表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/100

水色

 見下ろした空と海の境が遠くて、あの先に何があるのか見たくなった。


「大昔の人類は、そんな気持ちで舟をこぎ出したのかもね」


 僕達の世代は、すっかり世界が暴かれていて、見えるものは全部解明されている。躍起になって、見えないものを追いかけていたのももう昔の話だ。

 けれど、何もかも分かっていても、美しいものを美しいと思うことはあるんだと思った。

 草を踏んで、僕は崖の際に立つ。裸足の足に、石が少しだけ痛かった。


「でも、人類は空を飛べなかったよ」


 見えるものも見えないものもすっかり暴いた代償に、人類は鉄色の都市に引きこもるようになった。だから、この空も、海も、綺麗な大地だって全部、僕達のものだ。


「全部ぜんぶ、知っているのに見られないなんて、可哀想だね」


 僕達は、空の上からの世界を知っている。風がうなりを上げて吹くさまを知っている。雲の上に出たときの、別世界を知っている。空と海の間の、自由な場所を知っている。


「飛ぼうか」


 僕達は、竜。人間が夢見た翼を手に入れて、人間をやめた怪物だ。水色の髪と角、それから鱗が生えた尾。人間に要らないものばかりをくっつけて、ようやく、空を手に入れた。

 人間だった時のことは、もう思い出せない。



 朝日が昇ってきて、夜の闇が消えてきた。巣穴から這い出して、僕達は、お気に入りの場所に行く。

 東の空のそのまた向こう、海の端を照らして上ってくる太陽。目が痛くなるくらいに眩しくて、くらくらする。


 おはよう、世界。


 今日も、綺麗な世界が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ