第64項「自分が通っていた高校がある街を闊歩する」
妹、登場!!
俺と華南さんは薄暗くて湿った空気がある大宮駅の地下のホームに降り立ち改札方面に向かう階段を進んでいく。
「大宮駅って地下にも駅があるんですね~」
華南さんは口を開いた。
「ああ、このホームは俺らが乗ってきた埼京線とこの駅を起点として川越方面に行く川越線という路線が乗り入れているから、地上にある他の路線のホームとかなり離れているんだよ。ただ、新幹線との乗換は一番近いと思うよ」
俺も大学1年生の時は実家から大学に通っていたのでその時は大宮から埼京線に乗って都内に出ていた。
なので、地下ホームの温風が顔に当たるとこの駅を登下校で使っていた時代が懐かしい。
「へえ、そうなんですね。この後は集合時間までどうしますか?」
階段を上りながら腕時計の針を見ると16時を過ぎたところだ。
「大宮スカイタワービルのロビーに17時半だからなぁ。まだ1時間くらいはあるよなぁ」
「大宮は高島さんが高校時代によく利用していた街ですよね?」
「そうだね、高校時代に限らず今でも実家付近で片付かない用事は大宮に来て済ませているよ」
「じゃあ、私にこの街周辺を案内してくれませんか?」
「良いよ」
俺らは改札を抜け駅のコンコースに出る。
この駅はコンコースの所でいつも地方物産展とかを開催していて午後とかは混んでいた気がする。
駅の敷地を出てデッキを歩いて行く。
「高島さん、あれは何ですか?」
華南さんが指した手の方を向くとちょうど画面には新発売の化粧品のCMが流れていた。
どうやら“ヤンシェ オオミヤ”の建物の壁についているエキサイトビジョンを言っているようだ。
「あれは、エキサイトビジョンと言って大型の広告媒体機器みたいなものだ。この場所にある理由は大宮周辺は若者に人気なファッションの店や雑貨屋、スイーツショップ、百貨店が駅を挟んで東西にあるからそれらを宣伝するために設置されているんだよ」
「へえ、すごいですね。初めて見ました。見ている感じこのデッキに歩いている人も若い制服に身を包んだ高校生とかが一杯歩いていますもんね。大宮がこんなに若者が多く集まる街だとは知りませんでした」
「大宮は、新幹線だけでなく在来線も複数路線乗り入れているから、人が多く集まるんだよ」
「いや、すごいですね。私が高校生の時に居た北海道とは全く違いますね」
華南さんは自分の高校生時代を思い出しながら大宮の街の凄さと若者多さに驚いている様子だった。
「高島さんが通っていた高校は駅の近くですか?」
たぶん、今までで初めて他の人に高校の位置説明するかもしれない。
それだけ大学に入ってから一切友達を作ろうとしなかったから、今になってどう説明すれば上手く伝わるか考えながら喋り始める。
「いや、駅からバスで15分かかる場所にあって、俺らが居る駅周辺は高い建物が一杯あるけど高校は少し離れた所にあってね、学校の周りは田んぼだらけだよ。5月になるとカエルの鳴き声がうるさくて授業に集中出来なかった気がする」
本当に試験中とかにカエルの鳴き声が聞こえると、テストに集中できなかったのも懐かしい思い出だ。
「え、そうなんですか。なんか、意外です。高校の名前はなんて言うんですか?」
「大宮総合高校って言って何か大宮が頭に付いているから駅近くにあると思ったら駅から離れていることをを入学してから知ったんだよな」
「駅近くで無かったのは残念ですね」
「そうなんだよ。でも嬉しいことにが冬の朝とかに早めに教室に行くと、綺麗な富士山を拝めることができたのは良かったかもしれない」
「それはうらやましいですね!冬の朝の富士山いつか見てみたいですね。きっと綺麗なんだろうなぁ」
俺らはぶらぶらと歩いていた。
向こうから見慣れた制服を着ている高校生の集団が見えた。男女4人くらいが仲良くこちらというか大宮駅の方に向かって歩いている。
「いま目の前から向かって歩く高校生たちが着ている服が、俺が通っていた高校の制服だよ」
華南さんに伝えた。
「女子のセーラー服可愛いですね。大宮総合高校って公立高校ですか?」
そう、俺の母校の女子の制服は県内の市立高校では珍しくセーラー服だった。
私立高校では採用されることは多いらしいけど…。
「たしか県立というか市立だった気がする。私立の高校ではないよ」
大宮総合高校は“市立大宮総合高校”が正式名称である。
「私立高校以外で制服が女性がセーラー服で男子がブレザーは珍しくないですか?」
「そうなの?俺は高校時代3年間見ていた景色だから珍しいのか分からないけど」
「いや、なかなかブレザーとセーラー服の組み合わせは無いですよ。セーラー服と学ランとかの組み合わせはよく見ますけど・・・」
「なるほど、他の都道府県の人から見ると珍しいんだね~。華南さんは高校時代どういう制服だったの?」
「わ、わたしは確か、ブレザーだった気がします」
たぶん、さぞかし制服の方も似合うのであろう…。
まあ、この人の場合どんな服を着てもらっとしても似合うこと間違いなしだな…。
俺はその高校生の集団を見ながらすれ違う。
しかし、そのとき後ろから俺の名前を呼ぶ女性の声が聞こえた。
俺の名前を呼ぶ女性は限られているのと、この高校生集団から俺の名を知る人はあの妹しかいないだろう。
「あれ、おにい、じゃん?何やっているの?こんなところで。大学は?てか、華南さんもいる」
「おお、聖奈かぁ。久しぶりだな。俺はこれから仕事があってその人と会う為に大宮に来たけど、まだ集合時刻まで時間があるからぶらぶらしていたんだよ」
「え、この人が聖奈のお兄さん?めっちゃ身長高いけど少しこわいオーラがあるねぇ」
知らない人の声が聞こえた。
「身長たけ―な。幾つあるんだろ。見た目は陰キャだなぁ。本当に聖奈の兄貴なのかよ」
はいはい。君少しうるさいよ。黙ろうね…。これ以上何も言わなければ許してあげるから。
「おにい、ちゃんと華南さんと仕事上手くやっているの?」
「ああ、まあな、なんとかやっている感じだよ」
「本当に迷惑かけていないか私心配だよ~。華南さんこのあと少しお茶でも飲みませんか?」
聖奈の美しい顔が近い。そして連れの男子はなぜかじっとこっちをにらみつけている。
聖奈に何かしらの気持ちがあるのだろう。
俺を陰キャ呼びした奴に妹との恋人は絶対に認めん。陰キャなのは認めるけどさ、俺は…。
「え、ああ、良いよ~。高島さんも集合時刻が近づくまでどこか喫茶店でも行きませんか?」
「あ、うん、いいけど…。悪いな。聖奈のわがまま!?に付き合ってもらって」
「私もおにいと、久しぶりにお話ししたかったし」
「おいおい、せな。俺らとの遊びはどうするんだよ」
俺が苦手とする陽キャ男子の声が聞こえる。
君たち受験勉強は良いのかい?
まあ、俺の人生には関係ないから良いけどね…。
「駄目だよ、聖奈はお兄ちゃん想いが強いのと最近会えてなくて元気ない様子だったんだから諦めるしかないわよ。ほら、行くよ~。宮山」
近くに居た女子達は宮山と呼ばれた男子とその連れの男子の腕を引っ張って駅の方へ向かって歩き始めた。
どうやらこれから妹による地獄の尋問が始まる気がしてならない。
【2022年6月17日改訂済み】




