第95項「新前華南side㉔~初めての男性との休日のお出かけ編その6~」
華南sideも終わり次に進みます。
「まぁ。先輩の最後の余計な一言で少しむっとするというか私の事を理解してくれて嬉しい気分に浸れて終われると思ったのに…。先輩の良くないところはそういうところですよ?」
私は口を尖らせて先輩にそう言う。
私は先輩が地雷を踏んでしまったなという彼の顔を見る。
先輩は何か考え事をしているのかしばらく黙っている…。
何か私が怒ると面倒な女だとか思われているのかなぁ気がする。
でもこの件に関しては、完全に先輩が悪いと思う。
先輩は一瞬良い事を言ってくれて私の心はときめくんだけど3秒後にはまぁ”仕事とかでなんだかんだ一緒に居る時間が長いだけなんだけどなぁ”と余計な一言が加わるのだ。
先輩が彼の妹である聖奈ちゃんと出掛けたりした際に先輩が余計な一言を言って兄妹関係が仲悪くなったこととか無いのかなぁ…。
今度メールで聞いてみよう…。
先輩って全然女の子の気持ちを理解しないしこっちが何かそれっぽい事を言っても気づこうとしないし観察力はあって気遣いとかもできるから決して鈍いという事は無いと思うんだけど気づいてほしい場面で全く気づかずそういうところがとにかく鈍感なのだ…。
「いま、私が怒るとめんどくさくなるとか一瞬思いましたよね?」
「お、おもっていないです…。」
本当かとと思って先輩の顔をよーく見てみると”僕は華南さんが怒るとめんどくさい女だと思いました”とちゃんと書いてあった…。
口では思っていないと返事をしていたが、顔にはしっかり描かれている。
鏡で確認してきなさい…。
そう言いたい。
先輩が言うように中学時代の数少ない友人が言っていたが、華南を怒らせるとめんどくさくなるとその時の彼女は言っていた。
なので、自分でも怒るとめんどくさい女であることはある程度自覚しているので、できるだけそれが露呈しないように例え何かされてもちょっとの事では怒らないようにしている。
別に怒りたくて怒っている訳ではないんだけどねぇ…。
人間だったら誰でもそうだろうけど.....。
たぶん先輩が怒るとめんどくさい女だと思っている一つの理由は、私がこの大学に編入してからすぐに全く知らなかった人に告白する場所と時間を伝えられたけどその時間には全く来なくて1時間も遅れてきた際に何もそれ自体に何も謝りもせず告白してきたことにさすがの私も立腹したところ数日後、編入してきた女子が見た目からは想像できないが、怒ると本当に怖いという噂が流れそれを先輩も聞いたんだと思う…。
私はあの時にあそこまで怒らなくても良かったなぁとなぜか集合時間を破られて私自身は何も悪くないのになんか後悔しているという複雑な気持ちがある。
先輩とこうやってお出かけできることがあの時に分かっていればあんなことをしなかったのに…。
後の祭りだから文句を言ってもしょうがない事だという事は十分承知しているんだけどね…。
「ふ~ん…。先輩って仕事の時は優秀な人材だし一生懸命なところが良いと思っていて仕事面でも助かっているので契約上では何も問題はありませんけど、プライベートというか女性に対しての配慮というか…。気遣いと言うか…。いや、気遣いはあるんですけど…。女性が気づいてほしいところに全く振り向かずあくまでも仕事での契約において理解したみたいなこと言わないでくださいよ。女性は恋する乙女の塊なんですよ?」
これは現実問題そうだと思う。
私だって目の前に居るこの先輩に恋をしているのはほぼ間違いないのだ…。
「はぁ…。何言っているかよくわからないけど、要するに女性のことをよく見てそれに応じて考えろっていう事か?」
3割くらいはあっているといえばあっているけど点数はあげられないな。
先輩が私と言うか女の子の気持ちを理解してもらえる日は果たして彼が大学を卒業するまでに来るのかとても不安というかお願いだから…気づいてくださいと言う感じだ。
来年になっても改善される見込みが無かったら、初詣で神頼みするしか無いと思う。
「あんまりわかっていないようですけど…。まぁ。今はもうそれでよいです…。じゃあ、映画の感想を言い合いましょうよ?」
私はいつまでこの話を続けても無理だと分かったのでさっきまで観ていた映画の話に切り替えることにした。
「おう。そうだな…。やっぱり最後の桜並木での男主人公と元幼馴染で初恋だった人が告白をするところは感動したなぁ........。」
先輩の顔を見ると興奮したように話し始める。
この人本当アニメ作品と言うか最後のシチュエーションに憧れを持っているのかもしれない。
そうなると先輩に告白をするとしたら桜並木の方が良いのかなぁ…。
桜並木の時期なんてあと1年弱まで待つ必要があるのね...。
「そうですよね…。それも桜の木が数多く並ぶところで夕陽に照らされながら男の子の初恋だった女の子の方が男の子に気持ちを伝えようとするときに男の子の方が”もしかしたら君が今思っている気持ちと同じかもしれないから俺の方から先に伝えても良い?”という部分を言った時の相手の女の子の顔やもしかしたら男の子の方も私と同じことを考えているのではないかといった部分が伝わってきてあの告白シーンは観ている側としてドキドキでしたね。」
好きな男性にこんなことを言われた胸のざわつきが大きくなりその想いが同じだったら嬉しくてしょうがないと思う。
私も映画を観ながらもし先輩が誰もいない道に2人だけで歩いている時に突然立ち止まってこんなことを言ってきたら”どうしよう”と思っちゃう気がする…。
こんな台詞言われた時点で胸が”うぅ…。”となることは間違いない無いと思う。
「ああ、そうだよね~。それに2人が告白をしている時の男女の姿や枝垂桜や足元の砂利に当たる日差しの雰囲気とか見ても絵の作り込みが伺えたよね…。もし、あの桜並木にモデルにしている場所とかあったら見てみたい気がするもん…。」
先輩は登場人物の告白で言われた内容だけでなくその場面の背景描写に対してのコメントしてきたのは少し驚いた。
だけど、私も同じことを考えていたので思っていることが一緒だったことはなんか嬉しくさっきまで先輩に抱いていた怒りと言うか呆れの気持ちは抜けていくのが感じられた。
「私も作品を描く上で参考にした場所とかあれば聖地巡礼とかして実際に足を運んで見てみたいですね。あとはいままで主人公の男の子と同棲生活をしていた女の子の方が男の子の事は好きだけど、男の子の方が幼馴染で初恋である女の子の方に好意があることを理解して悔しがるようなもう振り向いてもらえないと感じているところのような心情描写的に見ると細かく描かれているなぁと感じましたね…。」
この物語に限らず人間関係として恋愛においてもこういう恋における嫉妬や憎悪と言うのは起こりうる事だと思う。それが現実世界だといじめに発展してしまう事があるが、この物語では上手くずっと同棲生活を送っていた女の子も男主人公に対する気持ちを整理しながらちゃんと向き合いそしてその時に彼女を精神面で支えていた主人公の幼馴染であり初恋の女子の弟と最終的に上手く繋がって出てきた主人公のみんながハッピーエンドになって良かったなと思った…。
そしてこの作品の原作者は人間の心情描写を表現するのが上手だなと思ったし自分が書いている作品でも使ってみたい手法だと感じた。
「最後にその同棲生活をしていた女の子の方も初恋の女の子と一緒に住んでいた弟と結ばれて良かった気もするけど、もしあのまま2組とも結婚したとしたら、主人公と同棲生活を共にしていた女の子はさ一緒の親族になるという事だから自分がその立場になったらなんかお互い気まずい気もするけどね…。」
先輩に言われてけっこう重要なことに今になって気づいた。
「確かに…。言われてみればそうですよね…。私も知っている人であるとはいえ元彼と親族になるのは少し気が引けそうですよね…。」
「まぁ、全員が一応あの物語では幸せになったからよかったんだろうけどなぁ…。」
「概ね感想は言い合えたので、この後どうしますか?」
「いま、17:00くらいだから、家に帰る感じで良いと思うよ。帰りに食料を買って行きたいというのはあるけど…。」
本当この発言ってなんか主婦の人が言うなら分かるが、こんなことを言っているのは男子大学生なのだから少し驚きもするが、先輩にとっては別に普段のこと何だろうけど…。
でもそういうところは本当凄いなぁ…。
「まぁ、先輩ならそう言うと思いましたよ…。先輩ももう少しガツガツ行かないと今日が恋人同士のデートだったら女性に捨てられますよ?」
私は少し皮肉を混ぜながらももう少しがつがつ行ってほしい事をほんわかに伝える。
「かもな…。」
先輩は、”分かっています。今回は許してください”の顔になっていた。
「まぁでも先輩はそれでよいかもしれませんね…。その方がバランスも取れるかもしれないので…。」
私はどっちかというともっとがつがつ行きたかったが、まだこの人とは恋人ではない。
まだ付き合ってすらいないのだ…。
「うん?どういう事?」
「草食系の先輩には言えませんね…。たぶん聖奈ちゃんも苦労したんだろうな…。こんな草食系の兄が居たら…。」
さすがに今日のお出かけでやるのは先輩に迷惑をかけてしまうので、今回は自分の中ではおさえたつもりだ。そういう意味でバランスが取れるという訳だ。
「できればもう少しこのまま楽しみたいところですけど…。明日も仕事があるので、帰りましょうか?」
「うん。ごめん。草食系で…。」
「いや、大丈夫ですよ…。例え先輩が草食系でも私の方から今後は積極的に仕掛けますのでよろしくお願いしますよ?」
「それはお手柔らかにお願いしたい…。でも今日は久しぶりに外出出来て映画見れて華南さんの仕事とは違う面が見れたし服とかも普段仕事の時とは違う服装だったことやメガネに関しても大学でかけている時とは違う形のメガネ姿も拝めたから俺は今日一日とても楽しかったよ。ありがとう。」
先輩は、私の目の前に立ち今日一日のお出かけに対して恥ずかしさを抑えながらも感謝の言葉を述べてくれて嬉しかった。
「え、いや、せんぱいからそんなコメント頂けるなんて…。こちらこそ最初お出かけに誘った時に乗ってくれたこと私達のお出かけを企画する際から楽しかったですし、きょうの午後の時間は本当に私的にも男性とお出かけする事自体が初めてだったのでこちらこそ楽しかったです。先輩のオシャレ姿も拝めたので私的にも満足です。こちらこそありがとうございました。それで、提案なんですけど、次2人の仕事の休日が取れるのはいつか分からないけどもし仕事が無い日があったら一緒に出掛けたりしても良いですか?」
私は、本心をぶつける。この気持ちにウソは無い。
できれば、これからも何回もお出かけしたり行動を共にしてもっと先輩について知りたい。
「あ、こっちもいつ出掛けたりできるか分からないけどさ華南さんとどっか行ったりしたいと思っていたから草食系男子の俺で良いなら次またどっか出掛けたいなぁと思うよ…。」
この人さっき私が”草食系男子”という言葉を使ったことにまだ根に持っているのか分からないが、先輩の素直な気持ちが聞けて良かったしとても嬉しいし幸せな気持ちが心の中に広がっていたのを自分でも感じていた。
「あ、ありがとうございます。先輩の口からそんな言葉言われて嬉しいですよ…。」
「そうか…。俺も華南さんと考えが同じで良かったよ?」
互いの事を見つめあって目で”うん”と頷く。
「暗くなりましたし帰りましょうか?」
「ああ。そうだな…。今日はありがとうな…。」
「ええ、こちらこそですよ。せ・ん・ぱ・い~」
若干残る太陽の日差しを後ろに私は駅に向かって先輩の横を歩く。
こうして先輩・後輩の半日という短いお出かけ編は幕を閉じたのだった。




