付くと、僕は自由になっていて、へたり込んだ僕を、裸足の女の人が見降ろしていた。


「はみ出さないように、崩れないように、型通りに詰め込んで詰め込んで、ぎゅうっと蓋をして。そうしていると、君みたいに零れてしまう者が出る」


 差し出された手を取って、僕は立ち上がる。


「君の腹の中にある叫び。どうしようもなくってあふれ出すようなそれに、昔の人間は、ウタと名前を付けたのさ」


 裸足の足でロボットを踏みつけて、とん、とその人は地面を蹴った。


「見本を見せてあげよう。気に入ったのなら、私達の国へ来るといい。あの山の峰のむこう、ウタもホンも、許されている国だから」


 とん、たん、とん、たん。女の人の足音が、同じ感覚で響く。それが、とん、たたん、に変わって、その人は口を開いた。

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