第99項「担当する読モとの顔合わせの場に行くが2人とも顔も名前も既に知っている」
クリスマス皆さんどうでしたか?
俺と籠原さんは食事を終えて赤レンガ駅舎に向かって歩いていた。
これから、籠原さんが経営しているファッション誌の製作や編集・販売をしている複合型会社の方に向かう為である。
それにしても、さっきの店の料理はとても美味しかった。
しかし、学生プライスでは無いので俺的にも御会計の紙を見た際には0の数の多さを見て腰を抜かすところだった。
俺の気持ちを察したのかどうか分からないが、食事の会計は前回の仕事の御礼という事で支払ってくれた。
ありがとうございます。
彼女の後ろを追いながら俺も周囲を警戒して歩く。
籠原さんはさすが大人ということや会社を代表する人であるという風格が外観からも感じられる女性だった。
駅前の交差点にはいつの時間帯でも人が多く出ていて、都会の喧騒の中を進みながら丸の内中央改札口に入る。
目的地までの移動は黄緑をラインカラーとしている路線に乗り込むことからその路線が通る駅周辺にあるのかなぁと考えられる。
「高島さんはいつからボディーガードの仕事をやっているの?」
電車がホームを少しずつを離れていくと吊革を握った籠原さんは俺に話しかけてきた。
「そうですね、本格的に仕事を始めたのは大学2年生くらいですね。」
俺は電車の扉の上にある電子公告画面を見つつ思い出しなら籠原さんの返事に答える。
「それはバイトとして始めたの?それとも家とかが代々ボディーガードの会社とかをやっているから親とかに会社を引き継ぐ為にも働けと言われた感じなの?」
この人ただの興味として聞いているのか既に俺の情報を持っていてその情報の信憑性を確かめるために聞いているのかどっちなんだろ…。
親父からもあんまり会社のことについては話しなと強く言われているから詳細までは話せないのが実情である。
「まぁ。そんな感じ…です…。」
俺は基本的に個人情報をたった1回しか会った事があるような程度の人には伝えたくないとは思っているが、曖昧な返事をしてしまったなぁと少し後悔する。
「“その表情を見るとあまり詮索しないでください”と言う顔だね?まぁ、あなたに仕事を依頼する時点である程度事前に調べてあるので言わなくて大丈夫よ。」
知っているなら俺に確認させるようなこと言うなよ。
「こっちからも聞いても良いですか?」
「ええ、良いわよ。内容によってはあなたと同じで話せない場合もあるからそこは許してね。お互い様だと思うから…。」
「ええ、そうですね。1つ目は、なんで2つの会社を経営しているんですか?1つの会社を経営するのだって大変なはずなのに…。」
「え~とねぇ。正確に言うとね…。私が正式に経営していて社長に就任している会社はIT関連の会社の方なのよ。ファッション誌の方は私が社長では無くて私の娘が正式な社長なのよ。社長はまだ若いし特に日中時間帯は他にやるべきことがあるから平日は私が代理で責任者を務めて放課後や土休日などは彼女が主体で活動しているんだけどね。本当は今日の食事会の場に娘も連れてくるつもりだったんだけど、他の用事とかぶってしまって来れなかったのよ。さっき話しそびれたからごめんなさいね…。」
娘さんが会社の正式なトップであるんだから仕事として一つの組織の上に立つことができる年齢というのは常識的に考えたら現在高校生から大学生くらいなのかぁと思う。
自分とほぼ同世代くらいの若い女性が会社のトップを担うなんて凄いなぁと感心する。
「あ、じゃあ籠原さんが両方のトップという訳ではなく本業がIT関連の会社で副業という言い方が正しいか分からないですけど、娘さんの仕事も手伝っているという訳ですね?」
「まぁそう言う感じだね。」
俺らが乗っている電車は既に上野を過ぎていることから降りる駅はまだ先なのかなぁと思う。
「娘さんが実質会社のトップという事になると思うんですけど、娘さんは大学生とか何ですか?」
「いやそうでは無いんだけど、自分で勉強をしているのよ。あの子は私以上に勉強もできるしコミュニケーション力高いし、仕事もできるからまだ私が20代だった時よりははるかに優秀な人材だと思うわ。それになんといってもモデル並みの美人さ。幼い時からあれやこれやと男の子に告白され続けている容姿端麗さは天才的だと思うわ。」
なんか分からないが、家の外では女性社長でという立場があるが、娘想いの母親でもあるんだなぁとヒシヒシと感じる。
だけど、だんだんと娘の自慢話にしか聞こえず俺は若干どうでもいい情報だなと思いながら早く目的地の最寄り駅に着いてほしいと首を長くしながら電車に揺られる。
そして俺らは池袋駅のホームに降り立った。
ここまで東京駅から地下鉄で行った方が時間的にもすぐ行けたのに…と思いながらも改札を出る。
数分歩くと住宅地の中に突然目の前に4階建てくらいの棟が建っていた。
全ての階をこの会社が持っているらしく建物の敷地も広い印象を受けた。
読モ以外の社員数は100人くらい居るらしく親父がやっている会社より全然雇用人数が多いんだなぁと感じる。
100人も社員を抱えているのならこのくら建物が大きくても違和感はないが、こんな駅から近い場所にあるなんて家賃とか凄いお値段しそう…。
勝手なイメージでしかないが…。
俺は籠原さんに言われるがまま建物1階の受付みたいなところで簡単に書類に記入を済ませたのち、2階の部屋に先に入っているように言われたので、言われた部屋を探す。
「コンコン、失礼します。」
扉を開くと大学に行くようなキャンパスコーデを意識したような上下の服装に身を包み俺が担当する読者モデルの人は既に椅子に座っていて栗色に近い髪をさすっていた。
「え?え、?え、なんで高島さんが居るの?確か昼過ぎから女の所に行くとか朝家で言っていましたよね?」
そう、俺が担当する人というか本人の承認が無ければだけどその予定の人物とは今日の朝に俺の家に入っていた双子姉妹で華南さんの妹である舞美さんである。
俺は先ほどの食事後に伝えられていたからもう驚くという事は無いけど、舞美さんの方は一人部屋で待っていたら知っている人が現れたことから読み込みに時間がかかるパソコンのようにこの状況を把握するのに時間がかかり完全に固まっている状態になっている。
「その言い方なかなか酷いなぁ。朝、家の外でも言ったと思うけど、都内に会社を持っている女性の社長さんに会っていたんだよ。もちろん仕事の話だよ?」
「え、じゃあ、まさかその女、いや女の人って…。」
舞美さんの顔が急に青く染まりつつある。
「私の事だね…。」
扉の前に建っていた俺の横から首を伸ばして声を発した人物こそ籠原さんの登場である。
そしてさっき俺と話していた時よりもワントーン下げた冷たい声が聞こえた。
もしかしたら怒っているのかもしれない…。
「あ、お…お疲れ様です。籠原社長。」
籠原さんの姿を見て背中が伸びる。
「その名前は私に言う呼び方ではないよ?間違ってはいないけど、私はあくまであの娘の代理としてやっているだけだから…。」
「あ、そうでした。すいません。はるなさん。」
「それで良いよ。どうやらさっきの2人の会話を聞いているとお互い知り合いなのかな?」
「え?籠原さんどこから俺らの話聞いていましたか?」
「高島さんがこの部屋の扉を開けて失礼しますといったところからな…。」
「全部じゃないですか?」
俺と舞美さんは口を揃えて言う。
「知り合いというか家がたまたま隣であるだけですよ。」
舞美さんが切り出した。
「え、でもさっきの会話で”確か昼過ぎから女の所に行くとか朝家で言っていましたよね?”と聞こえたから、ただの隣同士というよりはある程度の関係が深まっている仲なんじゃないの?」
「いや、そんなことは無いですよ。ただ、隣人なだけ朝たまに顔を合わせるくらいですよ?」
「本当かなぁ?”女のところに行く”という言葉がなんか含みがあるというか、本当は君たち恋人なんじゃないの?」
「断じて違いますね。舞美さんが今言ったようにただの隣人です。」
俺は答える。
「え、でもいま”舞美さん”って言ったよね?仮にただの隣人程度なら女性を下の名前で呼ぶ必要は無いはず…。それを無意識に読んでしまうという事は普段から関わりを持っているともいえるんじゃないの?だから舞美ちゃんの方も知らない女の人に会いに行くと思い嫉妬してそういう言い方をしたと思ったんだけど…。」
この人揚げ足取ってくるとか嫌だなぁ。
なんか推理ショーを聞いている気持ちになりつつある。
犯罪を暴かれる犯人の気持ちってこんな気持ちなのかなぁ…。
「断じて違いますね…。」
「そんなわけないじゃないですか?」
俺と舞美さんがそれぞれ強めの返事をする。
「ほう~。こんな鮮やかで綺麗な髪を持っていて容姿もそこらの周りに居る女の子よりも可愛いと思うのに。高島さん。好みのタイプとまでは行かなくても舞美ちゃんの今の服装とかでも顔とかでも見て可愛いとか思わないの?」
「俺にはそういう感覚が薄いので良く分からないですね。世間的には充分可愛いんじゃないですか?」
俺は思ったことをそのまま言葉に載せる。
この3人での会話いつまで続くんだろ…。
「あら、冷たいわね…。舞美ちゃんはこの会社に専属しているモデルさんの中では5本の指に入る可愛さなのよ。最近の男子は草食系が多いと聞いたけど、これじゃぁ日本の未来は心配だわ~。」
舞美さんは俺の靴を強く踏みながら俺に向かって目で怒りをぶつけていることがなんとなく見ていて分かった。
俺、Mの気質は無いからこの状況に喜ぶことはない。
「でも高島さんが無意識に舞美ちゃんを下の名前で呼んでいる理由をもう少し詮索したいところだけど、舞美ちゃんがさっきから高島さんの方を見て頬を膨らませているからもうやめるわ。じゃあ本題に入ろっか?」
やっと本題に入ったよ…。
この人社会人なのか…。
仕事はスピードだろ?
喋っていないで早く片付けようぜ…。
舞美さんは口を尖らせてまだ俺の足を踏み続けている。
何度も言うけど俺、Mの気質は無いからね?
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