第71項「新前華南side⑯~さと美さんとの女子トーク 前編~」
新前華南sideです。
私は、さと美さんと大宮駅に向かうデッキの上を歩いていた。
陽は沈み夜の街並みになった大宮駅周辺を通勤・通学のサラリーマンや高校生などの急いで帰宅する様子を見ながら歩く。
「どっか、駅ビルの中の建物の中にある店に入ろっか」
「あ、はい」
私の右腕はさと美さんの左腕とがっちりと絡まれていて自由に動かせない。
大宮駅の駅ビルは初めて入ったけど、首都圏の中でも10本の指には入るであろう駅の規模である。
駅内に入っても沢山のお店が立ち並んでいることが伺えた。
私達はお酒やコーヒーが飲める店に入った。
さすがにお酒はもう良いので、ホットコーヒーを注文してアルコールを中和する。
席に着き周りを見渡すと会社帰りの人が一杯やっているような感じで店内もお酒とコーヒーが混ざったような匂いがして、心地よいBGMが店全体に流れなぜか眠気を誘う。
「じゃあ、今日までの原稿を出してもらえるかな?」
「あ、はい。これです。確認お願いします」
既にPDFでさと美さんのメールには送ってあるが、紙で印刷した原稿が入った封筒を渡す。
「はい、確かに受け取りました。また次の会議の時までに確認しておくわね。それで水曜日に出してもらった分返すわね」
「あ、ありがとうございます」
「そんなに直す点は見受けられなかったからこの分は訂正無しで良いと思うわ。あと、月曜日の会議はあとでトシ君にも伝えるけど、16時半にクロマツビルに集合で良いかしら」
「はい、大丈夫です。彼にもそう伝えておきます」
「よしこれでこの件は終わりねぇ」
さと美さんは注文した赤ワインとおつまみを堪能している。
「それで、私から一つ提案があるんだ」
「はい、何でしょうか?」
私はぐっと構えの体制になる。
「最近の先生の作品の原稿を出してもらっている箇所は、主人公と別れた生徒会長でかつ恋人の場面がの描写が少し薄く感じてしまうのよねぇ」
「うすく!?とは」
「なんていうんだろうなぁ。話自体は読んでいて面白いけど、主人公とそのヒロインの心情描写が少し弱いというか、調べて書いているような感じがするのよね」
「確かにそう言われるとそうですね」
「これからアニメ化に向けてという訳ではないけど、今後この作品が完結するようになってより鮮明に作品に恋愛関係の磨きがかかった方が良いと思うの。この作品は恋愛と家族がテーマの作品だからね」
「どうやったら作品に磨きがかかりますか」
「これはね自分も恋人を持ってみるのが一番作品に直結に反映できると思うのよね」
「え、わ、私も恋人を作った方が良いということですか…!?」
急にそんなことを言われて少し動揺している自分がいることがわかる。
「そうだね、その方が新島先生が生み出したこの作品により深みが現れると思うの。それに恋愛を経験すれば出てくるヒロインや主人公の思考や心情描写への反映させることが容易になると思うのよ」
「自身が恋愛を体験していれば直接作品内の登場人物に恋愛描写をよりリアルに描けるのかもしれませんけど…。ありがたいことに現在かなり仕事があるので恋人がやるようなことをする時間を作れないんですよね」
それに私は高校時代に当時学校でも有名で人気だったイケメンな男子に告白されたけどそのイケメン男子が好きだった女子の集団に嫉妬を買いいじめにまで発展した経験があってそれ以降”恋愛”という言葉には過敏に反応してしまう。
結局あの時告白されたけど私は断った。
断ることしかできない状況になった。
それ以降から私の3次元の世界では“恋愛”に関して考えることは無くなり2次元の世界で考えそして自分が生み出した作品の登場人物の恋愛という観点でしか考えることはなくなった。
「とても顔が暗いけど過去になんかあったの?」
「…」
「言いたくなさそうな顔ね、言える範囲で良いから話してみて」
「過去に学校一の美男に告白されたんですけど、その男子を好きだった人から嫉妬されていじめに発展したという感じで、その告白は断ったんですけど。それ以降は自分が恋愛をするのは精神的にも辛い状態になるのであの時以降は自分の作品の中でしか現実恋愛については考えることはなくなりましたね」
「なるほど、過去にそんなことがあったのねぇ。だから私がこの話を始めた時にはいつもどこか魂が抜けた状態になったわけか」
「はい・・・」
「高校時代はクラスと言う単位があってその中で恋人を作ったりすると大体嫉妬やいじめに発展するけど、大学生になるとクラス単位での活動は無いから嫉妬やいじめは高校生よりは少なくなると思うよ」
「確かに、言われてみれば大学生は基本授業だけに限らずそれ以外の事も自己責任ですし、クラス授業も無いです」
プラスで考えると大学生は責任は伴うけど高校生よりは圧倒的に自由さが増すんだなぁと思い返した。
「じゃあ、質問を変えましょう。新島先生が求める男性像はなに?」
私が求める異性像・・・。
2022年8月7日加筆修正済み




