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第93項「新前華南side㉒~初めての男性との休日のお出かけ編その4~」

ながいです。

私達は、食事を終え会計をして出た。


会計の際、先輩が”お金出すよ”と言った。


私は”いえ、そんなことはできませんよ。それにさっき迷惑かけましたし…。”


”迷惑だとは思っていないよ。ただ少しびっくりしただけだから。分かった。ここは割り勘で行こう。たぶんその方がお互い納得しそうだしね?”


”はい。わかりました。ありがとうございます”


”お金出そうか”とそっと聞いてくれるところが男の人だなぁと感じた。


でもその後の”割り勘で行こうか”と言われて私は少し安心した。

この先輩とはたぶん仕事でも長く付き合う事になるだろうから信頼関係は維持しておきたいのと余計な気遣いをしなくて良い面もあるが、ここは自分が食べた値段の額をそれぞれ出すことで終了した。


店の扉を開けると日差しが私の目に直撃してくる。

そして熱気があって服を脱ぎたいなと思う。


「はい。行きますよ?先輩。」

先輩の方を見ると少し暑そうな顔をしている。


「おう、今行くよ~~。」

先輩も羽織っていた服を脱ぎ青っぽい服装が現れた。

そんな服を下に着ていたんだと…。

基本黒基調の服しか着ている所しか見たことがない先輩が色を持っている服を着ているのは少し新鮮だ。


空の色と青い服が綺麗に揃っていてよく似ている。


「せんぱい、今日けっこう暑いですね?」

そんなことを言いながら私も上の服を脱いで少し手首より先が見えるくらいの袖の短さの服装になる。


「それなぁ。駅着いた時はそこまで暑さや日差しを感じなかったのになぁ。」


しばらく歩くと映画館が入る建物が見えてきた。


映画館内は冷房によって冷えている訳ではないが、周辺の建物からのビル風が肌に当たって冷やしてくれるのでとても気持ちが良い。


まだ、初夏だもんね…。


「先にお手洗いから行ってそのあとに事前に予約したチケットの発券をしてそのあとにポップコーンや飲み物を買う感じで良いか?」


先輩の口が開いた。


「そうですね。それで行きましょう。お手洗いが終わったらその周辺で待っていてもらえますか?」


「分かった。」


それぞれお手洗いを済ませて、事前に予約したチケットを発券する為に券売機の所に向かう。


私と先輩は券売機の前に並んで画面上で操作をして事前予約の際に書き留めておいた番号を打ち込んでいく。


「え~と、最初に予約番号を入れて、発行のボタンを押せばチケットが出てくる流れですね。予約番号は201209と…。あれ?先輩この画面見てください?」


私は少し動揺するが先輩に聞いてみよう…。


「どうした?なにか起きたか?」

先輩が画面を除き込んで来た。

地味に先輩の顔がとても近いし、今まで気づかなかったけど何か良い匂いがする。

香水かな…。⁉良い香り~~。


あ、そんな場合じゃなかった…。この状況を説明しないと…。

「なんか、”既にこの席のチケットは発券されています”と表示されてしまうんですよ…。」


「もう1度同じ動作をやってみてそれでも今と同じように表示されたら総合受付の人の所で聞いてみよう…。」

先輩の助言はいつも通り冷静だった。


結局同じことを繰り返しやってみたがこの券売機の画面は”既に発券されました”の一点張りだった。


受付のところで現状を説明して確認してもらったら、どうやら同じタイミングで同時に席の予約がされてしまったと言われた。

そして既に発券済みであるようだった…。


どうしよう…。てか、そんな偶然なんかあるのかな…。


「すいません。たぶんこちらの不手際によるものだと思います。申し訳ありません。席についてなんですが、ちょうどいま予約状況を確認したところカップルシートがキャンセルされたのでそれを今回は無料で利用していただくことでお願いできませんでしょうか?」


スタッフの人はそう言った。


カップルシートって確か恋人同士が映画を観る時に座るやつだよね…。

私と先輩がこの密着した席に座るという事だよね…。


だってカップルシートって仕切りとかなくてすぐ隣に先輩がいるっていう事だよね?


緊張しすぎて映画に集中できる気がしないよ~。


それに恥ずかしい顔をもうこれ以上先輩に見せられないよ~~。

凄い。今から緊張してきた…。

でも別に苦手な人では無くてむしろ”好き”に近づきつつある先輩が隣にいるなら少しそれも安心できるかもしれないし映画を見ながら暗い空間の中で先輩に意識させることがようになるかもしれない。


それならむしろこのチャンスは神から頂いた宝かもしれない。


私は先輩の方を見ると表情も身体も固まっていた。

たぶん、凄いスピードで情報処理が彼の頭の中でされているんだろうぁと思う…。


「あ、そうだったんですね…。はい…。え~と、無料で利用できるのであればそれでお願いします。先輩もそれで良いですかね?」


わたしもまだ驚きは隠しきれていないが先輩に聞く。

先輩も情報処理が終わったようで少しずつ顔色が戻り状況を把握し分析している顔になっている。


「あ、そうだな。良いだろう…。」


先輩の中でも何か踏ん切りがついたのかもしれない。

でも予約したのは私だから後で謝ろう…。


「それでお願いします…。」


たぶんさっきのスタッフの人私達の事をカップルだと思ってそれに配慮してくれてあの提案をしてくれたんだろうけど。カップルだと認識されてなかったら、一体どうなっていたんだろ…。


むしろこれを良い機会だと思って映画中にどう振舞うか考えよう。

でもその前に…。


「せんぱい、ごめんなさい。なんか席が上手く取れていなくて…。」


「大丈夫だよ。そういう失敗もあるよ。」


そうは言ったものも”カップルシート”という言葉をスタッフに言われた時の先輩の動揺っぷりを見る事になるとは思わなかったし、先輩でも動揺するんだなぁと感じた…。


「そうですね。気持ちを切り替えて楽しむしか無いですよね?飲み物とか買いましょうか?」


私は話と同時に先輩の気持ちを切り替えるためにそう言った。


「ああ。そうだな。華南さんはポップコーン何味が好きなんだ?」

来ました。映画館に来ると言われるテンプレの質問。


「わたしは、断トツキャラメル味ですね。先輩は塩味とかですか?」


「よくわかったなぁ。キャラメル味も好きだけど塩のしょっぱさが堪らないと思う。」


なんか雰囲気が塩っぽいだもん…。

でも塩味も久しぶりに食べたいかも…。


「じゃあ、こうしましょうよ。ハーフ・ハーフセットを注文しましょうよ?私はキャラメルを先輩は塩味を基本的に食べて飽きたら違う方をそれぞれ食べるとかどうですか?それと飲み物も合わせて1,100円くらいっぽいので?」


注文票を見ながら私はけっこう良いアイデアなのではと自負する。

「そうだね。その考えに賛成だわ。」


飲み物とポップコーンを抱えシアターの方に入る。

映画館はやはりこの微妙な暗さがドキドキするしわくわくするんだよねぇ。

それに先輩がどういう感じで映画を観るのかも上映中に確認したいなぁと思う。


私は久しぶりに映画を見たのと同時に初めて異性と映画を観に来る事になるとは前回観に行った時の自分に聞いたら絶対想像できなかったらだろう…。


私は先ほどスタッフに言われた席に向かう。


私は席の形状に驚いた…。


”え?”声が漏れたのが分かった・


その席は桃色に染まりとても派手な塗装だった。

更に座る部分のモケットというか…何と言うか…。


とにかく他の席とは異なりかなり異端な席を発揮していた。

私はこれに先輩と座るのかいと思った。


私の予想を遥か超えていてとても2人が座るには余り余裕がない作りだ。


そりゃあ。密着する事になるし…

物理的に距離が縮むことは間違いないが、先輩に言ってどういう反応するか見てみてよう。


「せんぱい、ここですよ。私達が観る座席は?」

私は恥ずかしさをぐっとおさえて先輩に教える。

先輩の表情は…。


この世の終わりみたいな顔をしていた。

そして私と目が合いお互い目をそらし凄い微妙な気分になる…。


たぶん現状を把握するので精一杯なのかもしれない。


そして1つ溜息をつく。



果たしてこの座席で2時間をどうやって特に精神面を維持しながら先輩の姿を見ながら映画を観ようかなと私は考えることにした。



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