第7項「細かく互いの自己紹介」
昨日の幕話は終わり男主人公目線に戻りますよ。
少しずつヒロインの事が明かされていきます。
彼女のフォローのおかげで何とか1限の授業は切り抜ける事が出来た。
「さっきはフォローしてもらって有難う。本当に助かった。
結論の経緯まで話すとは思わなくて結果だけ言えば良いのかと思った。」
「いえいえ、大丈夫ですよ、私も結果だけ発表すれば良いと思っていたので。あの先生も授業の最初に発表の際に結論に至った理由を言うようにとは言っていなかったので自分達に非は無いと思いますよ。」
優しい事言ってくれる人なんだなと思った。
俺と新前さんは荷物をまとめながら話す。
女性と話すのは高校時代は苦手ではあるが、大学に入り仕事を始めて依頼人が女性という事がたまにありそれで少しずつ話しや扱いに慣れてきているが若い女性と話すのは今でもやはり緊張する...
「高島さんはこのあとって時間あいていたりしますか、私、朝ご飯食べて来なくてお腹空いていて、もしよろしければ一緒にいかがですか?」
俺は、人生で初めてお昼一緒にどうですかのお誘いを受けた。
基本的には1人で食べている俺にとってはこの誘いが何かの罠なのではないかと疑ってしまう。
いや、こんな育ちが良さそうな子がそんな罠を仕掛けてくるはずがない。
(この授業で初めて話しただけで何が分かるんだという感じだが…。)
「お、おう。良いよ。俺も朝ご飯食べてないから。」
新前さんの誘いにのってみることにした。
「そうですか、じゃあ行きましょう!!」
新前さんは、少しニコニコしていた。
俺たちは教室を出た。
階段を降り食堂が入る建物までの連絡通路を通る。
キャンパスには1限を終えた生徒でごった返していた。
新入生は重そうな教科書の束を持って奥の校舎に向かっていく。この季節のキャンパスの風物詩である。
食堂に入るとそこまで人は居なくてがらんとしていた。
所々で勉強している人がいる程度だ。
食堂の営業開始は11:00からなので俺らは窓際の席に座る。
「営業開始までまだ20分くらいあるので、もう少しお互いの事話しましょうか。」
「良いよ。」
「高島さんは埼玉県のどこが出身なんですか?」
彼女から質問が飛んでくる。
「俺は、さいたま市の大宮という場所で比較的県の下側の方にある街が出身なんだ。」
「へえ、大宮って私がこっちに上京してきたときに初めて降りた駅なんですよね。たしか豆の木とかという待ち合わせ場所がありますよね?」
埼玉県の人は豆の木を知っている人は多い。
あの場所が県外の人にまで知れ渡っているとは思わなかった。
「そうそう、良く知っているね。新前さんはいつ頃上京してきたの?」
「1月くらいですね、ちょうどJUCCTが終わったくらいにこちらに引っ越して来た感じです。」
「なるほど。関東の冬の寒さは北海道出身の人にとってはどうなの?」
「そうですね、東京は温暖ですね。ただ、朝と夜は寒いと感じる時もありますね。」
「北海道の人でも寒いと感じる時があるんだね、驚きだわ。なんとなく寒いことは当たり前だから慣れているもんだと思った。」
「北の国の人でも本州に居ても寒いと感じる時はありますよ。東京の夏は暑いと聞いたんですけど、実際どうなんですか。」
「いや~本当に暑いよ。君がこの夏の暑さを乗り切れるかどうか分からないかもね。」
少し話しを盛って話す。
でも昨年も猛暑が続いていた記憶があるので、今年も暑くなる事は間違いないだろう。
「本当ですか…私暑いのは苦手なんで、夏休みは北海道に避暑を理由に帰りたいですね。」
彼女は俺の話を聞いて少しうなだれた。
本当に暑いのは無理なようだ。
「そういえばさ、なんでこの大学に3年の時期から編入しようと思ったの?」
俺は授業の時に自己紹介で新前さんが言っていた北海道から編入してきた事が疑問だった。
彼女はかけている赤いメガネの弦に右手をかけながらしばらく黙る。
メガネ姿で顔を傾けて何か考えている姿は絵になると思う。
数分の沈黙があったのち彼女は自身の過去について話し始めた。
「私は北海道札幌市の高校を卒業した後に同じ札幌にある短期大学に入学しました。在学中に小説を書き始めたんです。書き始めた理由は、高校時代クラスメイトかいじめを受けていたんです。それで精神がズタボロのまま大学に通い始めたんです。大学で勉強をする事は楽しかったのですが、友達は出来ずいつも一人で過ごしていました。ある日に参考書を買いに本屋に行った時にライトノベルの棚を見つけました。
そこでたまたま目に入った小説を購入してすぐに読みました。その話がとても面白くて携帯でも小説を読むようになりました。その世界に入り読み始めて半年くらい経った時にある日ふと浮かんだのです。
自分が書きたい小説のネタが。それから書き始めるようになりました。」
「なるほどね、そんな過去があったのか。人って色々な過去を持って生きていることが
分かった気がしたよ。それで、その書き始めた小説はどうなったの?」
おそるおそる聞いてみる。
「最初は余り伸びなくて読者の反応も良くなかったのです。自分なりに勉強して過去作品や流行りの作品を分析し続けて少しずつ小説のレベルが上がるようになりました。出版社に声をかけられたのは私が短大を卒業する半年前のことでした。」
新前さんは、好きになった小説を自分でも執筆しようと思って自らも書き始めて度重なる苦労を重ねてきたことが話を聞いて分かった。
また、自分なりに勉強して己の作品を磨きあげた事で編集社に声かかるなんて凄いなあと思った。
「自分が書いた作品が編集社に声かかるなんて凄いね。その声がかかった作品はなんていう作品なの?」
「”昨日別れたはずの生徒会長である彼女が翌日から自分の家族の妹になった件”という作品です。一応私の処女作になりますね。べたな内容ですが、相手の同学年の女子の生徒会長自らが別れを切り出し別れる事になった。主人公が翌日に父親から再婚したことを聞きその相手の子供が昨日別れたはずの生徒会長であったこと。誕生日で考えると男主人公より生まれが遅いことから生徒会長である女子が妹として一緒に生活していく事になった。生活を共にする内にお互い相手の事が好きになり再び恋人になるというのが大まかなあらすじです。」
俺は今の彼女の話しを聞いて驚いた。
彼女が言った作品は今人気になりつつある作品でいずれはアニメ化するのではないかとも言われている。
俺は暇な時とかはけっこう小説やライトノベル、WEB小説を読むので、これを知った時以来高校生の時からずっと読み続けている。
この作品はとにかく生徒会長がとにかく可愛く挿絵に描かれていて自分の中では毎回楽しみにしている。
絵もきれいで頬がゆるむほどの可愛さだ。
「その作品知っているよ。WEB小説でずっと連載読んでいるしラノベも買ったわ。
...という事は、新前さん、あなたはもしかして作家の”新島みなみ”さんですか?」
俺はかなり動揺しながら彼女に質問した。
JUCCTとは日本大学中央共通テスト(JAPAN UNIVERSITY CENTRAL COMMON TEST)の事で、
現実で言う大学入試センター試験の事を指します。
受験した人も多分多くいると思います。
自分も受験したのはだいぶ前ですね。
懐かしいです。
毎年何かしらの科目で受験生にゆさぶりを
かける変な問題が出題されるんですよね(苦笑)
「JUCCT」が出てくるのはこの作品ではもう二度と無いと思うのでスルーしてもらって大丈夫です。
大学の食堂で女性と2人きりで食事とは
良い物ですね。
主人公が羨ましいです。
青春をしていて良いと思います。
言わなくても読者は分かるとは思いますが、作者は一度もありません。(涙)
男友達か一人で食べていることが多かったです。